ファミリーマート(東京都/細見研介社長)は10月18日、新プライベートブランド(PB)「ファミマル」を発表した。複数ある既存のPBを「ファミマル」として統一するもので、ラインアップは合計約810種類とファミリーマートのPB史上最多となる。なぜ今、ファミリーマートはPB刷新に踏み出したのか。先行試食会と発表会の様子を交えてレポートする。
既存PBを「ファミマル」に集約
ファミリーマートの既存PBは、日用品、菓子、加工食品などの「ファミリーマートコレクション」、総菜や日配品、冷凍食品などの「お母さん食堂」と、高付加価値帯の「お母さん食堂プレミアム」の3ブランド。「ファミマル」移行後は、「ファミリーマートコレクション」を「ファミマル」、「お母さん食堂」と従来ファミリーマートロゴだけが記載されていた弁当・サンドイッチ、レンジアップ麺類などを「ファミマルKITCHEN」、「お母さん食堂プレミアム」を「ファミマルKITCHEN PREMIUM」として整理・統合する。内訳は「ファミマル」約350種類、「ファミマルKITCHEN」約450種類、「ファミマル KITCHEN PREMIUM」約10種類の合計約810種類の展開を見込む。
ブランド刷新の理由について、同社エグゼクティブ・ディレクターCMO兼マーケティング本部長の足立光氏は、「お客さまから見て、(従来のPBは)棲み分けがわかりにくい。また、『お母さん食堂』は知らなければファミリーマートのPBだということが伝わらないネーミングだった」と話す。「ファミマル」の名の下にPBを集約し、ブランド力強化・発信力強化に繋げることがねらいだ。なお、「お母さん食堂」のネーミングをめぐり、性別役割分担の固定化を助長するものとして一部インターネット上で署名運動が行われたことに関しては、「(署名運動は)関係ない。PB刷新は以前から計画していたもの。すべての世代、性別の方々に受け入れられるものとして検討を重ねた結果」(足立氏)とした。
「ファミマのPB」としてのブランド力を重視
「ファミマル」のネーミングは、ファミリーマートがキーワードとする「おいしい◎うれしい◎あんしん◎(読みはおいしい、うれしい、あんしん)」の“マル”と“ファミマ”を組み合わせたもの。基本のロゴには、一目で「ファミリーマートらしさ」が伝わる青・緑・白のブランドカラーを使用し、初めて見る人にも「ファミリーマートのPB」であることが伝わりやすいものになっている。
PB刷新と同時に、一部の商品ではリニューアルも実施する。一例を挙げると、「痺れて旨い!四川風麻婆豆腐」(税込358円)では、花椒を別添とすることで好みの味に調節しやすいように変更。文字通り“痺れる”おいしさを追求しながらも、以前と比べて旨味がより感じられるようになった。
パッケージにもこだわった。シズル写真は真上から撮影したものを使用し、「ファミマル」の“マル”を意識。また、「電子レンジ調理可」「抗菌」などの実用的な内容のほか、「生乳仕立て」「直火二度焼き製法」など、その商品の特徴をアイコン化してパッケージの目立つ位置に配置した。何が優れているのか、誰にでもわかりやすくする取り組みだが、アイコン化することでパッケージをよりすっきりと、スタイリッシュに見せる効果もある。
24年度末までにPB売上比率35%以上をめざす
新PB発表会に際し、同社細見社長は「デジタル化の加速やコロナ禍、SDGsへの関心の高まりなどで急激にライフスタイルや価値観が変化している。『あなたと、コンビに』のキャッチフレーズの通り、お客さまのパートナーであり続けられるようスピード感を持って変化を起こしていく」と語った。9月、創立40周年の節目とともに下期のスタートを切ったファミリーマート。「ファミマルは下期最大のチャレンジ」(細見社長)で、2024年度末までにPB売上比率35%以上をめざす。
コンビニエンスストア(CVS)のPBに関しては、業界トップのセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)の「セブンプレミアム」が高い知名度を誇る一方、業界第3位のローソン(東京都/竹増貞信社長)は結果として賛否両論を巻き起こしたPBパッケージリニューアルを実施するなど、各社差別化・ブランド力向上を試みている状況だ。「ファミマル」がどこまで世間に浸透していけるか、関心が集まる。