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「値下げ合戦から抜け出し『質の競争』へ」ライフ・岩崎高治社長が語った2022年の戦略

ライフコーポレーション(大阪府、以下ライフ)は2021年12月17日、東京本社で年末会見を行った。岩崎高治社長は「結果的には今年もコロナに左右された年になった」と2021年を振り返りつつ、「来年度(2022年度)を『第六次中期経営計画完成の年』と位置づけ、値下げ・ポイント合戦から抜け出す『質の競争』を志向したい」と、抱負を述べた。

ライフコーポレーション岩崎高治社長

内食需要は安定的に推移 BIO-RALの支持拡大に手ごたえも 

――サプライチェーン分断による原料価格の高騰が話題だが、小売経営者の中には「以前より(値上げが)消費者に受け入れられている」と話す人も多い。ライフはどうか。

岩崎 商品の品目ごとに、当然売上の増減(に差)はあるが、全体的に客足は減っていないし、買い上げ点数も減っていない。20222月期第3四半期の既存店売上高も前年比101.5%と堅調に推移している。テレワークの定着もあって、内食需要は好調だ。

個人的には、行動様式の変化によって一度外食から内食需要へとシフトしたこの流れは、コロナ以前のようには戻らないと考えている。そうなると、引き続き競合する食品スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストア、外食のテイクアウトとの競争になると思っている。当然、お客様は安い方が良いと思われるだろうが、小売業界もマインドを変えていかなければいけない。そのなかで当社は、『質の競争』を志向する。付加価値をいかにつけるかが問われる。コロナ前に激化していた値下げ・ポイント合戦に引き込まれないようにしないといけない。

――「質の競争」とは具体的に何を指すのか。

岩崎 商品の完成度、品ぞろえの豊富さ、陳列など食品スーパーの基本をまずはしっかりと押さえることだろう。その上で、健康にフォーカスしたプライベートブランド(PB)である「BIO-RAL(ビオラル)」の商品群を拡大し、コーナーを拡充させ、店舗展開をさらに進めていくことだ。ビオラルにはかなり手ごたえを感じている。

特にZ世代と呼ばれる20代を中心とした若年層は、消費に対して自分なりの論理を持って、「共感」することを大事にしている。BIO-RALのコンセプトの一つに「サステナビリティ」があり、(この考えにZ世代を中心に共感が広がるため)引き続き伸びていく分野だと考えている。20222月には、首都圏で2店舗目となるビオラルの単独店「ビオラル下北沢駅前店」をオープン予定だ。このほか既存店でも、120店舗を超える店にビオラルのコーナーも差し込んでおり、今後も拡大していく予定だ。

――同質化競争から抜け出すために、総菜も1つのカギになる。今後、売上構成比をさらに上げていく考えはあるか。

 岩崎 必ずしもそうは考えない。あくまでライフでしか買えない商品開発を進めていく中、その一つが総菜(という位置づけ)だ。当社では、水産コーナーの中でアジフライを販売したり、畜産コーナーで鶏のからあげを販売したりしているので、どこまでが総菜か厳密には言えない。また、商圏の違いもある。都心の店舗であれば総菜コーナーを充実させていく必要もあろうが、郊外店では、それは当てはまらない。他社で売れている商品のマネをするのではなく、自ら考えて商品を開発することが大切だ。

当社は、何十年と都心部や大阪市内などバックヤードが狭い環境の中で、競争力の高い売場を構築するためにプロセスセンター(PC)の完成度を高めてきた歴史がある。畜産・鮮魚・農産・総菜・ベーカリー部門のPCの再構築も、現段階でほぼ完了している。今後はPCをうまく活用することで、他社がマネすることができない商品をつくっていきたい。

 

「オーケーが買収していれば、近畿圏での戦い方を変えていた」

――オーケーの抗告が棄却され、関西スーパーマーケット(関西スーパー)とエイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングの経営統合が決まったが、この結果をどう見るか。また、大阪を中心とした近畿圏の競争環境はどう変わっていくか。

岩崎 もしオーケーが関西スーパーを買収していたら、戦い方の土俵をずらしていただろう。結果としてはH2Oとの統合で決まったが、今後はどちらかといえば、比較的(売り方が)近い中での競争になる。やはり、どれだけ「質の競争」において差をつけられるかが問われるだろう。

近畿圏での競争環境については、確かにロピア、バローなどエリア外のチェーンが積極的に出店している。だが、冷静に考えると、大阪市でも特に人口が増えているわけではないし、(進出を競うほど)そんなに「おいしい」マーケットではない。もっと言えば、「やめてくれ」というのが本音だ(笑)