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トライアルのスマートストアで重要な役割を果たす「リテールAIカメラ」の機能を徹底解説!

前回は、われわれにとってデジタルトランスフォーメーション(DX)の本質は「現場の課題を解決すること」であることをお伝えしました。今回は、われわれのスマートストアで「リテールAIカメラ」を使って現場の課題をどのように解決しようと試みているのかをご紹介します。

人はバナナを24時間見張っていられない

 リテールAIカメラの主な機能として「欠品検知」があります。分かりやすいバナナの例で紹介しましょう。

 以下の3枚は、リテールAIカメラの実際の画像です。商品の充足率を画像からAIが自動判定して売場の状態をスコア化しています。

 時間の経過につれて商品の数が減り、スコアが下がっていく様子がわかります。リテールAIカメラ導入以前は、「いつ・どのタイミングで・どのようなペースで商品が売れたのか」を正確に把握することは困難でした。ひとつの売場にずっとスタッフが張り付いていることは非現実的だからです。

 売場を管理する本部では、リテールAIカメラから取得したデータを蓄積・分析し、発注量や陳列量を適正化していくことで、「欠品が起こりにくい売場づくり」に生かしています。

 

「買われなかった」情報も得られるように

 次に紹介するのは「お客さまの行動を見る」機能です。以下の画像は、リテールAIカメラが棚前でのお客さまの行動をプライバシーに配慮したかたちで分析している様子を、わかりやすく表示したものです。

 お客さまが棚前で立ち止まったのか、商品に注目したのか、商品を手に取ったのかなどのデータが取得できるようになっています。これまでのPOSデータでは、レジを通った(実際に購入された)商品の情報しかわかりませんでした。しかし、リテールAIカメラの活用により、「買われなかった」商品の情報も得ることが可能になりました。この情報は、棚割りや売場のプロモーションの最適化を試みる際に重要な役割を果たします。

AIカメラ×冷蔵ショーケースでロス削減に挑む

 20211028日にオープンした「スーパーセンタートライアル宮田店」(福岡県宮若市)では、「AI冷蔵ショーケース」を初実装しました。これは、通常の冷蔵ショーケースをAIカメラやセンサー、LEDIoT化したものです。

「スーパーセンタートライアル宮田店」で初実装された「AI冷蔵ショーケース」

 この「AI冷蔵ショーケース」には、AIカメラが取得した画像データから欠品情報を数値化し、従業員が発注するタイミングで、チャンスロスが大きいと判定された商品をLEDの点灯により知らせるという仕組みを導入しています。従来、欠品が発生していないかどうかはスタッフが目視で確認していましたが、AI冷蔵ショーケースでは、LEDの色によっていつ欠品が発生したかがわかるようになっています。

 日本語が不得意な外国人の店舗スタッフでも直感的に理解できるように、実際の店舗オペレーションを想定した工夫がされています。商品を陳列するケースが人をサポートし、一緒に売場作りをよりよくしていくことをコンセプトにしています。

 現在のところは、売場でチャンスロスが発生している商品を特定して、その発注量を従業員が調整するという形式を採っています。これをさらに進めていくことで、将来的には発注まで含めて自動化が可能となるのではないかと見込んでいます。

 AIカメラを軸とした取り組みの最終的なゴールは無人店舗になるとわれわれはイメージしています。しかしそれは一足飛びに実現するものではありません。まずは今ある店舗の課題を、テクノロジーでひとつずつ解決していくこと。今は、IoT機器が人の業務をサポートし、お客さまにとって望ましい売場づくり(「ほしいものがほしい時にある(=欠品しない)」「ほしいものが買いやすい場所にある(=棚割りの最適化)」)を進めるフェーズです。

 次回は、私たちRetail AIAIカメラと同様に注力しているスマートショッピングカートについて、店舗への導入実績や効果などをご紹介します。

プロフィール

永田洋幸(ながた・ひろゆき)

1982年福岡生まれ。米コロラド州立大学を経て、2009年中国・北京にてリテール企業向けコンサルティング会社、2011年米シリコンバレーにてビッグデータ分析会社を起業。2015年にトライアルホールディングスのコーポレートベンチャーに従事し、シード投資や経営支援を実施。2017年より国立大学法人九州大学工学部非常勤講師。2018年に株式会社Retail AIを設立し、現職就任。2020年よりトライアルホールディングス役員を兼任。