15年ぶりにインタビューをしたファーストリテイリング(山口県)会長兼社長の柳井正さんは、すっかり自信と貫禄に溢れていた。
当時の記事のコピーを差し出し、見ていただくと、「若かったなあ」と細い目をさらに細めてとても懐かしがった。
その15年前とは、セレクトショップチェーンからSPA(製造小売業)チェーンへの切り替え時期。株式公開を果たし、これから「ファミクロ」「スポクロ」を始めるという折に山口県宇部市の本社を訪ねたものだ。
周知の通り、それら事業は失敗に終わった。
しかし、その後、「フリース」「原宿店」で大成功を収め、「ユニクロ」は一大ブランドとして一気にブレークする。
ところが、野菜事業の「SKIP」では23億円の損失をこしらえ、「グローバル旗艦店」「ヒートテック」「サラファイン」「シルキードライ」は大成功、その一方で靴事業「CANDISH」や「キャビン」の婦人服事業は撤退する。
そして、現在、海外事業のアクセルを踏み込み――。
まさに、その著作『一勝九敗』(新潮社)を地で行く、壮絶なビジネス人生の中で確実に地歩を固め、日本一のアパレルチェーンをつくりあげ、ファーストリテイリングは世界一を目指し邁進する。
柳井さんの経営で目を見張るもののひとつに撤退速度がある。
どんなに思い入れを一杯込めてスタートした事業でも、うまくいかない場合、早ければ半年ほどで見切りをつけ、撤退してしまう。「ファミクロ」「スポクロ」や「SKIP」の事業はその典型だ。
ところが2006年に本格スタートした「ユニクロ」のセカンダリーラインである「g.u.(ジーユー)」事業だけは、赤字であっても耐え続けた。
耐え続けるうちに、ようやく上昇カーブを描き始め、2009年8月期には黒字化。この3月30日には、東京銀座にグローバル旗艦店がお目見えする。
そこで、「『g.u.』事業はどうして撤退しなかったんですか?」と水を向けてみた。
「本業だからですよ」。
柳井さんは、少し考えた後に、当然のように答えた。
※柳井正さんのインタビューは『チェーンストアエイジ』誌に近日中に掲載される予定です。乞うご期待。