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ハレの日から日常へ コロナ禍による内食化を機にワイン需要が堅調に推移

ワイン自宅 イメージ
外出自粛や飲食店の営業短縮といった影響から内食化が進み、家飲みの需要が大きく伸長した。 Kerkez/i-stock

以前は外食やハレの日での飲用イメージが強かったワインだが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け外食から内食への流入が進んだことにより、家でワインを楽しむ人が増えている。さらに需要を拡大していくためには日常的に楽しめるシーンの提案やライトユーザーの取り込みが重要となる。

外食から内食へワインの需要も拡大

 KSP-POSデータによると、2020年2月から21年1月のワインカテゴリーの期間通算金額PIは前年同期比9.8%増の7347円、数量PIは9.8%増の11.05と、金額・数量ともに大きく伸長した。

 ワインのカテゴリーは例年、ボジョレー・ヌーボーの解禁やクリスマス、年末年始といった人の集まる秋冬に需要が高まるが、今期は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出自粛や飲食店の営業短縮といった影響から内食化が進み、家飲みの動きも加速。月別の売上の傾向を見ると、20年2月と3月は前年を割ったものの、4月以降は前年超えが続いており、とくに5月は前年比27.0%増の大幅伸長となった。緊急事態宣言明けの6月以降も、同カテゴリーは堅調に推移している。

 嗜好の多様化に伴いビールや新ジャンルといったビール味の飲料中心だった家庭内のアルコール需要は、飲みやすいRTDやハイボールなど、男女ともに選択の幅を広げてきている。ワインも食の洋食化に伴い伸びてきたカテゴリーであり、流通各社も新店やリニューアル店などでは、ワイン売場の拡張や品揃えの強化、プライベートブランドの開発などに力を入れてきた。

 しかし、この数年はマーケットが停滞しており、日本と欧州連合による経済連携協定(EPA)でEUから輸入されるワインにかかる関税が撤廃され、欧州産ワインの伸びが期待されたが、その際も数字が思ったように伸びなかったという。

 新型コロナウイルス流行後の新しい生活様式により、自宅で過ごす時間が増えた今、ワインは外食からの流入に加え、「いつもと違うお酒を飲んでみたい」というライトユーザーを取り込み、復調の兆しを見せている。

ハレの日から日常使いへ ワインの飲用シーンをひろげる

 ワインのメーンユーザーは50・60代といわれているが、今後マーケットを拡大していくためには、若年層やライトユーザーを取り込んでいく必要がある。

 アサヒビールの輸入スティルワイン売上No.1ブランド「サンタ・ヘレナ・アルパカ」では、より気軽な気持ちでワインを楽しんでもらいたいという思いから『うちの夕食がディナーになる、アルパカ』をキーメッセージとした情緒的価値を訴求するマーケティングを強化。新しい顧客を獲得し間口を広げたほか、大容量の「バッグインボックス」タイプの商品を投入することで、既存ユーザーの奥行きも広がっている。

 ワインは食事と合わせやすいアルコールのひとつであり、テレワークの推進などにより家で過ごす時間が増えたことで、ワインを楽しむ機会は着実に増えている。

 これまでのクロスMDではステーキなど、ハレの日のメニューとともに訴求されることが多かったが、日常のメニューでも楽しめる飲料として、定番の総菜コーナーや冷凍食品などとの組み合わせも有効だろう。

 気軽なイメージを打ち出すことで「ワインは難しい」と考え手に取ることを躊躇している若年層やライトユーザーのトライアルを促進し、市場の再活性化を図っていきたい。

絶好調のチリワイン「サンタ・ヘレナ・アルパカ」(アサヒビール)、バッグインボックス商品を拡充

気軽に楽しめるデイリーワインとして好調に推移するアサヒビールのチリワインブランド「サンタ・ヘレナ・アルパカ」。コロナ禍で家庭用のワイン需要が高まる中、「うちの夕食がディナーになる」をコンセプトに、情緒的価値を訴求するプロモーションでワインのある楽しい生活を提案する。

輸入ワイン売上容量No.1
20年は過去最高売上金額を達成

 アサヒビールの「サンタ・ヘレナ・アルパカ」(以下、「アルパカ」)は、輸入ワイン売上容量No.1のチリワインブランドだ。スティルワインの「シラー」「ピノ・ノワール」「カベルネ・メルロー」「カルメネール」「シャルドネ・セミヨン」「ソーヴィニヨン・ブラン」「ロゼ」に加え、スパークリングワイン2種、スペシャルブレンド2種、プレミアム3種、オーガニック2種をラインアップしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、家飲み需要が高まる中、2020年の家庭用のワイン市場(輸入・国産計)は容量ベースで前年比102%と微増となった。一方、「アルパカ」ブランドは、同社出荷実績で前年比109%と市場を大幅に上回る数字で推移。販売金額ベースでは12年の新発売以降、過去最高売上を達成した。

 家庭用ワインのカテゴリーはこの数年、微減傾向にあり、市場がシュリンクしている。

 アサヒビールは15年あたりから、市場環境に危機感を持っており、日欧EPAによる関税撤廃以降もダウントレンドに歯止めがかかっていないことから、消費者にワインの価値が正しく伝わっていないと分析。さまざまな調査を通じワインに対し、「敷居が高くて難しそう」、「ボトル1本飲み切れなくて不安」「飲むのに時間がかかる」といったネガティブなイメージを抱える一方、「おいしそう」「ぜいたくな気分になる」といったポジティブなイメージを持っていることがわかった。

 これらの結果から「アルパカ」ブランドでは、19年後半から、「いつもの家の食事でもワインがあることで、なんとなく雰囲気のよい食卓が実現できそう」という情緒的なベネフィットを訴求するマーケティングへとシフト。この施策が多くの消費者に刺さったことに加え、コロナ禍での家飲み需要増加が後押しをし、「アルパカ」ブランドの好調につながっている。

新商品はBIBの<カルメネール>

 今期は新商品として「バッグインボックス・3L」(以下、BIB)<カルメネール>を3月23日に発売する。

 アサヒビールは昨年10月、ブランド初のBIBとして<カベルネ・メルロー><シャルドネ・セミヨン>を発売し好評を得ており、アイテムを拡充することで新たな楽しみを提案する。パッケージは、「アルパカ」のアイコンはそのままに、木目調のデザインを採用し、キッチンなどに置いても雰囲気を壊さないナチュラルなデザインに仕上げている。

 コロナ禍では購買行動にも変化が生じ、外出自粛による買物回数の減少、まとめ買いやEC利用の増加といった傾向がみられる。とくにECの場合、買い物時の重さを考慮せずにすむことからBIBは時代に合った商品といえるだろう。

 アサヒビールでは20年より、『うちの夕食がディナーになる、アルパカ』をキーメッセージとして、店頭やWEB、雑誌等での情報発信を強化しており、21年も引き続き、幅広い世代に日常的にワインを楽しんでもらうための施策を強化していく。

 コロナ禍以降、家庭用ワインは既存ユーザーの飲酒量が増えたことに加えて、テレワーク等の推進により今まで時間が取れずゆっくりとワインを楽しむ時間のなかった共働き世代の新規ユーザーも流入してきている。

 同社では今後も、「アルパカ」ブランドを通じて、ワインのあるちょっと楽しい日常を提案することで、カテゴリーの拡大に貢献していきたいとしている。