西友(東京都/大久保恒夫CEO)は2021年9月29日、プライベートブランド(PB)「みなさまのお墨付き」に関する戦略を発表。PBの領域を超えた商品開発をめざす、西友のPB戦略をまとめた(本文中の価格はすべて税抜き)。
新体制下での西友の戦略とは
西友は2021年3月より、ウォルマート傘下から、楽天、KKR傘下となり、新CEOに大久保恒夫氏を招へい。新体制下で西友は2025年にめざす姿として「スーパーマーケット(SM)ナンバーワン」「ネットスーパーナンバーワン」の2つのナンバーワンを目標に掲げる。
この目標を達成するために西友は以下の3つの施策を掲げる。
- 低価格ニーズ+価格以外のニーズ対応の両立
- 商品開発力、販売力
- OMO(オンラインとオフラインの融合)/デジタルナンバーワンのSM
具体的には、ウォルマートから得たエブリデーロープライス(EDLP)をベースにさらなる改革を実施、価値ある商品をお得な価格で提供するとともに、日本を代表するOMOリテーラーをめざす、というものだ。
同社によると、コロナ禍を背景に、店舗売上は堅調で、ネットスーパーの売上も大きく伸びているという。
「今後、株主である楽天との連携強化で、デジタルマーケティングとリアル店舗、ネットスーパーの体験を融合していく」と西友商品本部の木下数基本部長は語る。
PBの領域を超えたオリジナル品を開発する
今回発表したPB戦略は、①②の施策の中核をなすものである。
西友のPB「みなさんのお墨付き」は、2014年からスタートしたPBで、1品目あたり100人以上の消費者モニターに実際に使用・試食してもらい、商品を支持すると答えた消費者が80%以上の場合に限り商品化をする、文字通り消費者の「お墨付き」をブランド特徴とする。加えて、ナショナルブランド(NB)と同等以上の品質で10%以上安い、「良いのに、安い!」PBをめざしている。
そうしたなか西友は、「PBの領域を超えたオリジナル商品の開発をめざす」ことを今回明らかにした。そこには同社PBの進化がある。
西友も、もともとは「定番NB商品のPB化」からスタートし、その品揃えを広げてきた。昨年からは、コロナ禍における食卓ニーズの変化に伴う、巣篭もり・在宅による調理負担の増加と、生活防衛意識の高まりに対応した「付加価値の高い、こだわりのPB」の開発を進めてきた。
具体的には、1Stay Home、2Quick & Easy、3Healthy、4Guilt freeの4つの切り口での開発をスタートした。その結果、過去最大の500アイテム以上の新商品を20年に投入し、PB売上高は対前期比27%増、過去最高売上を記録した。
21年からは、「PBから脱却し、オリジナル商品としての独自色を強くしていきたい」(木下氏)という考えのもと、PBの領域を超えたオリジナル商品の開発へと舵を切ることになった。
具体的に、どのような切り口で、どんな商品を開発するのか?
21年、西友が着目する3つの消費者変化とは
西友は21年、コロナ禍2年目に伴う、以下の3つの消費者変化に着目。
- 自宅で料理をする機会が増えた一方、日々の料理が面倒という声が増えた。
- ワクチン接種後も、栄養バランス、免疫力を付ける食事を好む人が増え、健康意識がいっそう高まった
- 国内外への移動制限で、地域名産品や世界の味へのニーズが高まる
それらの消費者ニーズを満たすテーマとして、時間をかけずに美味しく便利な「Ready To Cook/Eat」、心も体も心地よい生活を提案する「Well-Being」、産地、原材料、旬にこだわった「Local & Seasonal」を設定。それぞれを満たす商品を順次発表中だ。
たとえば「Ready To Cook/Eat」ではレトルト商品を強化。とくにマッサマンカレーなどの大ヒット商品をふくめ14品目をすでにラインナップするレトルトカレーでは、新たに動物性原料不使用の「大豆ミートのキーマカレー」(250円)を発売。動物性原料の使用有無を店頭で尋ねられることが増えたことから、市場性を認識し、発売したものだ。動物性原料不使用のカレーはNBでもほとんどない。まさに「既存PB領域を超えた」商品との一例と言えるだろう。計画比30%増で推移しているという。
「Well-Being」では、前年に「ギルトフリー」をテーマに糖質控えめで味にもこだわった商品を投入して、計画比30%増を達成したが、21年は「心の健康」にも着目。「おうち時間」を楽しむ商品として、国産小麦や北海道牛乳など原料にこだわったシナモンドーナツやメープルバウムクーヘンなどの「おうちカフェシリーズ」のほか、カフェインレスのアールグレイティーやオーガニック紅茶ダージリンなど健康志向の商品も発売する。
マーケティング施策を強化
商品開発だけでなく、マーケティング活動も強化し、ブランド認知を進め、販売をいっそう強化する。
「お墨付き」の店内POPを刷新。視認性を高めるだけでなく、ブランド便益をわかりやすく店頭で表現する。また、店内一等地に「お墨付き」専用コーナーを設置したほか、21年6月からはインスタグラムも開始した。
今後は、ユーザーのと一緒に作っていくブランドをめざしており、「アンバサダー」を任命して、商品を積極的に紹介してもらったり、お墨付きユーザーの声を生かした商品開発を行いたい考えだ。
そうした取り組みの結果、21年以降も毎年2ケタ以上のPB売上成長をめざし、23年にはグロサリーにおけるPB構成比を25%にしたい考えだ。なお、同社は前年、「22年までに20%以上」と掲げていたので、その目標はかなり上振れした格好だ。
今後、価格競争の激化に加え、業態の垣根を越えた競争が激しくなるなか、「自社にしかない特別な価値」を持った商品は、強豪との差別化でも、目的来店性を高めるうえでも、来店動機を作るうえでも非常に重要になる。今回西友が発表した戦略は、食品小売業がめざすべき確かなPB戦略の軌道だと言えるだろう。