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生協が「冷凍食品」の商品開発に最も注力する理由

日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)は、7月15日に都内で行った土屋敏夫代表理事会長着任会見の席で、コープ商品の開発で注力するカテゴリーの筆頭に冷凍食品を挙げた。日本生協連の2020年度冷凍食品供給高は、前年度比114%と大きく伸長。上半期には受注に供給が追いつかない場面もあり、計画欠品調整などをしながらの二桁伸長である。同年は新商品の提案もストップしていたが、21年春以降は意欲的な開発・提案が続いている。キーワードはサステナブルであること。環境保全、生産者支援など、エシカル(倫理的)消費につながるという「共感」である。

昨年供給高30%増のあんかけラーメンを今秋リニューアル

週1回配達のサイクルにマッチした冷凍食品

 今年7月30日は、初の「消費生活協同組合の日」(日本記念日協会認定)だった。今年創立70周年を迎えた日本生協連が記念事業の一環として、戦後まもなくの1948年7月30日に公布された消費生活協同組合法(生協法)にちなんで記念日の申請を行った。より良いくらしを目指して消費者が出資(加入)し、利用し、運営する生協は、昭和初期から発展をしてきたものの第二次世界大戦で打撃を受けた。しかし、くらしの危機を迎えた戦後の混乱の中で急速に再建、新設の活動が広がり、生協法が成立する頃には、全国に6503組合、組合員数は297万人になっていた。現在、日本生協連の加盟生協は、全国561生協、組合員数は約3000万人。日本最大の消費者組織となっている。

 くらしを守る、平和を守る運動を行う一方で、より良い消費をめざす購買・利用事業、その両輪を柱とするのが消費者団体・生協の活動である。購買事業においては、地域の組合員が数人の「班」を作ってまとめ買いをする「共同購入」方式が生協独特の流通システムとして定着した。1970年代末には、「週1回定曜日配達」が確立し、以降内容の充実、システムの近代化が進んだ。核家族化が進行し共働き世帯が増えた時代には班活動の衰退が見られたが、配達料を加算して各家庭に届ける「個配」事業の拡大により、供給高(売上)は再び伸長の軌道に乗った。

 ところで、週1回という購買では生鮮食品は1週間分をまかなえない。生協の宅配に最も適した食品として、冷凍食品、冷凍水産品、冷凍畜産品が積極的に開発され需要をつかんできた。低温管理で安全に運ぶことができ、週1回計画的に日持ちするものを購入できる。小分け利用が可能で、腐らないからロスも出ないという賢い購買・消費に冷凍食品はマッチしたのである。

 生協と冷凍食品の歴史は古く、昭和30年代半ばに神戸地区(現コープこうべ)で始まった。同時期、スーパー初の冷凍食品売場がダイエー三宮店に開設されている(昭和38年:1963年)。いずれも地元で全国に先駆けて冷凍食品の流通業に着手した、中村博一商店(現:ナックス)の働きかけだった。

 生協宅配では毎週カタログが配布され、商品情報が掲載される。これは、1970年代ではまだ新しい食品であった冷凍食品について、知識を広め、需要を育てる一助となった。商品の取り扱いについて、調理法について、また「組合員の声」を反映した商品開発であることなどをダイレクトに伝えることができるのも、生協の宅配システムのメリットである。冷凍食品業界にとって生協は、マイナス18℃以下の低温を保ち、流通・管理することの大切さを直接消費者に伝えることができる流通ルートなのである。

2020年度、日本生協連の冷凍食品供給高114%

 2020年度、日本生協連には34万人を超える新規組合員の加入があった。コロナ禍の巣ごもり需要で既存組合員の利用が急伸、さらに新規加入組合員の利用も加わって、ピーク時には宅配で150%超、店舗でも約120%の供給高増があり、物流体制の危機といわれたほどであった。

 同連合会によると、2020年度冷凍食品供給高は前年度比114%と伸長した。伸長したカテゴリーは、総菜116%(和116%、洋119%)、スナック114%、米飯115%、麺116%(パスタ128%、玉めん117%、具付きうどん・そば121%、中華麺112%)、野菜128%(ほうれん草133%、コーン132%、ミックス142%)、ケーキ124%、和菓子140%。また生協独自の開発商品、冷凍離乳食の「きらきらステップ」シリーズ(2017年~)は、この商品の利用を目的に生協加入をする子育て世代がいるほどの人気商品だ。

CO・OPきらきらステップシリーズ

 好調の麺類の中では、既存人気商品の具付きめん、ちゃんぽん、あんかけラーメンが130%以上の伸長だった。供給が追いつかず計画欠品などもあった中での伸長で、驚異的伸びといえよう。在宅時間が長くなり、ランチに手軽に食べられる冷凍めんが人気を得た格好である。昨年度は新商品開発もストップせざるを得なかったが、日本生協連では今春から伸長する冷凍麵類の開発強化を進めている。

「声」を生かす開発が商品力になる

 生協のPB「CO・OP商品」の開発で最も重要なポイントは、「組合員の声」である。消費者の声に基づいた開発商品だからこそ、需要をつかみ利用が伸びる。

 今年秋リニューアルされる人気商品、「《とれる》国産野菜の五目あんかけラーメン」(1食/2食)の事例を見てみよう。同品は、2013年開発のロングセラー商品で、2018年には「1/3日分の国産野菜」を使用し「食塩量低減」を実施、供給高が急伸している商品だ。今回のリニューアルは、あんかけタイプの麺料理のためスープの素の中に油脂や増粘剤が入っているが、これが希釈する際にダマになりやすいという声があったことから改良を検討したもの。生協内には、「たとえ1人の声でも、それはどの程度の組合員が抱いている声なのかを調べる」という姿勢がある。リニューアル品は濃縮スープから油脂と増粘剤を除き、麺と具のパーツに移した。これによりスープは溶けやすくなり、さらに魚醤やオイスターソースを加えて味に深みを出す改良も可能になったという。

「共感」につながるサステナブル商品を伸ばす

 日本生協連では、2018年6月に採択した「コープSDGs行動宣言」に基づき、コープ商品におけるエシカル消費対応の取り組みを進めている。今年2月からは、環境や社会に配慮した商品であることを示す認証マークの種類が増える中、共通のロゴマーク「コープサステナブル」をパッケージに表示することで、サステナブルな商品を分かりやすく、選びやすくする取り組みを開始した。

 「コープサステナブル」のマーク展開にあたっては、「海の資源を守る」「森の資源を守る」「オーガニック」の3つのテーマで取り組み、共通ロゴの下部にメッセージを表示している。キャッチコピーは、”おいしい、うれしいが「未来につながる」”である。

 冷凍食品では、人気ナンバーワン商品の「さばの味噌煮」に従来から海のエコラベル(MSC認証)が付いている。冷凍食品でのコープサステナブルマーク付きでは、「赤魚の煮付け」が第1号商品になった。これも「MSC認証」の原料を使用した商品である。

コープ・サステナブルマークを付けた「赤魚の煮付け」

 より良いくらし、社会に結びつく消費、エシカル消費の推進は生協の大きな柱となってきた。しかし、その一方で課題も見える。コロナ禍に伴う景気後退で若い世代を中心に、ますます「価格」志向の開発を望む声が高くなっていることだ。生協が消費者運動と購買の両輪を持つ中で、強みもあれば理念と現実の折り合いが難しい課題もある。そんな中で冷凍食品は、食品ロスを生まない経済性があり、サステナブルに配慮した食材調達から考えて考えて計画的に製造する。

山本純子責任編集、冷凍食品専門情報サイトは「エフエフプレス」(https://frozenfoodpress.com/)