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コロナ時代のスーパーマーケット「イトーヨーカドー新田店」の新しい取り組みとは

イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)は10月30日、埼玉県草加市に「イトーヨーカドー新田店」をオープンした。2019年2月に閉店した旧店を建て替え、総合スーパー(GMS)からスーパーマーケット(SM)へ転換。イトーヨーカ堂にとって約1年ぶりの新規出店となった同店の売場づくりをレポートとする。

10月30日にオープンしたイトーヨーカドー新田店の店舗外観。

売場面積は旧店舗の約半分 駅近くの好立地でSMとして再スタート

 新田店は、東武スカイツリーライン「新田駅」から徒歩約5分の好立地にあり、幹線道路である県道328号線から一本入った、生活道路に面している。売場面積は、建て替え前の約半分にあたる2221㎡で、食品6710SKU、日用品2500SKUを取り扱う。
 GMSとして10km圏内を商圏としていた旧店とは異なり、1km圏内、約1万6000世帯/3万4000人を商圏に設定している。周辺地域の世帯別人員数では1~2人世帯が65%を占め、世代別人口構成比は40代が最も多く次いで60代となっている。また、近隣の競合店には、「ビッグ・エー新田店」「東武ストア新田店」などがある。

建て替えオープンで取り入れた新施策

 新田店では従来の店舗にはなかった施策を複数取り入れている。コロナ時代のSMとして、イトーヨーカドー初の取り組みとなる「サニテーションカウンター」を導入、出入口の風除室に手洗い場、非接触型体温計などを設置した。壁面のモニターでは、あらかじめ店舗で撮影したバックヤードでの消毒作業の様子などを映像で流し、安全安心をアピールする。
このほか、建て替えを機にインストアベーカリーや、「アウトレットコーナー」を新たに導入。このうちアウトレットコーナーは、廃盤品などを低価格で提供するもので、基本的に現品のみの売り切り方式で回転を良くし、来店のたびに楽しみや発見、ワクワク感のある売場演出につなげている。
 青果売場では高まる健康意識に対応するため、新たに有機野菜コーナーを設けた。また、地域密着の取り組みとして、草加市内の生産者8名から仕入れた地場野菜をコーナー化し、新鮮な商品を生産者の顔が見える形で販売する。
 鮮魚売場では、通常デリカコーナーで販売する魚総菜を鮮魚売場内に配置。「魚は魚売場でまとめて選びたいという顧客の心理に合わせた」と川崎久美子店長は話す。精肉売場では牛肉に注力。33尺の牛肉専門売場を設け、専門店で取り扱っているような希少部位や塊肉をメニュー提案も行いつつ販売する。ハレの日需要を取り込む狙いだが、一方で普段の料理を楽にする味付け肉や、炒めるだけ・焼くだけのミールキットも品ぞろえを充実させた。

レジ前の立ち寄りやすい場所に設置されたアウトレットコーナー。イトーヨーカドー初の取り組みとなる。

GMS大型店と同等の冷凍食品売場を導入

 また、新田店ではコロナ禍で需要の高まる冷凍食品(冷食)の販売に注力している。デリカコーナーに隣接して、イトーヨーカドーの大型店と同程度の売場面積を確保し冷食コーナーを設置。種類ごとに細かく分類して陳列し、目的のものを見つけ出しやすいレイアウトになっているほか、軽食や、昼食として購入されることの多い麺類、温めるだけのワンプレート商品などが豊富に取り揃えられている。
 さらに、青果・鮮魚・精肉売場にもそれぞれ冷凍ケースを配置した。これによって、たとえば青果を選ぶ際、用途に応じて冷凍野菜も比較し購入することが可能になる。購買行動に合わせた配置によって商品の選択肢を増やし、より便利で顧客心理にフィットしたSMをめざす。

見渡しやすく取り出しやすいケースに、豊富なラインアップの冷凍食品が取り揃えられている。

地域密着型SMをめざして

 今回の建て替えに際し、周辺住民への事前調査を行ったところ、「ついでに買える日用品や、ちょっとした肌着やキッチン用品なども置いてほしい」といった要望が寄せられた。食品と日用品を一緒に取り扱う店舗が周辺にはなく、GMSからSMに転換されることへの不安もあったという。同社では要望のあった商品については、オープン時点で可能な限りを取り揃えた。ワンストップショッピングの利便性を訴求することで、地域住民からの支持を集める狙いだ。
 地域の特性に合わせた施策としてはほかに、メーン顧客層のひとつであるシニア層の「いいものをちょっとだけ食べたい」というニーズに合わせ、3貫入りの寿司や少量パックの刺身などを販売する。これはシニア層のニーズを満たすだけでなく、同じくメーン顧客層である仕事帰りの顧客の“プラス一品”の購入を後押しし、客単価を上げる施策でもある。
 また地域柄、自転車や徒歩での来店が多いことから、導線を増やすために住宅街に面した建物裏手に入口を新しく設けた。裏手入口はシニア層がアクセスしやすく、入ってすぐにシニアからの需要が高い地場野菜コーナーを配置した。反対に駅方面の入口には、入ってすぐにデリカコーナーを設け、駅から流れてくる仕事帰りの顧客が素早く総菜を購入できるようにした。

3貫入りの“ちょい足し握り”。常時20種類以上が店頭に並ぶ。

 コロナ禍でのオープンになったことや、GMSからSMへの転換など、新田店の開店については「考えなければならないこと、配慮することが多かった」と川崎久美子店長。「旧店同様、新田という街の中でシンボルになれるよう、住民の声を聴きながら生活に寄り添ったSMを作っていきたい」とも語った。