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注目のパワーアシストスーツは普及するのか=国際ロボット展レポート

昨年12月に開催された「国際ロボット展」。各業界で人手不足が深刻な問題となるなか、省人化・省力化の動きが加速している。物流、農業、介護など、幅広い分野において導入が進むのは「パワーアシストスーツ」だ。同展で注目を集めた製品を紹介する。

 

あくまでも“作業補助”のパワーアシストスーツ

 20191218日から21日までの4日間、東京ビッグサイトでは、世界最大級のロボット展示会『2019国際ロボット展(iREX2019)』が開催された。23回目を迎える今回のテーマは「ロボットがつなぐ人に優しい社会」。4日間の来場者数は前回を上回る約14万1000人を数えた。

 なかでも、2018年後半に低価格の新製品が投入され、市場拡大が見込まれ複数のメーカーが出展するパワーアシストスーツ(PAS)のブースは、いずれも数多くの人で賑わっていた。

 現在、PASには2つのタイプがある。

 バッテリーを搭載し、モーターにより作業を補助するものと、空気圧を利用した人工筋肉により作業を補助するものだ。「パワーアシスト」という名称から、PASを身に付けるとかなり重いものでも、軽々と持ち上げられるようになるというイメージを勝手に抱いてしまうが、実のところそれは「勘違い」だ。20kgのものしか持ち上げられない人は、いくらPASを装着したとしても、それ以上にものを持ち上げることはできない。

PASのリーディング企業が最軽量クラスの新製品を投入

ユーピーアールが「SUPPORT JACKET Ep ROBO」を新発売

 10年からアシストスーツ事業に取り組むユーピーアール(東京都/酒田義矢社長)はこの分野の先駆け。189月に、負担軽減に必要な基本的な機能を備えながら、業界初となる2万円台という低価格を実現した無動力モデルを発売した同社だが、この国際ロボット展では、1910月より販売・レンタルを開始したモーター付きモデルも積極的にアピールしていた。

 モーターの力で筋肉の活動比率を最大43%軽減し、「上げ下げ」「斜めの動き」「前傾保持」を最大補助力10㎏重でサポートする「SUPPORT JACKET Ep ROBO」。重量は3.4㎏で、モーター搭載のアシストスーツでは最軽量クラスだという。稼働時間はフル充電の状態で連続4時間(フル充電に要する時間は6090分)。導入にあたっては、デイリーレンタル(1台につき11,000円、最低10日間から)、月額定額サービス(月額18,000円)、購入(オープン価格)の3つのタイプから選べる。

理科大発のベンチャーが価格を抑えた新製品を発表

イノフィスが「マッスルスーツEvery」を出展

 2000年から人工筋肉を使用したウェアラブルロボット「マッスルスーツ」の研究開発を進めてきたイノフィス(東京都/古川尚史社長)は、「人のためのロボット」の創造をめざし設立された東京理科大学発のベンチャー。同社では、従来モデル比で3分の1以下の136,000円(税別)で1911月に販売開始した「マッスルスーツEvery」を中心に展示していた。

 従来モデル同様、空気を駆動源とする人工筋肉により、25.5㎏重の最大補助力で、腰への負荷軽減から、日常の力仕事までをサポートする機能をもつ。本体重量はマッスルスーツ最軽量の3.8㎏。10秒あれば、装着完了できる。

既存技術を生かしPAS事業に参入

ジェイテクトがPAS事業に参入し「J-PAS」を出展

 自動車関連から、鉄鋼、鉄道、航空・宇宙、建設機械・農機、風力発電など、さまざまな領域でモノづくりを支えるジェイテクト(愛知県/安形哲夫社長)では、電動パワーステアリングで培ってきた技術を活かし、パワーアシストスーツ事業に参入。188月から「J-PAS」の販売・リースを行っている。リモコンで、力の強さやスピードを4段階で選択できるようにしているのが、同社の特徴だ。

 中出力モデルの「J-PAS LUMBUS」は、本体重量4㎏、稼働時間は4時間以上。最大補助力は10㎏重、業界最小クラスの腰幅(44㎝)の軽量・コンパクトモデルだ。ショルダーベルトを肩にかけ、腰部ベルトを留める。胸部ベルトを留める。サイズを調整する。の3ステップで着脱できる。

 当日会場で、人工筋肉によるアシスト機能付きのPASを装着し、20kgの重量物を持ち上げてみたが、装着の前後での違いといえば、「心持ち持ち上げやすくなった」と感じる程度だ。

 ただ、ふだん重い荷物を運び慣れていない人には、確かにサポートになるという感触があった。太ももの周りに密着した人工筋肉が、太ももと腰が一体になるように働き、腰に負担をかけることなく荷物を持ち上げられるからだ。荷物持ち上げ用の強制ギブスといったほうがわかりやすいだろうか。PASを装着した状態に慣れれば気にならなくなるのかもしれないが、異物を背負わされているという感覚はぬぐえない。荷物の上げ下げ専門の作業ならともかく、1日中、PASを身に付け店内を自由に動き回るという姿は、残念ながらまだ想像することはできなかった。