セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)が12月19日、省力化に向けたさまざまな実験を行うフラッグシップ店舗としてリニューアルオープンした「セブン-イレブン麹町駅前店」をメディアに公開した。「攻め」と「守り」の実験を行うという同店ではどのような店づくりをしているのか。
オフィス立地の繁盛店をリニューアル
セブン-イレブンが今回オープンした麹町駅前店は、東京メトロ有楽町線「麹町」から徒歩1分のオフィス街に立地する。店舗面積は約260㎡。「セブン-イレブン」の標準が210㎡であることを踏まえると大型店の位置付けだが、アイテム数は約2900と標準並みとしている。フランチャイズではなく直営の店舗で、同社広報によれば、オフィス立地のピークとされるランチタイムを過ぎても客足が途絶えない繁盛店だったという。
セブン-イレブンは、店舗の作業時間・作業量の削減を目的とした社内組織「省人化プロジェクト」を2019年3月に発足させており、同年7月には「省人化テスト店舗」として「セブン-イレブン町田玉川学園5丁目店」(東京都町田市)を改装している。
今回の麹町駅前店もこの省人化プロジェクトの一環で、同プロジェクトにおけるフラッグシップ店舗の位置付けとなる。セブン-イレブンとしては、大型繁盛店で省人化実験の成果をあげ、既存店への水平展開にはずみをつけたいところだ。
「『守り』だけでなく、『攻め』の実験も行っている」
麹町駅前店の取り組みについて、セブン-イレブンの広報担当者はそのように説明する。ここで言う「守り」とは、かねてより取り組んでいる省人化を実現する設備のことだ。セルフレジやセルフ式のFF(ファストフード)ケースといったさまざまな新設備を実験的に導入し、効果を検証する。
その一方で麹町駅前店では、既存店には見られない実験的な商品を導入している。同店初導入という冷凍スムージーやワイン専門店の「エノテカ」コーナーなどはその一例だ。これら新商品による「攻め」の施策で、省力化だけでなく顧客体験の向上も図っていく、というのが麹町駅前店の実験の基本思想というわけだ。
セブン-イレブン初導入!電子値札
写真とともに売場見ていこう。改装前は有人レジ6台体制だったという麹町駅前店。改装後は有人レジ4台のほか、セルフレジ5台を新たに導入した。セルフレジのうち3台はキャッシュレス専用レジとなっており、残り2台は現金の利用が可能。なお、年齢確認が必要な酒類やタバコはセルフレジで購入することができないため、有人レジで対応する。
ほかの実験店でも採用しているタバコ販売専用のタブレットも新たに導入した。タブレットで商品を選択すれば、棚にあるランプが光る仕組みだ。タブレット下に設置しているスキャナーで、持っているタバコのパッケージにあるバーコードを読み取ることでも注文できる。「店舗規模にもよるが、セブン-イレブンでは200銘柄以上のタバコを販売している。タブレットがあれば、熟練度の低いスタッフや外国人従業員でもスムーズにタバコを販売することができるようになる」と同社広報は説明する。
麹町駅前店で初めて採用したのが電子値札だ。2000~2500枚ほどを導入し、全商品の7~8割をカバーする。導入コストは非公表で、ダイナミックプライシングなどの取り組みは当面行わない方針だという。「セブン-イレブンでは、週に約100アイテム、年間で全商品の7割が入れ替わるので、そのぶんの値札替え作業が発生している。作業量・作業時間の削減効果を見ながら、この先の展開を決めていきたい」(同社広報)。
専用機を導入して提供するオリジナルスムージー
ここからは「攻め」の取り組みを見ていこう。前述の通り、麹町駅前店では、既存店で見られない商品を売場の随所に差し込んでいる。その代表例が冷凍ケースで販売する「SEVENCAFE ケールグリーンスムージー」(税込250円)だ。既存店でお馴染みのコーヒーマシンの横に専用のマシンを導入し、出来たてのスムージーを提供する。
そのほか、ワイン専門店「エノテカ」をコーナー展開するほか、飲料冷凍ケースで「モエ・エ・シャンドン」など高級シャンパンを品揃えしているのも同店ならではの取り組みだ。
商品以外では、ゴンドラの上段のスペースを使い、木製フォークやエコバッグといった、全社的に力を入れる「SDGs(持続可能な開発目標)」をキーワードとした商品を販売する。旧来のコンビニエンスストアではあまり見られない、スペースを使った陳列でお客の目に止まりやすいようにしている。
24時間営業問題、7pay終了に続き、12月には残業代未払い問題が発覚するなど強い逆風にさらされている同社。批判が集まる中でも、競争力の源となる現場では、従業員の負担軽減、そして顧客満足度向上のための試行錯誤が続いている。