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安いだけじゃない! 進化する「スーパーセンタートライアル」の総菜

トライアルカンパニー(福岡県)が展開する「トライアル」といえば、ディスカウント型のスーパーセンターをまずは思い浮かべるだろう。小売業界に身を置く人なら、AIをはじめとするデジタル技術・データ活用の先進企業というイメージも強いかもしれない。一方で、同社の商品が「価格の安さ」以外でクローズアップされる機会は意外にも少ない。しかし昨今、トライアルの店頭に並ぶ商品は大きく進化しており、とくに総菜商品のクオリティ向上は目を見張るものがある。最新店舗の売場から、総菜の進化の最前線をレポートする。

取材の本題ではないのに、思わず立ち止まってしまった総菜売場

 福岡県宮若市に10月28日に新規開業した「スーパーセンタートライアル宮田店」。トライアルが昨今出店を進める「スマートストア」の最新店舗だ。商品をお客自らがスキャンしながら決済できるほか、クーポン・商品情報も映し出されるモニターが搭載された「スマートカート」、初導入となるAIカメラとセンサーで欠品を監視・管理できる「AI冷蔵ショーケース」などが報道陣にお披露目された。

 それらはそれらで非常に興味深いニュースだったのだが、ほかの業界誌記者と思わず顔を見合わせたのが、同店の総菜売場だ。そこに並ぶのは、店内調理の出来立て総菜の数々。見た目の完成度も高く、午前中の取材ということもあり食欲を強く刺激されてしまった。

 筆者の主観にはなるが、トライアルの総菜といえば「安くて量はガッツリ」と、価格とボリュームの”コスパ”のよさが先行するイメージだった。しかしそれは固定観念であることを思い知らされた。

焼き立てのピザとボリュームたっぷりのサンドイッチ!

 実際に売場に並んでいた商品を一部紹介しよう。

店内で焼き上げたピザはすべて税込500円

 まず目に入ったのは、店内で焼き上げたピザだ。1ホール500円(以下すべて税込価格)とお手頃で、「たっぷりコーンピザ」「ウインナーポテトピザ」「照り焼きチキンピザ」など子供が喜びそうなメニューを中心に揃えている。

サンドイッチはボリュームたっぷりの玉子サンドとチキンサンドを目玉商品として提案

 サンドイッチコーナーでは、「たっぷり玉子サンド」と「チキンカツサンド」の存在感が大きい。いずれも具材がたっぷりと入っていながら、199円と破格。玉子サンドは情報番組の試食ランキングで2位となったようで、POPでも紹介されていた。

トライアルも地産地消を重視? 弁当、おにぎりは地元・宮若の米を使用!

宮若米を使ったおにぎり。具材のラインアップも豊富だ

 続いて注目したいのが米飯・弁当類。こちらはほぼすべての商品に地元の「宮若米」を使用しており、トライアルも「地産地消」を重視しているようだ。商品ラインアップは定番の「手巻きおむすび 辛子明太子」(149円)のほか、「おにぎりサンド タンドリー竜田」(149円)、「海賊おにぎり 鮭ツナマヨ明太」(199円)など具材も握り方も多種多様となっている。

弁当もほとんどが宮若米を使用。399~499円が中心価格帯

 弁当にも宮若米が使用されている。価格帯は399~499円が中心で、「旨味醤油唐揚弁当」(399円)、「大きな焼き鯖弁当」「黄金比手ごねハンバーグ弁当」(499円)などボリューム感のある商品が並んでいる。

 ちなみに、トライアルは今年から社内の一部機能を宮若市内の拠点に移し始めており、その動きの中で地域の生産者やメーカーとの関係性構築も図っているという。宮若米を使用した米飯・弁当類はその一環で誕生した商品とみられ、今後も地元の素材を使った商品は増えていくかもしれない。

「中華」を激推し! 弁当からスイーツまで充実

総菜売場でとくに存在感が大きいのが中華総菜。本格中華料理人監修と謳うだけあって、本格的なメニューが並ぶ

 このほか、宮田店の総菜売場で大きな存在感を放っていたのが中華総菜だ。POPでは「本格中華料理人監修」とやや仰々しいコピーが踊っているが、確かに売場に並ぶ商品は本格的。弁当は2種のおかずを盛り込んだものが基本で、「青椒肉絲・豚と木耳」「海老チリ・青椒肉絲」などの組み合わせにさらにシュウマイあるいは唐揚げがトッピングされるという構成。これで価格は399円、しかも前述の弁当同様に「宮若米」を使用している。

 筆者も取材後に「海老チリ&黒酢酢豚」弁当を試食したが、予想以上の本格的な味わいに少し驚いた。とくに酢豚は総菜になるとべたっとした甘さあるいは黒酢の酸味を強く感じることが多いのだが、同弁当は個人的には甘みと酸味のバランスがちょうどよい印象だった。

 

中華総菜は一品料理やスイーツも充実

 もちろん一品料理も充実していて、「黒酢肉団子」(199円)、「8品目具材の中華春巻」(5本1パック・250円)、丼系では「麻婆豆腐&豚肉の玉子炒め丼」「海老チリ&麻婆茄子丼」(各350円)などを販売。さらにスイーツは監修シェフの個人名をPOPに記すほどの自信作のようで、マンゴーピューレと果肉を贅沢につかったという「マンゴープリン」、ミックスベリーを散らして見た目にも鮮やかな「杏仁豆腐」(各199円)などを冷ケースいっぱいに売り込んでいた。

総菜のレベル向上で競争力はさらに高まる?

10月28日にオープンしたトライアル宮田店

 ここまで写真とともに商品を見てきたが、「思ったよりも出来栄えや見栄えがいい…」と思われた方も少なくないのではないだろうか。ディスカウント色が強いトライアルだが、価格の安さは据え置きつつ、品質の向上も追求していることが垣間見えた。

 ちなみに、トライアルは総菜の開発・製造を担う明治屋(福岡県)という子会社を有しており(2016年にトライアルホールディングスが子会社化)、宮田店の総菜売場も同社がコンセッショナリー(名前を出さない専門テナント)として入っている。一部のアウトパック商品も同社のプロセスセンターから供給されたものだ。この明治屋は料亭やレストランも展開しており、外食のノウハウを総菜の開発にも活用しているとみられる。

 コロナ禍では一時的に需要が伸び悩んだものの、総菜が持つ即食性・利便性というメリットは不変のもの。トライアルが総菜という領域を今後どのように変革していくのか、そこに同社が得意とするAI・データ活用がどのように入り込んでいくのかなど、注目すべき事象は多そうだ。