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売上苦戦から一転 地味な「10円パン」がTikTokの上半期トレンド大賞になるまで

10円硬貨のデザインを模した「10円パン」が若い世代を中心に人気を博している。韓国で話題のスイーツに着想を得た商品であり、昨今の韓国ブームを考えるとスムーズにヒットしたかのように思うかもしれない。しかし、当初は売上に苦戦していたのだという。10円パンはどのようにしてブームを引き起こしたのか。店舗展開を行っている、B.N(東京都/李在旭代表取締役)広報企画部の西川和磨氏に聞いた。

予測していなかったヒット

長く伸びるチーズが特徴

 全国に15店舗を展開している「大王チーズパン」通称「10円パン」は、2023年にTikTokの上半期トレンド大賞にノミネートされるなど、SNSを中心に大ブームを引き起こした。カステラのような生地の中にとろけるチーズが入ったモチモチとした食感のパンで、直径11センチとボリュームがある。

 同商品を展開しているB.N 広報企画部の西川和磨氏は、「10円パンは、韓国の慶州(キョンジュ)地方で誕生した『10ウォンパン』をアレンジしたもの。10ウォンパンは10ウォン硬貨を模したデザインが特徴であり、慶州の観光客に受けて大ヒットしたスイーツだ。現在は観光名物として定着している」と話す。

 同社はいち早くこの10ウォンパンに注目し、10円硬貨のデザインを模して大王チーズパンの商品開発を行った。とはいえ「大王チーズパンの見た目は、日本の今川焼や大判焼きに似ている。しかも価格は500円とやや高めの設定。お得感があるスイーツではないため、ここまでのヒットは正直予測していなかった」(西川氏)

チーズのほか、カスタード、あずき、抹茶カスタード、チョコ味が揃う

2号店までは苦戦が続く

 韓国で流行した後に日本に上陸する韓国スイーツは少なくない。フルーツパフェ「ボンボン」、進化系マカロン「トゥンカロン」、フローズンドリンク「マカチーノ」など、人気になる商品も目立つ。

 B.Nは2022年9月に渋谷MEGAドン・キホーテに1号店をオープンしたが、10円パンは1号店オープンと同時にヒットしたわけではない。当初はかなり苦戦したという。

 「開店してから3カ月程度は、1日の販売量は数十個程度だった。1号店の販売が振るわない中、大阪の道頓堀に2店舗目のオープンを控えていた。味の種類を増やすなど試行錯誤したものの、2号店の売上も伸びず低迷が続いていた」(西川氏)

 たしかに、韓国スイーツはカラフルでインスタ映えするのが特徴で、華やかな印象のものが多い。10円パンは発想が奇抜ではあるものの、これまで日本に上陸してきた韓国スイーツと比べるとやや地味な印象があるのは確かだ。

1日1000個を売り上げる人気に

 

期間限定のキッチンカーでも出店している

 そんな10円パンに注目が集まり始めたきっかけは、グルメ系インフルエンサーが自身のSNSで紹介したことだった。西川氏は「『10円パンという名前なのに価格が500円』というギャップと大きさへの違和感、驚くほどに伸びるチーズが注目を集めたのではないか。お客さま同士の会話やネットへの投稿が盛んになったことで話題性が生まれ、物珍しさを含めて大きな流行につながっていった」と分析する。

 グルメインフルエンサーの拡散力により、10円パンはまず関西での認知度が上がり、徐々に全国的なブームになっていった。ブームがひと段落した現在でも全国に15店舗を展開し、各店舗で1日平均1000個を売り上げるなど順調な売れ行きを記録しているという。

 「今後は全国でのFC展開を進めていく計画で、FC加盟を募集している。また、催事やイベントへの出店を進めていくこと、新フレーバーの展開なども予定している」(西川氏)