全国の食品スーパー(SM)から注目されるヤオコーの総菜開発。直近の同社デリカ事業部の売上高は競合他社と比較して大きく伸長している。節約志向の高まりや二極化への対応など、複雑なニーズへの対応が求められるなか、ヤオコーはどのような総菜提案を進めているのか。最近の新店の総菜売場から具体的な取り組みをレポートする。
総菜部門の23年度
中間業績は8.5%増!
コロナ禍で一時、減少した総菜市場だが、22年の国内総菜市場の規模は対前年比3.5%増の10兆4652億円と再び伸長(日本惣菜協会「2023年版惣菜白書」より)。23年には10兆円台後半への到達も期待されている。
首都圏で店舗展開する主要食品スーパーの23年度中間決算の総菜部門の業績をみても、各社売上を伸ばしている。原料価格高騰による商品単価の上昇ももちろん影響しているが、コロナ収束に伴い人々の活動が活発化し、買ってすぐに食べられる中食商品が改めて求められていると言える。
具体的な数値を見ると、ライフコーポレーション(大阪府)が対前年同期比6.5%増、マルエツ(東京都)が同7.0%増、カスミ(茨城県)が同2.1%増。なかでもヤオコーは同8.5%増と需要を大きく獲得している。
なぜ、ヤオコーの総菜は支持を得ているのか。2月14日に開業した「ヤオコー東大和清原店」(東京都東大和市)を取材すると、現在の消費ニーズを取り込むべく、さまざまな施策に取り組んでいた。
コンビニよりも
割安感を与える
まず販売を強化しているのが、現在、好調なカテゴリーである弁当や丼、おにぎりなどの米飯類だ。総菜売場の中央平台では、弁当や丼に多くの売場スペースを割き、訴求している。
商品設計の際に意識しているのが、コンビニの存在だ。昨今、コンビニも原料価格の高騰を受け、弁当類の価格が上昇している。そうしたなか「コンビニよりも割安で、かつ質も味もよい商品を提供することで、着実に支持が伸びている」(デリカ事業部長の奈雲春樹氏)という。
店舗に割卵機を導入
卵を強みに商品拡充
質や味の面では、店内調理の出来たて商品の提供で差別化を図る。おにぎりも店内手作りの商品の品揃えを充実。同カテゴリーの売上は前年実績130%で推移しているという。「肉手巻むすび&俵えび天むす」(498円:税抜、以下同)など、食事が完結するようなボリュームある商品も提供し、人気商品となっている。
質や味の向上させるために設備投資も行う。ヤオコーは以前より店内に割卵機を導入し、液卵ではなく生卵を使って味を追求した商品で差別化を図る。これを強みに、最近では総菜やベーカリーで、卵を使った商品のラインアップを広げている。たとえば、さまざまな弁当のおかずの1品に卵焼きを入れるほか、たまごフィリングを挟んだサンドイッチやドッグ商品を開発し、訴求している。
若い世代が好む
素材を使ったメニューを
近年ヤオコーが注力してきたのが、若い世代への対応だ。とくに20代~40代の「ヤングファミリー」層を取り込むべく、総菜部門でもさまざまな工夫が見られる。
まず若い世代に好まれる素材を使った商品を拡充している。東大和清原店では、ローストビーフを使った弁当を大きくコーナー化するほか、寿司売場ではフレッシュサーモンを使った商品を複数、開発し「フレッシュサーモン」コーナーとして展開していた。
1品単価を抑えて
複数商品の購入を促す
若い世代を取り込む施策として、新しいメニューの開発を進める一方で購入頻度の高い定番メニューの提案にも重点を置いている。具体的には、ファミリー層が買いやすい規格、価格で販売する。たとえば、とんかつを3枚購入すれば20%OFFとするなど、ファミリーにとって適した量を、お得感を持って買ってもらえるような提案をすることで購入を促しているという。
量目対応によって売上を伸ばす工夫も行っている。
ヤオコーは最近、既存商品の量目を少量にした「ちょっとがイイネ!」商品の開発を推進。また、自社工場で製造することで1品単価を押さえたパスタや総菜を充実させている。これにより、複数商品を組み合わせて購入することを促し売上アップを図る。
このようにヤオコーの総菜が絶好調である背景には、さまざまな企業努力によって需要を掴んでいる事実がある。同社を好例に、業界全体で高まる総菜需要を取り込んでいきたい。