パナソニック産機システムズでは2021年6月に完全義務化されるHACCP基準に対応するための支援サービス「エスクーボフーズ(S-cubo Fs)」の提供を開始。設備管理から衛生管理まで食の安全安心を担保し、記録を保管するサービスとして各方面から注目されている
HACCP義務化に伴う作業負担を軽減
HACCP(Hazard Analysis CriticalControl Point:危険要因分析重要管理点)は、安全で衛生的な食品を製造するための国際基準を満たした衛生管理手法のひとつだ。2020年6月に改正食品衛生法が施行され、21年6月には完全義務化されることから、小売業、外食業など、食品を扱うすべての事業者がHACCPに沿った衛生管理を行うことになる。
HACCPに沿った衛生管理では、原材料の取り扱いや施設店舗の清潔・維持、従業員の健康管理等が求められ、それらのデータをすべて記録し保管する必要がある。しかし、多店舗展開している食品流通小売事業者や外食事業者は、HACCP導入から運用まで、チェーン全事業所を継続的に管理する必要があるため、作業者だけでなく管理者にも大きな負担となることが想定される。
パナソニック産機システムズは、業務用HACCP義務化に伴う作業負担を軽減設備機器およびシステムの直販・サービス・エンジニアリングを行うパナソニックのグループ企業だ。同社では温度と電力の可視化サービス「ERMOS(エレモス)」、多種多様な設備機器の情報をインターネット上で一元管理する「設備台帳システム」、メンテナンス履歴の一元管理や機器の異常発生時などに機器の運転データを分析し問題箇所を早期に発見する「プロメンテツール」など、遠隔データサービス 「エスクーボ」を提供しており、これまでに15,000店舗以上の導入実績を持つ。
改正食品衛生法に係る21年6月のHACCPの義務化に向け、パナソニック産機システムズでは、食の安全・安心・省力化を支援するサービス「エスクーボフーズ」を開発し、20年8月から提供を開始した。
手間をかけずにデータ収集と管理が可能に
「エスクーボフーズ」はHACCPに沿った衛生管理などに求められる文書・帳票の作成やその運用実績の記録を支援するクラウドサービスだ。
「エスクーボフーズ」の内容は、一般衛生・工程管理サービスと、温度日報サービスの2つに大きく分かれる。
衛生・工程管理で最も厄介なのは健康状態や作業内容などを紙に手書きする点と、その膨大なデータを管理する点にある。「エスクーボフーズ」では紙帳票で記録していた作業を、タブレット端末を用いることで省力化。すべての記録がデジタル化されサーバー保存されるため、管理者はインターネットを用いて各事業所で記録されたデータを確認することが可能となる。
タブレット端末はID・パスワードを入力することで誰でも簡単に操作でき、従業員の健康状況や施設の衛生状況の記録に加えて、設備機器と連携することで温度データの自動収集や調理時の芯温データ収集なども可能だ。
この項目も自社の衛生管理項目に沿った内容にカスタマイズすることができ、各部門の調理場や事務所等に複数台設置することで、より効率的にデータ収集および記録の保存ができる。導入することで衛生管理記録の可視化とともにペーパーレスを実現するほか、本部や各店舗の情報をリアルタイムで共有でき、記録や管理作業の手間がなくなることで人件費削減にもつながるだろう。
温度日報サービスは、同社が従来から提供するサービスのひとつ。食品スーパー等において冷蔵ケースの温度管理は重要項目のひとつだがこの温度管理をすべて自動的に計測し、記録をクラウドで管理することにより手間をかけずにデータ収集と管理が可能になる。
21年6月の完全義務化まで1年を切っており、同サービス発表後、食品スーパーやドラッグストアなど各業態からの問い合わせが増えているという。パナソニック産機システムズでは、「エスクーボフーズ」の内容をブラッシュアップしつつ、食の安全・安心につながるサービスを継続的に提供していきたいとしている。