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過去最大の営業利益を叩き出すZOZO 「ファッションECを超える」3つの新戦略とは

ZOZO(千葉県/澤田宏太郎 代表取締役社長 兼 CEO)が運営する日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」は、コロナ禍の外出自粛で需要拡大し、20213月期決算で過去最大の営業利益を記録した。19年より同社の代表を務める澤田宏太郎氏が率いる“新生ZOZO”は、これからGMV(Gross Merchandise Value = 流通取引総額)だけに頼らない利益構造の構築に本腰を入れていくという。今後ZOZOが成長するために必要なものは何か。ZOZOが打ち立てる3つの戦略について、同社EC事業本部 本部長の松田健氏に伺った。

ZOZOはなぜ、多くのブランドに支持されるのか

ZOZOTOWNアプリ

 新型コロナの影響で、アパレル業界全体の自社ECが成長する中、ZOZOTOWN人気は高まるばかりだ。「ZOZOTOWN」の年間購入者数は約989万人を突破し、出店するブランドの数は8451にのぼる。中には、自社ECを運営するブランドも多い。それでもなお、ZOZOへの出店を継続したいというブランドが目立つのはなぜか

 「端的に言って役割が異なるから。自社ECサイトは路面店にあたり、『ZOZOTOWN』はショッピングモールにあたる。『ZOZOTOWN』のプラットフォームを有効活用して集客につなげられる点に価値を見出していただけているのでは」と話すのは、同社EC事業本部 本部長の松田健氏。

 また、出店ブランドに支持される“意外な”理由として「スタッフ一人ひとりのパッション(情熱)によるところも大きい」と言う。「当社スタッフは、とにかくファッション好きが集まっており、趣味をそのまま仕事にしたような人も少なくない。営業担当とショップ運用担当の2名体制で出店ブランドをサポートするのだが、1000人ほどいる当社スタッフの中から、もともとそのブランドのファンだという人を起用することも多い。どうすれば一人でも多くのユーザーに商品をお届けできるのか、当社も真剣にお話ししますし、時にはブランドさまよりお叱りをいただくなど、パートナーとしての関係性があります」(同)。

ファッションを全方位で展開

フェイスカラー計測ツール「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」

 ZOZOTOWNの一人当たりの年間購入金額は42343円。購入者の平均年齢は33.7歳だが、メーンユーザーは20歳前後のZ世代だという。

 「澤田(宏太郎 代表取締役社長 兼 CEO)の旗振りのもと、『ファッションを買うならZOZO』というスタンスから『ファッションのことならZOZO』に移行するべく動いている。ユーザーが『ZOZOTOWN』というプラットフォームでファッションにまつわる商品を探しやすいようチューニングしていく」とし、「ピンポイントではなく全方位向けに」と松田氏は付け加えた。

 全方位向けとはどういうことだろうか。ファッションと一口で言っても、服、カバン、靴、コスメなど多岐にわたる。客の世代や趣味によって、ファッションに求める質やデザインも異なる。そうした背景から、213月に始動したのが、コスメ専門モール「ゾゾコスメ(ZOZOCOSME)」と国内外のラグジュアリー & デザイナーズブランドを取り扱う「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」だ。

 ZOZOCOSMEのデビューに合わせて、ZOZOの強みであるテクノロジーを駆使したフェイスカラー計測ツール「ゾゾグラス(ZOZOGLASS)」を発表したことで、これまでに119万件の予約注文が入るなど話題をさらった。

 また、ZOZOVILLAでは、ロエベやクロエといった海外の高級ブランドも取り扱う。これまで日本のECサイトでは、インポート商品の取り扱いが少なかった。海外のECサイトから直接購入する手もあるが、送料も時間もかかってしまう。そうした不便を、慣れ親しんだ「ZOZOTOWN」が解決してくれるのは、ファッション好きにとって朗報だ。

澤田CEOが打ち立てる3つの戦略

3D計測用ボディスーツ「ZOZOSUIT 2」

 現在ZOZOは、「ZOZOTOWN」のさらなるサービス向上を目指しつつ、新ビジネスモデルの構築にも力を注いでいる。柱となる3つの戦略は次のとおりだ。

  1. 「買う」以外のトラフィックも増やす
  2. 生産支援に踏み込む
  3. 技術ライセンス販売にトライ

 まず、ZOZOのメーン事業である「ZOZOTOWN」をどう発展させていくか。答えは、「買う」以外のトラフィックを増やすことにあるという。そのための施策のひとつとして、2111月に始動したのがOMOのプラットフォーム「ZOZOMO」だ。取り扱いブランド実店舗の在庫確認・在庫取り置きなどが可能になる画期的なサービスである。「ZOZOMO」を通して、「ZOZOTOWN」ユーザーに在庫情報を共有することにより、実店舗への送客を可能にするものだ。その際、別商品との“あわせ買い”もブランド側は期待できる。

 2つ目は、EC以外の収益ポイントを増やすための「生産支援」だ。「SNSや動画配信サービスの普及により、34年ほど前からD2Cに力を入れるアパレル企業が増えてきた」と松田氏。そうした背景から、D2Cを支援する「YOUR BRAND PROJECT (ユアブランドプロジェクト) 」を立ち上げたが、生産支援には本プロジェクトのノウハウも活かされる。「YOUR BRAND PROJECT」の取り組みは2パターンある。一つは、SNSで活躍するインフルエンサーを対象に、ZOZOが製造や開発、販売のノウハウを提供することで、インフルエンサーの手によるD2Cブランドを立ち上げるパターン。もう1つが、同社が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR(ウェア)」のインフルエンサーをZOZOTOWNに出店するブランドに紹介、ZOZOTOWN内にD2Cブランドを拡充するパターンだ。2パターン合わせて現在60以上のブランドを展開中で、昨年11月には阪急うめだ本店とタッグを組み、初のポップアップショップを開催。ZOZOTOWNで展開する13の人気D2Cブランドが、オフラインにて集結した。

 3つ目は、計測テクノロジーのライセンス販売だ。ZOZOが力を入れるテクノロジー開発の一つに、計測テクノロジーがある。前提として、ECサイトで服やコスメを購入する際に、「試着や試し塗りができない」という障壁を、解消するためだ。17年に大々的に発表した採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」は記憶に新しいが、その後身にあたる「ZOZOSUIT 2」に加え、「ZOZOMAT」、「ZOZOGLASS」という3つの計測テクノロジーのうち、「ZOZOMAT」のライセンス販売を進めている。ライセンス販売第1号はブルガリジャパンで、スマートフォンを使って精度の高い手指の3Dサイズ計測が自宅で簡単にできる「ZOZOMAT for Hands(ゾゾマットフォーハンズ)」を、昨年11月に期間限定で導入した(現在は終了)。

EC事業本部 本部長の松田健氏

 取材中、松田氏がたびたび口にしたのは「ZOZOらしさ」という言葉だ。「前澤(友作・前社長)が代表を務めていた時から引き継がれている“ZOZOらしさ”を、澤田が『ソウゾウのナナメウエ』という言葉で言語化した。さまざまな新規事業を手がける中で、お客さまの想像を超える仕事をしていきましょう、と。それがZOZOらしさであるとスタッフ全員で認識し、ファッション業界を盛り上げていきたい」。