少子高齢化が進むなか、世帯構造も変化しており、2人世帯や単身世帯などの少人数世帯が増加傾向にある。こうした世帯構成人数の変化に合わせて、メーカー各社では容量の見直しを行っている。5食パックが中心だった袋麺は3食パックへ、飲料は持ち運びしやすく飲み切りやすいサイズへ、醤油は食卓でもキッチンでも使いやすい容量へ。シーンやライフスタイルに合わせた「シン・容量」を提案し、新たな需要を獲得している。
変化する世帯構造、平均世帯人数は2.25人
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」【図1】によると、2022年6月2日時点での全国の世帯総数は、5431万世帯にまで増加。世帯構成比をみると「単独世帯」が1785万2000世帯で、全世帯の32.9%を占めるまでに広がっている。平均世帯人数は1986年の3.22人に対し、36年後の22年には2.25人となった。日本の世帯総数は増えたが、小世帯化が進行する結果となった。平均世帯人数の減少は続いており、今後も「単独世帯」「夫婦のみ世帯」「ひとり親と子」の小世帯の割合が増加することが予想される。
また、新型コロナウイルス流行に伴い、生活パターンや勤務形態が変化し、食事の回数、量、時間なども変わり、食生活も多様化しているといえる。そこで電通では、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行、物価高騰の影響などの社会的な潮流を踏まえ、日本人の食生活における生活者の意識や実態、満足度、トレンドなどの調査を実施(調査期間:2023年10月20日~10月23日・全国15~79歳の1300人対象)。食生活の傾向や実態、食事に対する意識を聞いたところ、「自分の好みのものを選んで食べたい」人は86.1%で、16年よりも29.1%も増加した【図2】。
また、ふだん料理をする人は73.6%で、料理をするうえで大事なことは「自分の好み」(43.1%)と最も多く、22年よりも2.4ポイント増加。そのほか「食材を無駄にしない」(42.6%)、「レシピが簡単」(37.3%)と続く。家庭内でも自分のタイミングで好きなものを食べる「個食」などの傾向がみられる。
さらに「値上げがあったら食べたいものはガマンすると思う」人は59.5%で、22年よりも7ポイント増加した。値上げの影響は少なからず出ているといえそうだ。
袋麺は世帯構造にマッチした5食パックから3食パックへ
世帯構造やライフスタイルの変化に対応して「容量」に着目した商品が各社から次々に発売されている。
日清食品では、世帯構造の変化に合わせて、今年3月に袋麺のロングセラーブランド「日清ラ王」の5食パックを終売し、3食パックを新発売した。同社が行った調査によると3人に1人は「5食の袋麺は多い」と感じており、「購入を躊躇した経験がある」と答えていることから、世帯構造に合わせた3食パックを発売した。同社ではすでに「日清これ絶対うまいやつ♪」や「お椀で食べる」シリーズなどで3食パックを発売し、好調に推移。そこで、袋麺の王道の「日清ラ王」で3食パックを発売することで、これまで袋麺を買い控えていたユーザーを取り込むのが目的だ。
東洋水産では、手軽にお店品質の味が楽しめる「マルちゃんZUBAAAN!」シリーズから、中華そばとつけ麺のどちらでも楽しめる「豚骨魚介中華そば」の3食パックをこの春発売している。
また、サンヨー食品では昨年秋、「サッポロ一番 減塩」シリーズ4品に3食パックを発売。シニア層をターゲットにした商品ということもあり、3食パックが採用されている。5食パックが中心の袋麺売場だが、今後さらに少人数世帯が増えていくことを考えれば、3食パックが増えることが予想される。
ちょうどいいサイズの飲料や調味料が登場
日本コカ・コーラでは、以前から製品展開している160ml以下の缶、350ml以下のPETボトルを「アフォーダブル」サイズと位置づけ、23年より販売を強化している。「アフォーダブル」は直訳すると「おてごろ」という意味で、買いやすさや適量、持ち運びやすさなどのニーズに対応した商品となっている。ミニ缶・ミニPETボトルは手に取りやすい価格帯であることから衝動買いが多く、購買促進に貢献している。
一方、ヤマサ醤油では、食卓でもキッチンでもさまざまなシーンやライフスタイルに合わせた「鮮度ecoボトル」300mlシリーズを展開。ほどよい量とサイズ感で少人数世帯にも使いやすい。料理に合わせて醤油を使い分けたい人にもちょうどよいサイズで、特選クラスの丸大豆しょうゆや、生しょうゆ、だししょうゆなど、5種類をラインアップした。
そのほか、調味料ではキユーピーが、ドレッシングの主力商品「深煎りごまドレッシング」と「シーザーサラダドレッシング」の容量ラインアップを拡充。これまでの180mlと380mlに加え、260mlと600mlを増やして4つの容量を展開している。ドレッシングはサラダだけでなく、さまざまな料理に使われることが増えており、とくに「深煎りごまドレッシング」は、冷奴、豚しゃぶ、うどんなどのかけるメニューのほか、蒸し料理や鍋物のたれ使いとしても広がっている。そのため大容量を求める声が多くなったことから600mlを発売。一方、家族の好みに合わせて使い分けて複数の種類を保有する世帯も増えていることから、手ごろな価格で購入しやすい260mlもラインアップした。ドレッシングは世帯によって使い方が多様化しているため、容量も複数揃える必要があるようだ。
ヨーグルトは最適な中容量帯、スープは好みの濃さが選べる大容量
生活環境や食シーンの変化から、多様化するあらゆるユーザーのニーズに応えるため、明治では昨年、「明治ブルガリアヨーグルト」シリーズに「コンパクトシリーズ」を発売。180gの「コンパクトプレーン」3種類と、400gの「コンパクトのむヨーグルト」4種類。そのままで、食べきり、飲み切り、分け合って、それぞれのライフスタイルに最適なシリーズとして提案した新容量となっている。コンパクトシリーズは、持ち帰るのも便利で、冷蔵庫の中でも場所をとらず好評となっている。また、コンパクトシリーズを発売することで、ライトユーザーを取り込んでおり、市場も活性化している。
一方、ポッカサッポロフード&ビバレッジでは、主力商品の「おうちスープ」シリーズのパウチ容器入り大容量タイプを展開している。いつもの飲み方はもちろん、自分の好きな量、濃さで楽しむことができるのが魅力となっている。また、具材が入っていないので、料理にも使える汎用性があり、チーズフォンデュやドリアなど、手軽にアレンジできる点も魅力だ。
各社とも、多様化する食やライフスタイルに合わせて、新たな価値を持った容量帯を展開することで、需要を喚起して市場活性化につなげている。