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バイヤー、マーケター必見!ウィズコロナ、アフターコロナの食マーケティング、6つのキーワードとは

ワクチン接種は進むものの、我々が当初想定していた以上に、コロナウイルスとの戦いは長期化している。そうしたなか、生活者の暮らし方、働き方、遊び方、そして食べ方はこのコロナ禍で大きく変容しており、食品小売業は変化対応を進めてきた。

ウィズコロナ、アフターコロナの食品マーケティングはどうなるのか?三菱食品マーケティング本部長小山裕士氏が「第24回ファベックス2021」内で行ったセミナーの内容をベースに解説してみたい。
「第24回ファベックス2021」は4月21日から23日の3日間にわたり開催された、総菜・弁当・中食・外食・給食・配食の業務用専門展。不要不急の外出自粛、リモートワークの定着もあり、今回の来場者は、その約3分の1の2万6457名にとどまった。

Bet_Noire/istock

コロナ禍が作った新たな食マーケティングの切り口とは

 小山氏によるセミナーの前半では、コロナ禍で起こったさまざまな分野での影響を振り返り、生活者の行動様式において生じた6つの変化が示された。

「(安心安全を含む)公衆衛生意識の高まり」、「節約志向」、「家族志向」、「時間や気持ちのゆとり」、「ワークライフバランスの見直し」、「デジタルへの許容」の6つだ。

 これらを踏まえ、今後の新たなマーケティングの切り口として「食の楽しさの再評価、つまり家族みんなで食を彩ることが、ニューノーマルになるのではないか」と、小山氏は語っている。

 そして、後半においては、食品業界に関わるものとして理解しておくべき今後の変化として、2つの方向性が考えられることを示した。

 ひとつは、「デジタル化×生活者の価値観のさらなる変化」であり、もうひとつが「業種業態の垣根の溶け込み」だ。それぞれについて、簡単に触れておく。

デジタル化×生活者の価値観のさらなる変化

 まず、「デジタル化×生活者の価値観のさらなる変化」ということだが、新型コロナを機に、産業側のDXへの意識が格段に進む一方で、オンライン会議、在宅勤務の活用により、個人レベルのデジタルへの許容度も上がった。今後は、多様化した消費者の価値観の変化により、さらにデジタル化が加速・浸透していくだろうと述べている。

 こうした変化を象徴する動きが、ECによるグロサリー売上の増大と、フードデリバリーの利用拡大だ。

 デジタル先進国の米国では、EC経由のグロサリーの売上げが2019年には全体の3.4%だったが、新型コロナの影響により5.9%押し上げられ、2020年の見込みでは10%を超えるまでになったという。アンケートにより、なぜ、EC経由でグロサリーを購入するのかを聞いたところ、第1位は「コロナの感染が心配」(62%)、続いて「便利だから」(61%)という結果になった。このことは「コロナを入り口としてECの利便性を実感し、恒常的にECを使うようになった」ということだろう。

 おそらく、日本でも同じようにECが生活に浸透し、定着していくという流れができていくはずだ。

ネットとリアル店舗の違いを意識しなくなる消費者

 フードデリバリーの利用については、とくに利用頻度が増加している。2020年7月の調査だが、「週1回」、「月23回」が顕著に伸びている。ウーバーイーツの利用が増えており、ピザやマクドナルドなどの自社配送サービスの約30%に相当する規模に拡大してきているという。

 また、ネットだから、リアル店舗だからという違いが、生活者からますます意識されにくくなっている。

 これまでのネット購買はその効率性が認識・評価され生活に浸透していった。一方、リアル店舗においては、リアルならではの、直接、触れられる楽しさ、体験の重要性が増してきている。そこに、コロナによって変化、多様化した生活者の価値観が新たに加わり、「デジタル技術活用によるリアル店舗の効率性」や、「ネット購買においても思いがけない商品に出会えるといった楽しさ」も求められるようになってきた。今後は、従来はとくに意識されなかったこの部分への対応も必要になってくるだろう。

外食、中食、内食のハイブリット業態とは

 次に「業種業態間の垣根の溶け込み」についてだが、コロナの影響による外出自粛、公的機関からの営業時間の短縮要請により、外食産業にとって厳しい状況が長引いている。そうしたなかで、外食、内食、中食のいずれにも関わるような、中間的な形態、業態が生まれてきている。

 これまでの外食の概念では、調理、提供場所、消費は、同一が前提だった。ところが、このコロナ禍での、飲食のデリバリーサービスの浸透により、提供形態と調理が、多様化、分離されてきている。外食、中食、内食が、相互に近づき、浸食しあい、その垣根が溶け合っているのだ。

 こうした動きのわかりやすい例が、「日本型のダークキッチン」と、「サブスクリプション型BtoC手作り料理配送サービス」だ。

 日本型のダークキッチンでは、メーンとなる事業者が直営店舗の運営、デリバリー専門のブランドやメニューの開発を行い、契約店舗に3rdパーティ的にダークキッチンとして調理を担ってもらう。顧客はウーバーイーツや出前館などのデリバリー会社経由で注文を入れ、届けてもらう。この発展形として、メーンの事業者は直営店舗をもたないプラットフォーマーとして機能する方式も考えられる。

 次に、サブスクリプション型BtoC手作り料理配送サービスは、メーンの事業者のキッチンに、プロの調理人や栄養士に来てもらい、手作り料理を調理してもらい、顧客の自宅までデリバリー会社の配送サービスで届けるというもの。LINEを生活者接点として利用し、月額課金により定期的に外食品質のプロの料理を提供する仕組みになる。

「共働き世帯に提供している『生協のミールキット』、食品スーパーのデリカ部門などとの競合になるのではないか」(小山氏)

食マーケティング、7つの切り口

 小山氏は、このセミナーを締めくくるにあたり、同社が独自に行った調査(2020年7月、212月に実施)結果から抽出した、今後の食品マーケティングの切り口になるキーワードを以下のように提示した。

「こうした新型コロナの長期化の影響を受けて、生じた生活者の意識の変化、ふつふつと行動にあらわれてきた深い変化は、コロナが収束しても定着していく流れだろう」(小山氏)