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「#ワークマン女子」吉祥寺店で得た“新たな客層”と百貨店出店の本当の狙いとは

ワークマン(群馬県/小濱英之社長)は、1014日に「#ワークマン女子(以下、ワークマン女子)」東急百貨店吉祥寺店をオープンした。百貨店への出店は初の試みとなるが、オープン後3日間の合計売上は歴代2位で、予算比181.7%を達成。非常に好調な出足で、併設の靴専門店「ワークマンシューズ」の売上も大きいという。同店で行われた新しい取り組みに加え、ワークマンの百貨店出店に込められた戦略的な狙いを解説したい。

初日のレジ列は60分待ちの状態が5時間も続く

#ワークマン女子 東急百貨店吉祥寺店

 オープン当日は、開店から15分ほどで店内100人超に達し、それ以降の3日間は入店整理券を発行することに。また、レジ会計の待ち列60分待ちの状態が約5時間も続いたという。売れ行きは好調で、オープン後3日間の合計売上は、今年6月にオープンしたワークマン女子・池袋サンシャインシティアルパ店に次ぐ数字となった。

 見事な結果を残した吉祥寺店だが、百貨店への出店はワークマンとしては初となる。出店の理由として、「ワークマンのブランド価値をもう一つ上げていきたい」と狙いを話すのは、ワークマン新業態事業部 部長の島健太郎氏だ。

 「吉祥寺は人気の住宅街。20代から60代までのお客さまにご来店いただくことで、幅広い世代にワークマンを認知してもらいたい。また、吉祥寺は地価も高く、百貨店には年配の富裕層のお客さまも多くご来店される。若年層だけではなく、そうした方々もいらっしゃるお店として当社のブランド価値のさらなる上昇を期待している」(島氏)

 館側の東急百貨店としても、年配層だけではなく若年層にも来店してもらいたいという思惑があり、ワークマン女子に集客を期待してこの度の出店が実現した。

レディースとシューズが好調

併設されたワークマンシューズ売場

 ワークマン女子とワークマンシューズを組み合わせた出店は、大阪・難波店、東京・池袋店に次いで3店舗目となる。

 「先の2店の前例から、100坪以上の広い売場にワークマン女子とワークマンシューズを同時に出店することで、女性も男性も多くご来店いただけることがわかった」(島氏)

 実際に、メンズやキッズ用品、キャンプ用品も店頭に並ぶなか、人気アイテムはやはりレディースとシューズに集中した。

 オープン後3日間の売上1位は、391足販売を達成したアウトドアテイストの「トレッドモックシューズ(1,500円)」、2位は「女性ダイヤフリースカーディガン(1,900円)」、3位は「匠の手ゴム背抜き手袋(99円)」、4位は「女性ブロックフリースプルオーバー(1,280円)」、5位はワークマンシューズ限定アイテム「ムートン風ショートブーツ(1,900円)」だった。

 シューズの売上比率は全商品の約25%で、約12%の通常店舗と比べると倍以上。既存商品でも改めて脚光を浴びせることによって売上が伸びた商品もあった。

 「おかげさまで、一度の買い物で靴を2足買っていただく方も多い」(同)

女性が入りやすいよう売場構成を工夫

レディス売場

 吉祥寺店の商品構成のポイントは、レディスの充実だ。去年10月にオープンした錦糸町店のレディースは59アイテムだったが、吉祥寺店では84アイテムに増大(124%)し、全店舗中トップクラスの商品数とした。

 「レディスの割合は全商品の32%を占め、ユニセックス商品も多いことから女性にとっては60%以上の商品が購入対象になっている」(同)

 店舗内の売場構成は、女性の入りやすさと動線を意識した。エスカレーターを上ってきた女性の目に留まりやすいよう、入口付近にレディスを配置。店内を奥に進むと、メンズ、キッズ用品、キャンプ用品、ワークマンシューズと続く。

 「まずは女性を呼び込み、店内を歩いているうちに男性用アイテムも見つけていただけるような配置と動線にしている。百貨店自体ご夫婦で訪れる方が多く、平日の入店率は女性が高いが、休日は半々の比率になる」(同)

生産ラインを増やし、ロードサイド出店へ

新業態事業部 部長の島健太郎氏

 オープン直後から高売上を記録した吉祥寺店だが、社全体では商品の生産が追いついていない状態だという。供給を間に合わせるため、工場のライン増幅を画策中だ。

 「他社商品を作っている既存の工場に対して、当社の商品を1ライン増やすのではなく、工場全体で自社商品を作ってもらうよう提案を投げかけている。工場を集約することで生産キャパが一気に上がるため、正月明けから自社商品のみの新しい工場で生産ラインを増やす予定だ」(島氏)

 課題は生産量の確保だけではなく、商品提案力にもあるという。“顧客の日常生活の課題解決”にアプローチできていない点だ。

 「たとえば、撥水加工のボトムスだったら子どもが何かをこぼしても親は怒らないで済むなど、『こんなシーンで着ていただくと、こんなお悩みが解決します』といった課題解決力を持った商品の特徴や魅力を、しっかりとお客さまに伝えていきたい」(同氏)

 そうした課題はあれど、百貨店への初出店、目下の予算達成に成功したワークマン。ブランド価値向上へ一歩踏み出したといったところだが、今後のさらなる展望を島氏は語る。

 「ロードサイドの出店も増やしていきたい。『あのワークマンって池袋や吉祥寺にもあるお店なんだ』とお客さまに思ってもらえたら、ロードサイドの店舗でも近隣住民の方々により足を運んでもらいやすくなるのではないかと考えている」(同氏)