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ZOZOのコーディネートアプリ「WEAR」ソーシャルコマース機能追加のねらいとは?

ファッションが好きで積極的に着こなしを発信する人と、ファッションをどう着こなせばよいかと悩む人を結び付けるファッションSNSと言えば、ZOZO(千葉県/澤田宏太郎 代表取締役社長兼CEO)が運営するファッションコーディネートアプリ「WEAR」だ。

その「WEAR」が今夏、アプリ上からファッションアイテムを簡単に出品・購入できるソーシャルコマース機能を追加した。アパレル業界では各社ともサステナビリティへの対応を加速させる中、「WEAR」ユーザーのクローゼットの中をうまく循環させようという新たなサステナブルファッションへの取り組みに挑戦する。「WEAR」に込める想い、今後目指す姿などについて、ZOZO ブランドソリューションプロダクト戦略部 ディレクターの福岡明彦氏に話を聞いた。

人、コーディネートを軸に、新しい購買体験を提供するファッションSNS

WEARの購入画面

 2013年にZOZOがスタートしたファッションコーディネートアプリ「WEAR」は、ファッション好きなユーザーがお気に入りのコーディネートを投稿し、ファッション初心者の「どういうコーディネートをしたらよいか」「どういう着こなしをすればよいのか」といった悩みを解決するなどリアルなコーディネートから、最新トレ ンドや洋服の着こなし方法がわかるファッションに特化したSNSである。

 2022年6月末時点で、アプリダウンロード数は1600万件を超え、1300万件以上のコーディネートが投稿されている。中でもファッションに悩みをもつユーザーが参考にしているのが、WEAR内のインフルエンサー的立場である「WEARISTA(ウェアリスタ)」の着こなしだ。WEAR公認のファッショニスタとして活躍するウェアリスタには、WEARで人気になった一般ユーザーだけでなく、モデルやデザイナー・タレントといった各界著名人も参加。センスの高いスタイリングやトレンドを取り入れたコーディネートは、多くの人の着こなしのお手本となっている。

 WEARが広まるにつれてユーザーから上がってきたのが、「投稿者が着ている洋服を着てみたい」という声だ。一方、ウェアリスタをはじめとする投稿者側からも「大切に着てくれる人に洋服を譲っていきたい」という声も届いていた。

 ファッション特化型のSNSという機能だけでなく、投稿者の着用アイテムを手軽に出品、購入できるフリマ機能があれば、コーディネート、人(投稿者と閲覧者)を軸にした新しい購買体験を作り出せるのではないか。さらに、サステナブルファッションにも貢献できるのではないか。このようなねらいから、ユーザーの声をきっかけとして、新たにソーシャルコマース機能が付加されることになった。

 WEARが目指すのは、洋服への愛情が伝わる取引である。

 「洋服をただ『もの』として売買するのではなく、どのような想いで購入し、どのような気持ちで着用していたのかという『想い』や『ストーリー』をつなげていきたい、というのが私たちの考え。同時に、クローゼットに溜まっていく洋服をうまく循環させることで、サステナブルなファッションの在り方を広げていきたいと思っている」(福岡氏)

「出品してほしい」の意思表示「WANT」機能

WEARの出品画面

 WEAR上にソーシャルコマース機能が追加されたことを広く告知するため、著名人に私物を出品してもらうイベントを7月初旬から企画した。出品してからわずか5分程度で即売する商品が続出するなど、滑り出しは好調だという。

 WEARのソーシャルコマース機能には、投稿者のコーディネートが気に入った場合、そのアイテムの出品をオファーする「WANT(欲しい)」という機能が実装されている。これにより、ユーザーは憧れのウェアリスタやファッショニスタが着ているアイテムや身近なユーザーの気になるコーディネートアイテムに対して、ワンタップで気軽に購買意思を示すことができる。

 投稿者側からは早速、「いつも見てくれているユーザーのニーズがわかるようになってうれしい」といった感想が聞かれているという。また、商品のやり取りはフリマサイトのように当事者同士が行うが、実際に売買を経験した出品者からは「いつも見てくれるユーザーに洋服を譲ることになったので、手紙を添えて発送した」という心温まる体験談まで寄せられた。

 「WEARにはすでに1300万件以上のコーディネートが投稿されているが、ソーシャルコマース機能を通じて、ファッションを介した新たなコミュニケーションのきっかけを作ることができたらと考えている」(福岡氏)

 「WANT」で購入意思を示す際には、合わせて任意で購入希望額の設定もできる。オファーを受けた投稿者側が所有アイテムの需要を知って出品へのモチベーションを高めたり、出品時の価格設定の参考にできる仕組みになっている。

 さらに、WEARに出品されたアイテムは、ヤフーが運営するPayPayフリマアプリをダウンロードしID連携をすることで、PayPayフリマにも同時出品が可能だ。WEARユーザーとしては売場を簡単に拡張でき、PayPayフリマ側は多様なファッションアイテムを集めることができる。

「投稿者の身長」などファッション情報の豊富さがWEARの特徴

ブランドソリューションプロダクト戦略部 ディレクターの福岡明彦氏

 WEAR最大の特徴は、ファッションに特化したSNSだからこそのファッション情報の豊富さだ。

 まず、「ワイドパンツ」「白シャツ」「結婚式」などカテゴリーやブランド・活用シーンなどのワードで検索ができる。さらに、「投稿者の身長」、実際のファッションアイテムを使った「着用コーディネート」「似たアイテムを使ったコーディネート」などの絞り込みも好評だという。

 「パンツなどの場合、投稿者の着こなしがすてきだと思っても自分が着用した際のサイズ感がわからず、購入に踏み切れないことも多いと思う。WEARでは自分の身長に近いユーザーの着用コーディネートを検索して参考にされるケースが多いので、着用時のサイズ感を判断できるという声も多くいただいている」(福岡氏)

 2021年にサステナビリティステートメント「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」を掲げたZOZOWEARのソーシャルコマース機能は、サステナビリティの視点で重要な二次流通の機会を創出する取り組みとして期待される。

 「人から人へ大切な1着をつなげていきたい。これが私たちの想い。WEARにソーシャルコマース機能が付加されたことで、コーディネート、人を軸にした新しい購買スタイルをより多くの人に体験いただき、もっとファッションを楽しんでもらいたい。そしてWEARを通じて、あなたに似合うファッションが見つかる世界を実現していきたい」(同)