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繁盛する食品スーパー(SM)の戦略~フレッシュグッズの仕入・価格戦略

“仕入戦略・価格戦略”で大手チェーンに対抗する 神奈川のフレッシュグッズ

大手チェーンによる出店ラッシュにより、中小食品スーパー(SM)は苦戦を強いられているところが多い。そんななか、5店舗のみの展開で地元の顧客支持を集めているSMがある。繁盛する秘訣は何か──。

フレッシュグッズは神奈川県横浜市、川崎市に5店舗展開している

価格戦略で売上高を伸ばし繁盛するフレッシュグッズ

 「神奈川県川崎市や横浜市に5店舗のみを展開しているが、いつもお客がたくさん入っているSMがある。(川崎市内の)中小の流通業の景況感は必ずしもよいとはいえないが、同社は客数も増えており、繁盛している」。

 このような情報を、川崎信用金庫(神奈川県/草壁悟朗理事長)稲田堤支店の営業担当者から得て、その企業を取材した。

 その企業とは、神奈川県川崎市、横浜市で青果をメーンに日配品、加工食品を販売するSMを5店舗展開しているフレッシュグッズ(神奈川県/藏重拓社長)だ。

フレッシュグッズの藏重拓社長

 大手チェーンがナショナルブランド商品を中心に価格志向を強めるなか、同社は「大手チェーンに負けない価格戦略」で売上高を伸ばしている。藏重社長は「青果は旬の食材を目玉商品に据え、価格と品質でどこにも負けないようにしている」と語る。

 フレッシュグッズは横浜市金沢区にあるショッピングセンター、ビアレヨコハマ内の並木店と稲田堤店(川崎市多摩区)、平間店(川崎市中原区)、よみうりランド店(川崎市多摩区)、中野島店(同、文化堂の青果テナント)の5店舗を展開している。それぞれ売場面積は40~60坪ほどの小型店だ。

 藏重社長はもともと同社の従業員で、今から3年前の2015年に、前社長から経営を引き継ぐ格好で社長に就任した。まだ35歳と若き経営者だ。社長になってから2店体制だった同社を3店増やし5店体制にした。

大手食品スーパー(SM)のチラシを徹底調査した価格設定

取材時のいちばんの目玉商品は大根。市場で大量に仕入れることで、1本58円(税抜)という低価格で販売することができる

 取材したビアレヨコハマの並木店は平日の日中でも結構な来店者数だった。青果の価格をみると、一般的なSMに比べ、1~2割安い。

 藏重社長は「(安いからといって)安かろう、悪かろうではいけない。品質にもこだわる」と話す。野菜や果物は市場で仕入れたての鮮度のよいものを揃えている。

 ビアレヨコハマは通路でつながるかたちで隣には「イオン金沢シーサイド店」がある。最大の競合店で、藏重社長は「イオンの青果物の価格には負けないようにしている」と言う。

 同社は並木店以外の店舗でも大手SMなど「競合店の価格を徹底的に調査し、値付けしている」と地域に密着した価格調査体制で、勝ち残りを図っている。ただ、青果を低価格販売しても「しっかり青果で利益を出している」と付け加える。

 バイイングパワーではイオンを始め、大手チェーンのほうが圧倒的に有利と思われるが、わずか5店舗のフレッシュグッズにどんな秘策があるだろうか。藏重社長は「仕入れと価格対応の柔軟性」がいちばんの武器であると強調する。同社では大田、川崎、川崎南部、世田谷の4つの市場から青果を仕入れている。

 一般的に大手チェーンは本部の意向が働き、地域単位での仕入れとなる。チラシの目玉商品も、数日前からあらかじめ決めた商品のままで広告を打っている。つまりチラシを配布している以上、価格は動かせない。

旬の野菜や果物を売場の目立つ位置で販売している

そこが同社のねらいめだ。大手の目玉商品などの下をくぐる価格設定で勝負をかけるのである。

SMによっては同社が出した価格よりもさらに下回る価格を設定してくる好戦的なところもあるというが、大手は価格設定に制限が多い。目玉商品以外でも、そうした競合の特性をふまえた価格にすれば、節約志向を強める消費者から支持されるというわけだ。

秋から冬にかけては、野菜を使ったメニューとして「ついで買い」しやすい鍋つゆがよく売れるという