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「おうち居酒屋」ブームも継続、食中酒提案で楽しく豊かな家飲み時間を創出

食中酒バナーコロナ禍中、自宅で過ごす時間が増えたことで広がった家飲み需要は、昨今の物価上昇による生活防衛意識も影響し、新型コロナウイルスが5類に移行した現在も継続している。酒類メーカー各社は食事との相性を考えた酒類の提案を強化しており、シーン訴求で需要の拡大をねらっている。

飲用者の約7割が「食事中」にお酒を楽しむ

 新型コロナウイルスの感染拡大により、外食から内食への動きが加速した2020年以降、「家飲みブーム」が到来。スーパーマーケットの酒類コーナーでも「おうち居酒屋」提案を行う店舗が増加した。23年5月以降は新型コロナウイルスが5類に移行し、外出規制が緩和されたことで家飲みと外飲みの差は縮小しつつあるが、それでも家飲み需要はコロナ禍以前と比較すると、まだまだ高い水準で推移している。

 これは原材料費等の高騰による値上げの影響も大きい。相次ぐ食品価格の値上げにより消費者の生活防衛意識はいっそう強まっており、「外食で飲むと高くつくので自宅でお酒を楽しもう」と考えるユーザーも一定数いると推察される。

新型コロナウイルスが5類に移行し、外出規制が緩和されたことで家飲みと外飲みの差は縮小しつつあるが、それでも家飲み需要はまだまだ高い水準で推移している。(写真はイメージ i-stock/west )

 マイボイスコムの「家で飲むお酒に関するアンケート調査」によると、直近1年間に自宅でお酒を飲んだ人は、全体の7割弱【図表1】。頻度を見ると「週1日以上」飲用している人は全体の5割弱で、男性や高年代層で比率が高くなっている。また「ほとんど毎日」飲用している人は全体の22.0%。年代別で見ると男性の60~70代ではそれぞれ30%台、男性20~40代では10%台と、年代による差がみられる。

 【図表2】の自宅でお酒を飲むシーンについては「食事中」が飲用者の68.0%と7割近くを占め、「くつろぎながら」「食事の前」「食事の後」が2割程度で続いている。「食事の前」は男性の高年代層、「食事の後」は男性の20代から50代や女性若年層の比率が高く、「誕生日や結婚記念日などのお祝いのとき」「季節行事」は女性の比率が高くなっている。

 次に自宅でお酒を飲む人がどんな気分のときに飲むかを尋ねたところ、「お酒自体を楽しみたい」「食事を楽しみたい」がそれぞれ4割強、「リラックスしたい」「リフレッシュ・気分転換したい」「ストレス発散」などがそれぞれ3割弱となった【図表3】。また、酒類のカテゴリー別で見ると、日本酒主飲用者、焼酎・泡盛主飲用者、洋酒主飲用者では「お酒自体を楽しみたい」、ワイン主飲用者などでは「食事を楽しみたい」の比率が高くなっている。

 【図表4】では、自宅で飲むお酒の種類を複数回答ありで尋ねた。「ビール」は飲用者の62.5%と最も高く、「サワー、チューハイ」が4 4 . 1 % 、「ワイン」が35.1%、「新ジャンルビール(第3のビールなど)」が35.0%と続く。過去の調査と比較し「ハイボール」が増加傾向、「焼酎・泡盛」「発泡酒」などが減少傾向にあり、「サワー、チューハイ」については15年以降増加している。

エンド展開やクロスMDで
目的買い以外の来店客に訴求

 これまでは食事に合わせる酒類というとビール類やワインが定番だったが、食生活の変化やライフスタイルの多様化に伴い、ユーザーに選ばれる酒類も変化しつつある。

 現在、最も勢いがあるのが「RTD」だろう。サントリー「-196℃ストロングゼロ」を中心に多くのユーザーを獲得した高アルコール系をはじめ、フルーティーで果実味のある果汁系、若年層でも受け入れやすい低アルコール系、ウイスキーのエントリーにも貢献したハイボール缶など、さまざまなフレーバーで売場を盛り上げてきた。また外食での飲用体験から、「こだわり酒場のレモンサワー」をはじめとしたレモンサワーがブームとなり、メーカー各社がさまざまな商品を発売したことも記憶に新しい。

 直近では、キリンビールの「キリン 氷結 無糖」シリーズや、サントリー「-196℃ 瞬間凍結」といった食事に合わせやすい無糖系が人気を集めている。

 食中酒の定番であるビールは酒税改正以降、新ジャンルなど他のビール類からの流入もあり、堅調に推移するカテゴリーのひとつ。「生ジョッキ缶」が好調のアサヒビールではフルオープン缶を採用した初のプレミアムビール「アサヒ食彩」を3月より全業態で展開する。

 ビールやRTDへの流入が続きマイナス基調の新ジャンルや発泡酒だが、昨今の健康意識の高まりもあり、機能系と呼ばれる糖質オフ・ゼロ系ビール類の動きは比較的好調だ。キリンビールでは「プリン体0」「糖質0」の機能を持つ「淡麗プラチナダブル」を含む「淡麗」ブランドを対象にご当地グルメが当たるキャンペーンを実施し、食事との相性のよさを訴求している。

 コロナ禍以降、テレワークの推進なども後押しし、家でゆっくりとお酒を楽しむ余裕ができたことから瓶物の酒類も動きやすくなっている。たとえば日本酒は純米大吟醸や山田錦使用など付加価値型商品の動きがよく、メーカー各社は和食だけでなく洋食にも合わせやすいタイプ、低アルコールや微発泡タイプ、果汁と合わせた日本酒ベースのリキュールなど、ふだん日本酒を飲まない入門層をターゲットとした商品の開発にも力を入れている。

 ウイスキーも好調なカテゴリーのひとつ。サントリーでは外飲みおよびRTDのハイボール缶によるハイボール体験を通じ市場の裾野拡大に貢献。バカルディジャパンの「デュワーズ」はダブルエイジ製法によるスムースな味わいで若年層の人気を集めている。

テレワークの推進なども後押しし、家でゆっくりとお酒を楽しむ余裕ができたことから瓶物の酒類も動きやすくなっている(写真はイメージ)

 食と酒類を絡めた食中酒の提案は、食品の品揃えが豊富なスーパーマーケット業態が最も得意とする分野だ。ただし、酒類は主通路から一歩入った定番棚で展開されていることが多く、目的買い以外の来店客に気付きを与えるための仕掛けが必要になる。エンド展開や総菜とのクロスMDなど店頭露出を増やすことで気付きを与え、家飲みの楽しさを伝えることでトライアルを促進していきたい。