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朝食に菓子・デザートが増加!?長期的なトレンドの変化を探る

ここ数年、共働き率の増加やそれに伴う個食傾向や簡便志向の高まりなどの影響もあり、朝食における菓子・デザートの出現が増加している。そこで、今回は家庭の食卓を連続的に観察してきた食MAP®データから、朝食傾向を探っていく。

食MAP®とは、株式会社ライフスケープマーケティングが提供するマーケティング情報システム。1998年10月から首都圏30km圏内在住の主婦世帯を対象に、食品の購買、調理、消費までをパネル形式で調査したもの。

朝食は「バラバラ食卓」と「菓子・デザート」が拡大

 食MAP®データから、2014年8月~24年7月までの10年間の朝食で「食卓で個人飲食者全員が同じメニューを食べない割合(以下、バラバラ食卓率)」を見ると、長期で伸長していることがわかる。23年8月~24年7月期のバラバラ食卓率は65.7%となり、14年8月~15年7月期の58.6%と比べ112.1%となる。

23年8月~24年7月期のバラバラ食卓率は65.7%となり、14年8月~15年7月期の58.6%と比べ112.1%となる。(i-stock/kuppa_rock)

 背景には、共働き世帯の増加による朝食時の簡便需要の高まりなどが考えられそうだ。生活の中でも特に慌ただしい朝食時において、従来の「主婦が朝食の支度をして家族で同じメニューを食べる」というスタイルから、「家族それぞれが個々に自分に合ったメニューを食べる」への変化が読み取れる。

 バラバラ食卓率の増加とあわせて、朝食における菓子・デザートのTI値を14年8月~24年7月までの10年間で見ると、同様に長期で伸長している。23年8月~24年7月期の菓子・デザートのTI値は90.8となり、14年8月~15年7月期の59.3と比べ153.1%となる。家族が個々に食事を選ぶスタイルにおいて、調理や加熱が不要な菓子・デザートは年齢を問わず手軽に食べられるため、重宝されていることが考えられる【図表①】。

分析期間:2014/8/1~2024/7/31 食卓機会:朝食 
バラバラ食卓率:食卓で個人飲食者全員が同じメニューを食べない割合(主食・汁物・おかず・果物・菓子・デザート)
※乳幼児のいる世帯を除く ※菓子・デザート:ヨーグルトは除く
出典: 食MAP®

 また、24年4月1日時点の食MAP®モニタへ実施した「平日の朝食支度時間」のアンケートによると、15分未満と回答した割合は66%と長期で増加しており、今後も時短傾向は高まりそうだ。

手軽な「ビスケット・クッキー」でエネルギー補給

 朝食における菓子・デザートの出現傾向をカテゴリ別に見ると、「ナッツ」や「洋焼き菓子・ビスケット・クッキー」の出現が伸長しており、出現頻度自体も高いことがわかる【図表②】。「洋焼き菓子・ビスケット・クッキー」は調理や加熱が不要で手軽なエネルギー源として、主食の代わりに食べられていることが推測できる。

分析期間:2014/8/1~2024/7/31 食卓機会:朝食 
※乳幼児のいる世帯を除く ※菓子・デザート:ヨーグルトは除く
※2023/8/1~2024/7/31期のTI値上位10
出典: 食MAP®

 また、栄養価の高い「ナッツ」の出現が拡大していることから「手軽さ」だけでなく、「健康」や「栄養」なども朝食における菓子・デザートに求めているのかもしれない。加えて「ナッツ」、「洋焼き菓子・ビスケット・クッキー」は常備性に優れている点も拡大の要素として考えられる。

 一方で、ケーキやプリンなどのいわゆる「洋生菓子」の出現は振るわないことからも、あくまでも朝食の菓子・デザートは「手軽さ」や「常備性」、「健康・栄養」などがキーワードとなりそうだ。

 菓子・デザートが持つ「誰でも手軽においしく食べられる」という利点を生かし、生活者の多様化するライフスタイルやニーズに合わせた提案が、食卓に新たな価値を提供するカギとなるだろう。

※食MAP®データにつきまして無断転載は禁止とさせていただきます。
株式会社ライフスケープマーケティング
TEL:03-3515-7088
https://www.lifescape-m.co.jp/

文=倉田悠(株式会社ライフスケープマーケティング カスタマーサクセス部)