[東京 21日 ロイター] – ソニーグループで電気自動車(EV)事業を統括するAIロボティクスビジネス担当常務の川西泉氏は21日、ロイターのインタビューに応じ、EV市場投入の判断時期について「期待に応えられるスピード感で対応したい」と述べた。同時に、部品調達などのパートナー企業を今後拡充する考えも示した。
同社は今月5日、テクノロジー見本市のCESで、EVの市場投入を本格検討する新会社を今春設立すると発表した。川西常務は「(判断をする)具体的な時期は言えないが、スピード感は重要だ」とも述べた。
EVは米アップルも開発を進めており、自動車の電動化とデジタル化が進む中、異業種からの参入が本格化している。
事業パートナーには日本企業も
CESで公開したスポーツ多目的車(SUV)型試作車「VISIONーS02」の事業パートナーは、独自動車部品大手のロバート・ボッシュ、コンチネンタル、独フォルクスワーゲン傘下の英ベントレー、米半導体大手のエヌビディア、クアルコムなど10数社。
川西常務はこの中に日本企業が含まれていることも明らかにした上で「これまで付き合っているパートナーとも(関係を)継続する予定だし、新たに必要なパートナーも出てくるだろう。幅広く考えていきたい」とした。
現在の協業先は日米欧企業。製造業の間では米中の政治的対立が部品調達などに影響を及ぼしているが、常務はパートナーの選出にあたり「他の商品と同様のスタンスで考えている。国を意識してという話ではない。(提供を受ける)技術として展開する商品にマッチしているかという判断がまずある」と述べた。
販売先が世界に広がれば、パートナーの役割も増える。地域別にパートナー企業を募る可能性については「あるかもしれないし、ある程度決められたパートナーとワールドワイドで協業する可能性もある」との見通しを示した。
EV製造でハード熟知、電子制御などIT技術を活用
ソニーが狙うEVビジネスは「移動空間の中をどう進化させるか」。自動運転技術の進展で乗車する人は次第に運転から解放されることになり、そこに常時高速ネットに接続された車で映画やゲームなどのコンテンツを提供する──「運転しない時間をどう使うかをひとつのテーマとして追及したい」という。
川西常務は、EVそのものを製造することにも大きなメリットがあるとする。自動運転に欠かせない安全性の向上に「ソニーのセンサー技術が貢献できる。そのためには車のメカニズムを熟知していなければならない。(車という)ハードの領域も押さえていくべきという考え方だ」と説明した。
同時に、EV化で電子制御が可能な部分が増えてくることも追い風となる。「これまでのメカニカルなエンジン、トランスミッションであれば限界があるが、EVになるとソフトウエアによる電子制御が増える。そこにソニーのIT技術を活用できる」。IT発の企業ならではの強みをそこで発揮する考えだ。
EVビジネス、挑戦する価値あると判断
従来の自動車と一線を画す可能性もあるソニーのEVは、どのようなユーザーが購入するのか。常務は、従来のいわゆる車好きに加えて「例えばIT技術やエンタメ性に関心を持ってもらえるようなユーザー層を想定して、商品性を考えたい」と話す。
車は人の命と直接関わるため「安心安全の確保は大前提。当然譲れない」。しかし、EV化は世の中の大きな流れであり、「やる(参入する)ことのリスクと、やらないことのリスクを比較した時、チャレンジに値すると判断した」という。