トライアルカンパニー(福岡県)は8月24日、福島県郡山市に「メガセンタートライアル郡山八山田(やつやまだ)店」(以下、郡山八山田店)を開業した。売場面積は約2000坪で、同社の東北エリアの店舗としては最大規模。近年、商品政策(MD)面でめざましい進化を遂げている生鮮・総菜のほか、日用雑貨、家電、医薬品など非食品もカテゴリーごとに深掘りを進め、広域からの集客を図っている。オープン時の売場の様子を速報する。(文中の価格はすべて税込)
東北最大級&初のスマートストア
郡山八山田店は、市内中心部から北へ約3km離れた幹線道路沿いに、東北最大級を誇る売場面積約2000坪の「メガセンター」業態としてオープンした。トライアルは郡山市内および周辺エリアですでに数店舗を展開していたが、その多くが「バラエティストア」業態などの小型店であった。
満を持しての「メガセンター」での出店ということもあり、広域でのチラシ配布や地元TV局へのCM出稿など積極的なPR活動を展開。オープン日は早朝から開店を待つ多くのお客が列をなし、開店時間直前にはその数は数百人にまで膨張。周辺の道路では数kmにわたる”トライアル渋滞”が発生するなど、地元住民の期待度の高さをうかがわせる様子が見られた。
また、郡山八山田店ではセルフレジ機能付きの買物カート「スマートショッピングカート」や、商品やお客の買物行動を視覚的にとらえAIで分析する「リテールAIカメラ」を東北地方の店舗で初めて導入。利便性の高い新しい購買体験が提供される「スマートストア」としても機能している。
生鮮・総菜では”ローカライズ”の取り組みも
店内に入りまず食品売場を見ていくと、とくに多くのお客で賑わっていたのが生鮮・総菜だ。買物客の会話に耳を傾けると、「安さ」「ボリューム」、そしてとくに精肉では「見た目の良さ(品質)」を評価する声が聞かれた。また、全体的に地場産品や地域の味を訴求するMDも展開されているのが印象的だった。
まず青果売場は旬の野菜や果物が中央部の平台にぎっしりと並べられ、迫力のある展開。地元福島県産の桃や梨なども目玉商品として展開されている。また売場左側は箱売りのコーナーとなっており、同じく桃や梨のほか、トマト、たまねぎ、さつまいもなどが販売されている。
精肉でも、やはり地元の「福島牛」を幟(のぼり)を売場随所に立てかけて強く訴求。ステーキ肉や焼き肉用のパックなどを販売している。
総菜はトライアル名物の299円の「ロースかつ重」や、自社製の「手包みおはぎ」(3個300円)、「たっぷり玉子サンド」(199円)などボリューム感&値ごろ感たっぷりの魅力的な商品の数々が並ぶ。
それらに加えて目を引いたのが、「ソースかつ丼(柳津風)」(399円)。福島県会津地方のご当地メニュー「柳津風ソースかつ丼」を商品化したもので、卵焼きの上に揚げたてのカツをのせる”柳津風”を踏襲しつつ、味付けはソースではなく醤油ベースの甘辛い味付けとなっている。トライアルの総菜でこうした「地域商品」の展開はそれほど例がないが、「会津の知られざる味」を商品化した点に、郡山八山田店の出店にかけるトライアルの本気度が感じられる。
専門店顔負け!? アウトドアコーナーの驚きの品揃え
約2000坪という広大な売場の中では当然、非食品の品揃えも充実している。なかでも目を見張ったのがアウトドアコーナーだ。
売場全体では、ビギナーから上級者まで支持の高いアメリカのキャンプ用品メーカー「コールマン(Coleman)」の商品を多く展開。テント、タープ、ランタン、寝袋、さらにはテントを固定する際に使うペグやガイロープといった小物アイテムまで揃っている。昨今のアウトドアブームを取り込もうと関連商品の販売を強化しているホームセンターはおろか、キャンプ用品専門店レベルの品揃えである。
コールマンブランドのほかにも、アウトドアチェアや収納用の折り畳みラック、紙皿や炭・薪、BBQ料理用のスパイス、果ては天体望遠鏡まで、もはや”何でもあり”の状態。見ているだけでも楽しめる、専門性の高い売場となっている。
食品だけでなく、非食品においても「あらゆるカテゴリーを網羅する」うえで、「各カテゴリーの専門性を追求する」というトライアルの戦略が、アウトドアコーナーからは垣間見えた。
トライアルの”東北深耕”で競争環境は激変の可能性も
さて、郡山市は東北地方では仙台市に次ぐ規模の都市圏を形成しており、ここにトライアルが「メガセンター」という広域集客型の大型フォーマットを出店したことの意味は非常に大きいと言える。郡山という東北では数少ない、一定のマーケットボリュームを持つ市場を足掛かりに、今後東北エリアでの存在感を増していく可能性は否定できない。
トライアルの広報担当者は「九州では数千人程度の商圏でスーパーセンターを出店しても成立するモデルができている。(人口減少が進む)東北エリアでも十分に戦えると考えており、チャンスがあればさらなる出店も検討していきたい」と自信をのぞかせる。
その一方、東北ローカルの食品スーパーは”トライアル対策”を迫られること必至。とくに同じ郡山に本拠を置き南東北を主戦場とするヨークベニマル(福島県)や、ユニバース(青森県)、ベルジョイス(岩手県)などを擁するアークス(北海道)グループの出方が気になるところだ。
いずれにしても、郡山八山田店の出店は、トライアルの本格的な”東北市場深耕”の嚆矢であることは確かだ。今後東北の小売マーケットがどのような変容を見せていくのか注目される。
※郡山八山田店の売場づくり、出店戦略の詳細は雑誌「ダイヤモンド・チェーンストア」9月15日号で掲載予定!ぜひご購読ください。