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ニューノーマル時代に求められるMD施策とは?コープデリのキーマンに聞く

新型コロナウイルスの流行から1年以上が経過し、カテゴリーによってはコロナ以前の水準に戻るもの、継続して伸長するものなど差が出ている。ニューノーマル時代に求められるMD施策とは何か、コープデリ生活協同組合連合会の店舗グロサリー商品部担当次長兼グロサリーグループ長の京本健氏に話をきいた。

コロナ禍から1年、カテゴリーによって明暗も

――コロナ禍から1年以上が経過しましたが、2021年に入ってからのコープデリの販売動向をお聞かせください。

コープデリ生活協同組合連合会 店舗グロサリー商品部担当次長兼グロサリーグループ長
京本 健 氏

京本 新型コロナウイルスの流行についてはこれほど期間が長引くとは思っていなかった、という企業が大半ではないでしょうか。とくに小売業は20年2月27日の学校休校要請以降の爆発的な売上を覚えているだけに、今期の3・4月が非常に厳しい状況になることを覚悟していたと思います。

 しかしふたを開けてみると新型コロナウイルスの影響は今年の春以降も続いており、10月の緊急事態宣言明けまでは、前年に対し予想ほど厳しい状況にならなかったというのが、21年上期の振り返りになります。

 ただし、消費者もコロナ禍の状況に慣れてきたということも影響しているのでしょうが購買行動に変化が生じ、カテゴリーによっては動きが鈍くなったもの、消費が高止まりしているものなど差が出てきています。

消費者もコロナ禍の状況に慣れてきたということも影響しているのか購買行動に変化が生じ、カテゴリーによっては動きが鈍くなったもの、消費が高止まりしているものなど差が出てきている

――好調なカテゴリー、売上の落ち着いたカテゴリーを具体的に教えてください。

京本 コロナ禍の動きについては「コロナ需要」のひとことで片付ける方が多いのですが、細かく見ていくと食品だけでも「備蓄系」「手作り」「即席」の3つのクラスターに大きく分類されます。コロナ禍は食品なら何でも売れたのかというとそういうわけでもなく、たとえばペットボトルの飲料類は20年・21年ともに数字に変化はありません。一方、同じ飲料でもコーヒーや紅茶、ココアといった嗜好飲料は在宅時間の増加に伴い伸長しています。

 「備蓄系」で見ると、醤油や味噌、食用油といった調味料類は、昨年、学校休校が要請された直後から消費者のまとめ買いが始まりました。基礎調味料は利益商材でもあることから今期は前年比が非常に厳しくなっています。またコロナ禍以降、常備することが当たり前となったマスクやハンドソープなどの衛生関連用品は前年3月に在庫切れが起きていたことから、今期は前年を上回る数字を出しています。

 意外なところで伸びたのがアレルギー関連の商品です。アレルギーの子供を持つ家庭にとっては非常に重要な商品群であり、それまではあまり目立たない存在でしたがコロナ禍以降、一気に注目度が高まりました。

 「手作り」クラスターが伸びたのは、飲食店の営業自粛や学校休校・自宅勤務などの外出自粛に伴い、内食需要が拡大したことに起因します。前述した調味料に加えて乾物商品、さらに子供が家にいるということでホットケーキミックスやクッキーの粉などの製菓用品もよく動きました。これらの商品は一時の極端な購買が減った今年に入ってからは前年を大きく割り込んでいます。

 「即席」クラスターは主に在宅勤務や休校中の昼食需要を取り込むことで成長しました。レトルトカレーやレトルトごはん、袋ラーメンやカップラーメンなどがそれにあたります。これらの商品群はまとめ買い需要のあった3・4月の前年比は大きく割り込んだものの家庭内ストックが常態化したことで、高い水準を維持しています。

4月5日週は、どのカテゴリーも前年のコロナ禍での伸長の影響を大きく受けているが、 緊急自体宣言解除後の10月18日週は、カテゴリーで差が出てきている。

外出機会が増えたことで動くようになったカテゴリーも

――10月の緊急事態宣言明け以降、変化のあったカテゴリーはありますか?

京本 顕著だったのがガム・ラムネ・グミといった商品群です。緊急事態宣言下では低迷していましたが、10月以降、電車や車での外出が増えたことで口臭などのエチケット対策としてよく動くようになりました。また朝食需要としてのシリアル、子供用のカレンダー菓子も外出機会が増えたことで伸びるようになった商品のひとつです。

 先ほどレトルトカレーやラーメンなどの簡便商品は高止まりしているとお話ししましたがこの傾向は10月以降も続いています。またアレルギー食品やパスタ類なども家庭の常備品として定着したのか10月以降も比較的高い水準を維持しています

――客層にも変化はあったのでしょうか?

京本 コープデリはID-POSによる年代・クラスター分析を重視し、各バイヤーが商談や棚割に活用しています。コロナ禍以前は60・70代の組合員構成比が非常に高かったのですが、コロナ禍を機に30・40代の若い世代の来店が増えました。しかし、コロナ禍から1年以上が経過し状況が落ち着いてくると、客層の中心は以前の60・70代に戻りつつあります。

 それに伴い、若年層の購買率が高かった洋風調味料、子供向けのポケット菓子、シリアル、インスタントコーヒーといったカテゴリーのID客数は前年から大きく下がっています。

 コロナ禍から来年で2年となりますが、消費者もウィズコロナのライフスタイルに慣れてきており、われわれ小売業も社会情勢やニーズの変化を考慮しながら、販促を考えていく必要があります。とくに高止まりしているカテゴリーについては、価格やセールに頼らないコープデリならではのMDで、組合員に興味を持っていただける売場づくりにつなげたいと考えています。

オンライン商談推進の功績と課題

――コープデリではコロナ禍以降、オンライン商談を推進されていますね。

京本 はい。コープデリでは感染リスクの低下を目的に早い段階から商談をオンライン方式に切り替えてきました。これは緊急事態宣言明けの21年10月以降も継続しています。

 オンライン商談のメリットとして、バイヤーにコロナ感染者を一人も出さなかった点、移動時間等がなくなったことで販促施策などを考える時間が確保しやすくなった点、さらに移動や時間のコストがなくなったことで取引先様との取り組みが増えた点が挙げられます。

 とくに、大手の取引先様についてはコロナ禍で人を動かさずに商談できることへのメリットを強く感じていただけたようで、取り組みレベルが飛躍的に向上しました。

――逆にオンライン商談の課題はどんなところにあるでしょうか?

京本 オンライン商談を推進してきた分、デメリットも生まれました。たとえば、取引先様によってはやはり対面での商談を希望する企業もあり、そういった企業との取引が希薄になりました。とくに中小のメーカー様に多く、コロナ禍前後で取引先様によって取り組みの格差が出てきたという印象です。

 また、競合他社では対面の商談が戻りつつありますが、コープデリはオンライン商談を徹底した分、バイヤー自身が外に出ることへのメリットを感じられなくなっている点も想定外の状況となりました。当然、対面商談ならではの強みもありますので、対面で行うメリットをもう一度見つめ直し、ニューノーマル時代の商談の在り方を考えていきたいと思っています。