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東武ストアが駅前小型SMの新業態「フレッシュ&クイック」をオープン!

東武ストア(東京都/土金信彦社長)は7月22日、東武東上線「朝霞台」駅南口駅前に中食・即食を強化した駅前小型スーパーマーケット(SM)の新業態「東武ストア フレッシュ&クイック朝霞台店」(埼玉県朝霞市:以下、朝霞台店)をオープンした。消費者の購買行動の変化に対応し、総菜と日配食品、冷凍食品に過半のスペースを割いて、ドライグロサリーを大幅に縮小、生肉や生魚は扱わない。同社は駅前立地が多く、小型店も少なくない。同店をプロトタイプに、手応えを得られれば、ほかの駅前小型店にも波及させたい考えだ。

朝霞台駅南口から徒歩1分の高架下に立地。苦戦していたフエンテ朝霞台店を業態転換した

「フエンテ」を転換、新業態で売上を5割増に

 これまで営業していたJR武蔵野線高架下の高級ミニSM「東武ストア フエンテ朝霞台店」をリニューアルして業態転換、7月22日に開店した。売場面積は423㎡(128坪)。営業時間は7時~24時。

 「朝霞台」駅周辺は、「サミットストア朝霞台店」が2018年12月に改装、「オリンピック朝霞台店」もあるほか、近年はコンビニも多く出店する食品小売の激戦区。「同質化では今後生き残れない」(取締役常務執行役営業統括の友竹弘幸氏)として、ミニSMではなく、コンビニとも差別化した130~150坪の駅前小型店のプロトタイプ店舗となるのが、この朝霞台店だ。

 売上目標は年商5億5000万円。日販では150万円。旧店舗である「フエンテ」の売上実績は3億6000万円強だった。約5割増をめざす。

 売上の柱となるのは中食のカテゴリーだ。商圏内の単身世帯は39%、2人世帯は25.8%と全国平均に比べ約3%高い。また晩婚化が進み、ミレニアル世代や30代、40代の独身者は週末のみしか料理をしないなど、お客の生活スタイルや消費行動が変化していることから、中食によって生活者のニーズを囲い込み、若いZ世代やニューファミリー層を取り込もうというねらいだ。総菜と冷凍食品を含む日配食品で売上の52.2%を占める計画を立てている。

総菜は売場を6割拡大、冷凍食品は3.5倍に

 総アイテム数は3585SKU(最小在庫管理単位)。通路を広げ、ゴンドラの高さも抑え見通しをよくしたことで、品揃えは旧店に比べて約3割絞り込んでいる。総菜は257SKUと旧店に比べ17%増やし、床尺(売場に占める面積)は約6割拡大。日配食品は全体では834SKUと18%減ったものの、うち冷凍食品は181SKUと旧店から倍増、床尺は3.5倍に拡大した。

主力の総菜売場。ランチ需要を見込んだ弁当や山形JAてんどうからの直送米で炊き上げたおにぎり、和菓子などが並ぶ

 総菜は、レジ前中央に売場を構える。手づくりおにぎりや東立商事の中華総菜「香味楼」、岩手県産のブランド鶏「南部どり」を店内調理した唐揚げなどをラインナップ。おからとこんにゃくから作ったヘルシーフード「デーツ米」など店内製造の弁当を初めて導入した。そのほか、まい泉のヒレカツサンド、果実を使用したスイーツやフルーツサンドも新たに投入している。

総菜売場ではほかにも、中華総菜「香味楼」、「南部どり」を使ったチキンカツや唐揚げ、レバー煮などを展開
おからの残りかすとこんにゃくで作った低カロリー、低脂質、食物繊維が豊富な「デーツ米」を使った弁当を初導入

 また、旧店では扱っていなかったにぎり寿司や太巻きも店内製造で提供する。刺身は東信商事のアウトパック商品を活用するなど、店内・店外調理のバランスを取りながら人件費を抑制する。なお、寿司と刺身は水産部門の担当となる。

 インストア加工は40%(全店平均は65%)、アウトパックは60%(同35%)とアウト比率を高めている。

フエンテでは扱いがなかった寿司は即食食品では不可欠として店内製造で導入。握り寿司や太巻きなど9アイテムを展開

 冷凍食品では「スープストックトーキョー」「ピザレボ」を導入するなど、家庭でレンジやオーブントースターを使って、すぐに食べられる専門店の商品も拡充した。

冷凍食品の売場は3.5倍に拡大。加えて肉や魚の素材、さらに初めて刺し身も冷凍で提供する

加工食品売場は半減、生肉や生魚は扱わず

 一方、大幅に絞り込んだのがドライグロサリーだ。加工食品は1960SKUと35%減らし、床尺は半減させた。主に調味料や乾物を縮小したが、菓子、飲料、酒、カップ麺は強化カテゴリーと位置付け、縮小率に差をつける。

加工食品ではオーガニックや糖質コントロールといった若い世代やニューファミリーが関心を持つ商品を強化

 生鮮3品のうち、農産は果物とカットサラダを中心に展開。41SKUと3割減らし、床尺は半減させた。畜産では生肉を置かず19SKUを展開。アイテム数、床尺共に約2割縮小した。

フルーツとカットサラダは入り口近くで展開。生野菜はトマトや長ネギ、ナス、玉ネギなど最低限に抑えた

 水産でも生魚は扱わず、74SKUとアイテム数は14%減らしたが、前述のとおり、即食性の高い寿司と刺身を展開しているため、床尺は7%増えた。寿司はマグロ、サーモン、タイといった生ネタをサクで仕入れて、店内で調理する。

 刺身はアウトパック商品の他、同社で初めて冷凍刺身(シンガタ食材が製造)も展開。扱いをやめた肉と魚の素材は冷凍肉や冷凍魚といったフローズンで対応する。

 なお、「若いZ世代、ニューファミリー層の取り込みがまだ不十分。これらの客層に向けて、健康弁当をはじめ、オーガニック、低脂肪、タンパク質の商品を増やした」(取締役執行役員商品本部長の浦野浩治郎氏)という。

同店をプロトタイプにほかの駅前小型店に波及へ

 朝霞台店ではこのほか、店内商品で朝食や昼食を済ませられるイートインコーナーを設置。隣接してドリップ式コーヒーマシーンとオレンジの生絞りジュースの自動販売機2台を導入している。

 もうひとつの同店の大きな特徴が、チラシを打たないという点だ。ゴンドラエンドにおける単品訴求も維持する作業が発生するため、実施しない。従業員数は社員3人、パート・アルバイト19人(170時間換算)と旧店とほぼ変わらないが、オープニング期間が終われば、社員数を減らす可能性もあるという。

 一方で周辺のコンビニへの対抗策として朝7時~10時の3時間、「朝クイック」と称して、おにぎりやペットボトル飲料を78円(税抜き)に値引きするなどタイムセールを実施。朝コンビニで飲料や軽食を購入するお客を取り込みたい考えだ。

 東武ストアは19年5月に「フレッシュ&クイック」屋号で東武スカイツリーライン「曳舟」駅(東京都墨田区)内の商業施設「エキア曳舟」内に出店している。曳舟店は駅ナカで売場面積は78坪と同社最小規模。即食のみでなくSM機能も残し、生肉などの生鮮食品も扱ったが「限られた面積でニーズをつかむにはあれもこれもでは厳しい」(友竹取締役)として、今回の朝霞台店では「思い切って総菜に振り切った」(同)という。このため当初の曳舟店のコンセプトとは異なるとしている。なお曳舟店もその後、即食商品中心にシフトした。

「朝霞台店はあくまでも実験店。今後お客さまの声を聴きながら進化させていく。ここで成功すれば『梅島店』(東京都足立区)のような駅前の小型店にスピード早くアクションを起こしたい」と友竹取締役は話す。