食品スーパー(SM)などの量販店における、酒類販売の動向はコロナ禍で大きく変化した。本稿ではその変化を「消費者行動の変容」「値上げの影響」「酒類の公正な取引に関する基準の改正」の3つに大別し、分析する。SM各社の酒類売場担当者には、3つの変化を把握し、効果的な商品政策(MD)を打ち出してもらいたい。
飲食店の売上減少は不可逆
社会は確実にアフターコロナに向かっている。コロナ禍を振り返ると、それが酒類業界に大きな変化をもたらしたことが明らかだ。
まずは、飲食店での消費の変化が挙げられる。コロナが落ち着いても飲食店での酒類の消費はコロナ前の約80%の水準までしか回復しないとの見方が一般的である。リモートワークの定着をはじめとした働き方の変化もあり、消費を支えていた中高年の飲食店消費の落ち込みは不可避と考える。
また、酒との接点、つまり、飲酒シーンも大きく変わった。たとえばメーカーの工場や生産地で直接消費する消費者が増えたほか、家庭内でゆっくり食事と酒を楽しむ、「家飲み需要」も拡大した。「酒を楽しむ」ことにフォーカスすれば、場所は必ずしも飲食店でなくてもよいと多くの人が気づいたのである。
飲食店での消費量の減少の影響は、SMをはじめとした量販店や酒類小売店、メーカーへも波及した。日本酒・焼酎メーカーで従来、量販店との取引を控えていた有名メーカーが、主戦場である飲食店の落ち込みと家庭用市場の拡大を理由に、量販店との取引を始めると宣言したのである。実際、20年以降、関東圏の量販店で「八海山」「久保田」などの有名メーカーの商品が並んでいない店は少ない。飲食店の利用を控えた「家飲み」需要は拡大の一途を辿っているため、筆者はこの傾向はまだ続くと考えている。量販店のバイヤーは有名メーカーとの取引拡大を図るべきだ。
「あえて飲まない層」に商機あり
コロナ禍で、酒は飲めるが「あえて飲まない層」が拡大したことも記しておきたい。「酒を飲めるが、健康を気にして飲まない」「酒は飲めるが、飲食店などでの忘年会など、酒を飲まなくてはならないシーンには出向かない」と考えている人々のことである。
そうした層の支持を
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