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フルセルフレジなぜ復権? レジ業務の合理性を突き詰めれば辿り着くセルフサービス化

コロナ禍はスーパーマーケットにも多くの変化をもたらしましたが、大半は以前からの流れを加速させるもので、傾向そのものはコロナ以前から見られていました。ただ、中には変調を感じられる現象もあり、セルフレジの復権はその1つです。コロナ禍以前は新店に導入されるレジ設備といえば通常レジでもセルフでもなく、商品スキャンは店員が行い、支払いは顧客だけで行うセミセルフ式が主流になったはずでした。しかしここに来て完全(フル)セルフレジの占める割合が明らかに高まっています。これにはどのような合理性が働いているのでしょうか?

セルフレジでレジスペースの圧縮が可能に(マルエツ武蔵新城店)

非接触ニーズが転機に?

 セルフレジは顧客にとって手間であり、商品スキャンも従業員が行うのに比べて時間を要します。使う人が増えなければ、レジ業務の改善効果は限定的になります。セルフレジに対する顧客の「面倒くさい」というマインドを変えるのにコロナ禍は役立ったようです。顧客は進んで非接触を欲し、従業員にも非接触を求めるニーズがありました。どちらにとっても好都合なやり方がフルセルフレジでした。

 店にとってはフルセルフの方が効率的なのは間違いありません。問題は顧客のレジ待ちのストレスが軽減されるかどうかです。売上の大きい店でも、セルフレジが10〜20台といった規模で稼働すれば精算スピードの改善につながるようです。とくにピーク以外の時間帯での改善効果は高いはずです。有人レジはピークでなければフル稼働しないので、空いている時間帯にもそれなりのレジ待ちが発生するものですが、セルフレジなら全台がいつでも稼働します。さらにセルフレジは、レジやサッカー台のスペース圧縮にも有効です。売場が制限された小型店など、セルフレジを配備することで台数を確保する事例が増えています。

セルフ+キャッシュレス、さらにスマホ活用

 フルセルフレジによる人時改善効果をさらに高める方法として、フルセルフレジをキャッシュレス専用にするパターンもあります。それでは利用者を制限することにならないかとの不安もありますが、食品スーパーではキャッシュレス比率40%台は珍しい話ではありませんし、過半はキャッシュレスというチェーンもあります。そうなるとキャッシュレスセルフレジは、もはや顧客のマジョリティへの配慮です。現金派と分けることで、キャッシュレス派のレジ待ちは一段と短縮するでしょう。

商品スキャン作業と決済処理を分離してさらに効率化(イオンスタイル横浜瀬谷)

 9月にオープンしたイオンスタイル横浜瀬谷(横浜市瀬谷区)とマルエツ春日駅前店(東京都文京区)は、どちらも駅前・マンション直下というロケーションで、2フロア構成の売場という共通項があります。駅へのアクセスやマンション居住者の利便性のため、あえて各フロアにレジを配備しました。その過半数はフルセルフレジです。さらに、どちらの店舗もキャッシュレスセルフレジを配備したほか、イオンリテールはセルフスキャン端末「レジゴー」用の精算機を設置、マルエツはスマホ精算アプリ「スキャン&ゴー」を導入しています。商品をセルフスキャンしてもらう選択肢を可能な限り用意したうえでの各フロアへのレジ配備です。レジ業務に関わる人時を極力抑えようとしています。

突き詰めればセルフサービス

 フルセルフレジの復権をもたらした要因は何か、と言われれば、 非接触ニーズはきっかけに過ぎず根本的にはレジの精算・会計処理を誰も望んでいないことがあると思います。店舗にはコストがかかりますし、顧客にとっては義務でしかありません。レジを通過しないと店は代金をもらえず、顧客は商品を持ち帰れないので、やむなくやっていることです。レジ業務の効率化を突き詰めればゴールはセルフサービスになるでしょう。あとは顧客にかかる手間や負担をいかに減らし、利用を促すかです。

フルセルフレジで小型店にも必要なレジ台数を確保(ライフ本郷三丁目駅前店)

 非接触を求めるニーズは、セルフスキャンを手間と感じる顧客心理を和らげました。いつでもフル稼働しているレジというのも、稼働していないレジを横目に有人レジに並ぶよりはストレスを減らすかもしれません。商品を選んでいる最中にスキャンも済ませてしまえる「レジゴー」は、精算機で行う決済処理を著しく短縮します。さらに決済までスマホで完結する「スキャン&ゴー」なら、レジ精算に費やす時間を実質的に無くしてしまえます。買物途中に商品スキャンをする人はまだ少数派ですが、決済処理の時間を短縮できる明らかな合理性があります。紆余曲折はあっても、店も顧客もより合理的な方へ流れていくのではないでしょうか。

 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは「スキャン&ゴー」の利用率として、当面は1割を目標にしています。藤田元宏社長は「有人レジは全てセルフに置き換えたい」とも語っており、レジ業務を完全にセルフサービス化する未来を描いています。それがいつ実現するかは分かりませんが、技術的にはすでに可能です。そこにどう近づいていくか、顧客心理をいかに変えていくかの試行錯誤になりそうです。