青森県、秋田県で事業展開する紅屋商事。豊富な品揃え、さらに味、品質を重視する商品政策により、強い支持を獲得している。
ただ近年、商勢圏では競争が激化。そんな中、看板の精肉部門ではブランド豚を主軸に据えた差別化策で成果を出している。その取り組みをレポートする。
近年、商勢圏各地では競争が激化
紅屋商事は、青森県弘前市に本部を構える流通企業。青森県、秋田県を商勢圏とし、食品スーパー(SM)11店舗、ドラッグストア12店舗を展開する。
メーン業態のSMは1店舗当たりの売上高が大きいのが特徴。本部と同じ敷地内にあるフラッグシップ店「カブセンター弘前店」は、年商60億円を誇る。続く「カブセンター西青森店」(青森市)も40億円で、同社が強い支持を得ているのがわかる。
そんな紅屋商事は商品政策で、豊富な品揃えに加え、味、品質を重視する。季節、催事に合わせたイベントも開催、楽しい店づくりにも取り組む。
ただ近年、商勢圏では競争が激化。今年4月には、西青森店の真向かいに市内初出店となる「MEGAドン・キホーテガーラタウン青森店」が開業。今年12月には、ロピアにとって県内2店舗目の「ロピア青森店」がオープンする。
これに対し紅屋商事では、生鮮食品を拡充して対抗。具体的には青果、精肉、鮮魚の生鮮3品で、自社の特徴を打ち出せる商品を決め、「カブブランド」として販売する。
看板部門は、売上高構成比(酒を除く)で18%を占める精肉だ。「中でも強化するのは売上高構成比で35%の豚肉。“こだわりのブランド豚”を主軸に据え、差別化を図っている」。SM事業部 商品部 精肉部門の赤坂宜仁チーフバイヤーは、こう明かす。
着実にファン獲得、しゃぶしゃぶ肉の売上3割増
強化する豚肉で、こだわり商材として活用するのは、日本ハムの国産豚肉「麦小町®」だ。3年前、赤坂チーフバイヤーが品質のよい新たな豚肉を探していたところ、取引先から紹介された。
では同社の精肉部門は、どのような売場づくりをしているのだろうか。確かめるため、前述の西青森店に足を運んだ。
豚肉では価格、品質によって異なる「松竹梅」の品揃えをする。売上高構成比で10%の「松」は高級ブランド肉を販売。次の同50%を占めるボリュームゾーン「竹」で主力ブランドラインアップするのが「麦小町®」。残る同40%の「梅」は輸入肉という構成である。
売場では冷蔵什器の上部に「青森県産 麦小町三元豚」と記したボードを掲げ、目立たせている。また「植物性主体の飼料を与え、やわらかく臭みのない豚肉に仕上げました」と特徴を紹介する説明文も載せていた。
「麦小町®」を訴求するため、販促企画でも売り込んでいる。それは土曜日に実施する「カブブランド」の「ポイント10倍セール」。普段よりも多くのポイントを付与、商品に手が伸びるよう工夫する。
日本ハムが提供するキャンペーンも積極的に活用している。直近では、24年10月12日から11月30日までを期間とする「麦小町®を買って当てよう ! おいしさ、むぎゅっと。プレゼントキャンペーン」を行い、好評を得ている。
これらの施策により、「麦小町®」は着実にファンを増やしている。「竹」で別のブランドを販売していた3年前と比較し、豚の味がストレートにわかる「しゃぶしゃぶ肉」は3割増と好調に推移する。
紅屋商事では、今後も「麦小町®」の販売に力を入れる。赤坂チーフバイヤーは「年々、競争が激しさを増す中、当社のこだわり商材としてアピールしていきたい」と話している。
豚肉の売場提案
精肉全般が高値トレンドにある中で、豚肉売場では価格や容量で買得感を訴求するだけでなく、味付け肉や地域ブランドなど、独自の付加価値を訴求する傾向が強まっている。今年オープンした新店の豚肉売場にスポットを当ててみた。