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業績絶好調のサミットが展開する小型店の差別化戦略とは?

東京などの都心部では、地価が高い、十分なスペースの土地を見つけるのが難しいなどの理由から、小型食品スーパー(SM)の出店が増加している。しかし、小型店は売場面積が限られるため品揃えを絞り込まざるを得ず、またプロモーションスペースが極端に減ってしまうことから、標準規模の店に比べると競争力の点で劣ることが多い。193月期決算で営業収益・営業利益ともに過去最高を記録したサミット(東京都/竹野浩樹社長)も近年、小型店の開発を進めているが、どのようにして競争力を確保しているのだろうか。「サミットストア本天沼店」(以下、本天沼店)での取り組みを基に、サミットの小型店戦略を紐解いていきたい。

サミットストア本天沼店

新しい売場レイアウトと内装にチャレンジ!

 本天沼店は201810月、サミットの本部所在地の杉並区で9店目の店舗としてオープンした。売場面積は1000m2弱と小ぶりだが、これまでの既存店とは異なる、新しい売場レイアウトや内装に挑戦した店舗だ。

 売場では、出入口そばにインストアベーカリー、総菜売場を設け、その隣に生鮮3部門の売場を集中配置した新レイアウトを導入。また、内装は欧州の小売店を参考に、マルシェ(市場)のような売場づくりをめざした。天井は高くとり、サミット初のスケルトン方式を採用。什器も木目調のものを多く使用した。さらに、主通路をつくらず、限られたスペースの中で可能な限り多くの商品を売場に並べることで、マルシェのような賑やかさを演出した。「近隣の自社店舗や競合店と差別化を図るため、サミットの認知度が高い杉並区で新しい売場づくりにチャレンジした」(星野圭司店長)。

本天沼店で導入した新レイアウト。出入口そばにインストアベーカリーと総菜、生鮮3部門の売場を集中配置した。

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品揃えにはお客の声を反映させる

子供向けのイベントを開催
「案内係」も活躍

 星野店長は、近隣の競合店との差別化のため、本天沼店を「来たら楽しい店」にすることに注力しているという。そのための取り組みの1つが、店内でのイベントの開催だ。たとえば、従業員とハイタッチをしてシールを集める「ハイタッチラリー」やじゃんけん大会など、とくに子供が参加しやすいイベントを積極的に実施している。また、イベントの告知は店内での掲示のほか、ツイッターも活用。じゃんけん大会では最初に出す手を事前に発表するなど、投稿を見たお客が得をするような仕組みも取り入れた。

 本天沼店では、これらのイベントは「案内係」が中心となって行う。案内係とは、サミットが約4年前から店舗に配置している接客専任の従業員のことだ。普段の業務は、売場の案内から店に対する要望の聞き取り、買物のサポート、来店客との“日常会話”まで多岐に渡る。星野店長は「(本天沼店での)案内係の存在は非常に大きい。案内係と話すために来店するファンのお客さまもいる。とくにこの店舗ではイベントを開催するときの中心になるため、(お客さまからの)認知度は高い」と案内係の重要性を語った。

店内イベントの告知ポスター

品揃えでは、本当に必要なものは何かを見極めることが重要

 一方、品揃えの面では、本天沼店ではお客の声に耳を傾け、本当に必要な商品だけを揃えるようにしている。

 たとえば、オープン時はSKU数が7000弱だったが、「欲しい商品がない」という意見がお客から多く寄せられ、とくに日用品や冷凍食品の少なさを指摘する声が多かった。そのため、開店から約2カ月後に顧客アンケートを実施、その結果を基に品揃えの見直しを図った。棚数を増やしたりより大きな冷蔵ケースを導入したりすることによって、店全体で100SKU以上の商品を増やしたという。

 またオープン時、文具売場は棚2列ほどのスペースだったが、現在では売場を拡大、レジ前に大きくコーナー展開している。その理由は店舗周辺に小中学校が合計で7校あり、ノートやペンなどの需要が高かったためだ。「小型店は品揃えに限りがあるため、商品の絞り込みは必要不可欠だ。ただし、絞り込んだ商品が本当に商圏内の住民にマッチングしているのかを見極めることが重要になる」(星野店長)。

 このように本天沼店には、小型店ながら他社と差別化を図り、近隣住民を取り込むための施策が多く盛り込まれている。マルシェのような内装や積極的なイベント開催、お客の声を反映させた品揃えなど、サミットの小型店戦略に学ぶ点は多い。

 

『ダイヤモンド・チェーンストア』8月1日・15日号の特集内容は「サミットのすべて 『お客が集まる』組織と売場」。本天沼店の店舗レポートのほか、竹野浩樹社長のインタビューや商品開発、生産性向上のための戦略など盛りだくさんの内容となっています。お楽しみに!