2024年は記録的な猛暑に加え、秋口の高温の影響で消費が伸び、アイスクリーム市場は好調に推移した。25年も春先から高温の日が続くなど好調な出足で、アイスクリーム市場は堅調に推移している。
秋以降の気温上昇で、10月の金額PIは2ケタ増
気象庁によると24年は全国的に気温の高い状態が続き、年間平均気温は平年を1.48℃上回り、統計を開始した1898年以降、過去最高を記録した。
一般的に気温が25℃を超えるとアイスクリームの売上が急増する傾向があるため、近年の暑さの長期化は、アイスクリーム市場の安定的な需要を下支えしていると考えられる。
KSP-POSデータによると、アイスクリームの期間通算(2024年5月~25年4月)の金額PIは2万6864円で対前年同期比1.4%増、数量PIは165で同2.1%減。とくに猛暑の影響を受けた7月、8月は金額PIがいずれも4万円を超える高い需要となった。
さらに秋以降も気温の高い日が続き、東京都心では10月でも25℃を超える夏日を観測。これに伴い10月の金額PIは2万4799円で同12.3%増と2ケタ増となった。
総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)によると、24年のアイスクリームの年間支出金額は1万2295円で、5年連続して1万円を超える結果となった。15年と比較すると支出金額はこの10年間で41.1%増となり、アイスクリームが日常的な消費シーンで果たす役割が年々高まっていることがうかがえる。
満足感を追求したハード食感商品が台頭
近年のアイスクリーム市場におけるトレンドのひとつとして注目されるのが、バキバキ、ザクザクとしたハード食感の商品。歯ごたえのあるチョコチップを混ぜ込んだものや、硬めのチョコレートやクッキーを配合した新食感のアイスクリームが続々と登場している。
フタバ食品の「ダンディー」シリーズは、“バキザク食感”をコンセプトに開発されたモナカアイスで、まるでアイスとチョコ菓子を同時に楽しんでいるかのような食べごたえが特長。またロッテは5月に「バキバキクランキーアイスバー」を発売。分厚いチョコレートを包んだバニラアイスをモルトパフ入りのチョコレートでコーティングし、独自のバキバキとした食感を実現した。こうした独特の食感は、消費者に満足感を提供し、一定の支持を得ている。
一方で、インバウンド需要の拡大を背景に、抹茶フレーバーの商品も活性化している。明治は、京都宇治総本家「辻利」の抹茶を使用した「辻利お濃い抹茶チョコレート&クランチ」を4月にコンビニエンスストア限定で発売。抹茶の使用量を増やし、旨味や苦味、濃さを追求した仕様となっている。
また井村屋は季節限定商品「やわもちアイス抹茶氷」をリニューアル。宇治抹茶の配合率を高め、より抹茶の風味を際立たせた。
さらにロッテの「クーリッシュ」ブランドからは、約12年ぶりに抹茶フレーバー「クーリッシュ 香る抹茶ラテ」を発売。2種類の石臼挽き抹茶をオリジナルでブレンドし、まろやかでやさしい後味に仕上げた。
加えて、マンゴーや杏仁豆腐、ライチといったアジアンテイストのフレーバーも市場に登場し、さまざまなニーズに応えている。
近年ではアイスクリームは夏場に限らず、“冬アイス”としての需要も定着しつつあり、年間を通じて楽しめるスイーツとして市場の成長が続いている。