イタリアンレストランチェーンを展開する外食大手のサイゼリヤ(埼玉県/堀埜一成社長)が、ファストフード型の新業態「伊麺処(パスタドコ)」を開発した。2月26日、東京・浅草に1号店を開業、当面は主に東京都心部で出店を進め、将来的には首都圏を中心に500店舗体制を築く計画だ。サイゼリヤの新たなチャレンジは実を結ぶか――。
ファストフード店の仕組みを取り入れた小型のパスタ専門店
「伊麺処」の1号店は東京・浅草、国内外から多くの観光客が訪れる「浅草寺」「雷門」からほど近い商店街の一角にオープンした。席数は25席と既存のサイゼリヤの店舗と比べるとコンパクトなサイズである。セルフサービスを取り入れており、お客はまずレジカウンターで商品を注文して支払いを済ませる流れになっている。
主力メニューとなるのがパスタで、「タラコソース」(500円、以下税込)、「ローストビーフ&ミートソース」(800円)、「トマトソース」「ミートソース」「カルボナーラ」「ボンゴレ」「ジェノベーゼ」(各650円)の計7種類を提供。今後は季節メニューも投入する予定だという。
このほか450円~のタパス(小皿料理)もラインアップし、「サラミ&プロジュート」「ローストビーフ」「グリーンサラダ」などを販売。「グラスワイン」(400円)、「ビール」(450円)などアルコール類のほか、コーヒーや紅茶などソフトドリンクも用意する。一方スイーツは「抹茶ティラミス」(400円)や「バニラアイス白玉あずき」(550円)など和のテイストを打ち出したメニューを揃えた。いずれのメニューもテイクアウトが可能で、店外には持ち帰り専用のカウンターも備えている。
注文から90秒以内に商品を提供
伊麺処のウリは、注文を受けてから90秒以内で商品を提供するというスピーディなサービスにある。実はサイゼリヤは同様にセルフサービス形式のスパゲティ専門店「スパゲッティ マリアーノ」を都内および横浜市内で計5店舗展開しており、そこで蓄積した運営ノウハウをベースに伊麺処を開発した。
客単価は650~700円を想定しており、この金額は主力フォーマット「サイゼリヤ」の客単価とほぼ同じ。しかし、サイゼリヤで499円の「ボンゴレ」が伊麺処では650円とやや高めの設定になっている。「サイゼリヤ」は商品単価を抑え、注文点数を増やすことで客単価を上げる戦略をとっているが、ファストフード業態である伊麺処では注文点数を増やすことは難しいと判断しての値付けだろう。そのぶん、パスタのソースやトッピングに高質の食材を用いるなどメニューに付加価値をつけている。
33㎡の超小型店の開発も検討 首都圏中心に500店体制めざす
店舗面積については今後、100~130㎡を標準とする考えだが、「将来的には33㎡程度の小型店の開発も検討していく」(サイゼリヤの業態開発部川田文洋課長)という。従来のサイゼリヤのフォーマットでは出店が難しかった立地にも積極的に展開することで、出店の幅を広げたいねらいがある。
また、運営人員についても常時3~5人程度を標準とするが、今後は2人体制でも運営できるようローコストオペレーションの構築を進めていく計画だ。
サイゼリヤは今後、伊麺処を年間20店舗のペースで出店していく方針。都心部や鉄道沿線の繁華街、住宅地に近い駅前、さらにオフィスビル内やショッピングセンターなど幅広い立地を想定している。将来的には首都圏を中心に500店体制を築き、既存の「サイゼリヤ」業態に次ぐ事業の柱に成長させていきたい考えだ。