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内食需要の高まりでシチューが食卓出現率を上げる!ライフスタイルの変化に合ったシチューの魅力とは!?

カテゴリーフォーカス

シチューは秋冬期の煮込み料理の定番となっているが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い内食需要が高まるなか、春先でもシチューをつくる家庭が増加。短時間調理が可能なルウも増えていることから、あらためてルウシチューの魅力を提案する時期に来ている。

コロナ禍の影響を受け3~7月も好調に推移

 KSP-POSによると、2019年10月から20年9月のルウシチューカテゴリーの期間通算金額PIは前年同期比4.3%増の1514円、数量PIは3.0%増の8.1と、金額、数量ともに前年を上回った。

 月別の推移をみると消費税の増税により、多くのカテゴリーで前年を下回った19年10月も前年並みをキープ、その後も年内は前年並みから微増を保っている。

 20年に入り1、2月は前年を下回ったが、3月に入ると新型コロナウイルスの感染拡大に伴い内食需要が高まったことに加えて、外出自粛により、一度の買物でまとめ買いをする生活者が増えたことで、数字が一気に跳ねあがった。とくに4月は前年比35%増、5月も28%増の大幅増となっており、その影響力のほどが分かるだろう。

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 7月までは前年を上回っていた同カテゴリ―だが、8月は気温が高かったことに加え、例年であれば秋冬新商品が発表される時期であるのに対し、今年は新型コロナウイルスの影響でその時期がずれ込んだことも影響し、前年を大きく割り込む結果となった。

 9月も中旬を過ぎると、徐々に天候も落ち着いて例年並みの気温となり、シチューの店頭展開が本格化したことで、ルウシチューが来店客の目に留まる機会も増え、前年並みの数字に戻ってきている。

 ルウシチューは同じルウ商品のルウカレーと比較して比較的季節性のあるカテゴリーであり、最も需要が高くなる11・12月と最も低くなる7・8月では、金額PIの値に4倍近い差がある。

 また、ルウシチューは、気温の変化や天候等の影響を非常に受けやすいカテゴリーでもある。

 近年は同カテゴリーの立ち上がりとなる8月後半から9月にかけて、気温30度以上の日が長々と続くことが多い。気温が高いとシチューの喫食率は下がる傾向にあり、こういった状況が毎年のように繰り返されていることが、ルウシチューのマーケットをより厳しいものにしている。

 しかし、今回調査した期間については、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、学校の休校やテレワークの推進、外出自粛など、生活者のライフスタイルが大きく変化した。

 とくに緊急事態宣言が解除されるまでの間、外出自粛に伴って内食需要もいっそう高まり、家族そろって家で食事をする機会も増えた。これに合わせてシチューも秋冬の季節限定メニューでなく、年間を通した定番料理のひとつとして、少しずつ生活者の中に浸透してきたと推察される。

時短やフライパン調理など簡便性を訴求し需要を拡大

 ルウシチューはハウス食品の「北海道シチュー」シリーズや、発売10年目を迎えたエスビー食品の「濃いシチュー」シリーズといった、誰もが知るロングセラーブランドが市場を支えている。

 このカテゴリーは長年ホワイトシチューとビーフシチューをメーンとし、各ブランドが商品のクオリティを進化させることで売場を盛り上げてきた。

 しかし最近では、パンや野菜につけて楽しめるフォンデュタイプのハウス食品「北海道フォンデュシチュー」、スイス産ラクレットチーズを増量することで、より濃厚でクセになる味わいに仕上げたエスビー食品「濃いシチュー〈ラクレットチーズ〉」のように、チーズの味わいを軸にした新しいタイプのルウシチュー商品も発売されている。

 近年は少子高齢化による世帯人数の減少に加えて、有職女性の増加に伴い、仕込みに手間のかかる煮込み料理を敬遠するユーザーが増えている。

 とくに2~3人の少人数世帯にとっては、ルウシチューをひと箱分使って作ろうとすると、できあがった際の量が多すぎるため、半箱分ずつ2回に分けて使用するユーザーが多い。この状況を踏まえ、メーカーはパッケージ裏面の作り方について、半箱分の分量で記載する商品が増えてきている。

トレンドはシチューによるワンプレートメニュー

 また、新たなトレンドとして注目されるのが、カフェのメニューのようなワンディッシュプレート提案だ。カレーライスのように、シチューを白飯にかけて食べるユーザーに向けた商品の品ぞろえも充実してきている。

 たとえば「ごはんに合うシチュー」をコンセプトとしたハウス食品「シチューオンライス」は、濃厚なうまみとしっかりとしたとろみが特徴のシチューライス専用ソース。エスビー食品の「とろっとワンプレート」シリーズは、煮込み時間10分以内でご飯に合うメニューが作れる時短・煮込みシリーズとなっており、新たな需要を創出するシチューの進化系としてチェックしておきたい。

 秋冬期の煮込み料理の定番であるシチューは、これまで調理時間の長さが最大のネックとされてきた。

 しかし、メーカー各社はフライパン調理による簡便・時短を訴求する商品を次々と開発しており、「シチューは手間のかかるメニュー」という生活者の意識を根本から変えていく必要があるだろう。

 とくにご飯に合うワンディッシュメニューは秋冬以外の季節でも提案しやすく、時期を限定せず、時短メニューのひとつとして通年で展開していくことが望ましい。

 ルウシチューは、野菜や肉類など生鮮品との相性もよく、買上点数の向上につながる商品として、加工食品売場にとってなくてはならないカテゴリーのひとつだ。

 コロナ禍により家族と一緒に家で食事をする機会が増えたことから、シチューの食卓出現率も増加。以前と比べ、より手軽につくれるようになったシチューメニューの価値をあらためて伝えることで、新たなユーザーを獲得し、需要の拡大も見込めるだろう。

 店頭でも時短レシピの紹介や生鮮売場での関連販売など、生活者の気付きとなるプロモーションを仕掛けることで、シチューカテゴリー全体の活性化につなげていきたい。

ハウス食品、時短メニューや新しい楽しみ方を提案しシチューの喫食回数を増やす

「北海道シチュー」をはじめ「コクの贅沢シチュー」「ビストロシェフ」など数々のルウシチューを持つハウス食品。今期は「北海道フォンデュシチュー」のほか、手軽につくりやすい「シチューオンライス」の簡便・時短提案により、シチューメニューの食卓出現率向上をねらう。

さまざまな具材をつけて楽しむ「北海道フォンデュシチュー」

 ハウス食品ではルウシチュー市場のシェアNo.1ブランド「北海道シチュー」をはじめ、「シチューミクス」や「コクの贅沢シチュー」、「ビストロシェフ」「シチュー・ド・ボー」といったルウシチューブランドを多数展開している。

 近年、シーズン立ち上がりにあたる秋口の気温が高いこともあり、シチューカテゴリーには厳しい状況が続いているが、ハウス食品ではコミュニケーションの変更や、新たなメニュー提案により、家庭で作るシチューの魅力を訴求している。

 今期、販促を強化していくのは「北海道フォンデュシチュー」と「シチューオンライス」の2品だ。「北海道フォンデュシチュー」は、北海道産生乳100%の3種のナチュラルチーズの濃厚なおいしさが特徴のルウシチュー。同品は9月に商品のフレッシュアップを実施し、具材の絡みやすさはそのままに、よりすっきりとした口どけが感じられる味わいを実現した。また風味も改良し、よりチーズのうまみを感じられる味わいに仕上げている。

 今回は「北海道シチュー」ブランドのイメージキャラクターを務める松坂桃李さんによる、「北海道フォンデュシチュー」単独のCMを展開。松坂さんが「北海道フォンデュシチュー」を体験するドキュメンタリー風の内容で、パンや野菜など、さまざまな具材をつけて食べる今までのクリームシチューにはない楽しみ方を訴求した。

 このフレッシュアップに合わせ、同社ではTwitterキャンペーン「つけ具ランプリ」を実施。「北海道フォンデュシチュー」に合いそうなおすすめの具材が投稿され、盛り上がりを見せた。また「あなたなら、なにつける?」をキーワードに、シズル感のある販促ツール類も多数用意されている。

フライパンで簡単調理「シチューオンライス」

 もう一方の「シチューオンライス」は、濃厚なうまみとしっかりとしたとろみが特徴のシチューライス専用ソースだ。「ごはんに合うシチュー」をコンセプトとしており、ご飯にかけるだけで食べごたえのあるワンディッシュメニューが簡単にできる。

 同品は時短で簡単につくれることを訴求するため水の量を調整するなどで、基本のつくり方をこれまでの「鍋調理」から「フライパンかつ半箱調理」に変更。フライパンでつくれるということを強く訴求するアイコンをパッケージ表面に記載している。

 フライパンでつくれるルウ製品の価値訴求については、実演販売士のレジェンド松下さんを起用し、「シチューオンライス」や「完熟トマトのハヤシライスソース」「ごちレピライス」などの作り方を動画で紹介。また、冷凍王子で親しまれる西川剛史氏によるシチューの冷凍保存の仕方も紹介していく。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、テレワークや時短勤務が日常化するなか、家族そろって食事をとる機会も増えている。また、家で食事をする機会が増えたことで毎日の献立に悩んでいる主婦層も多い。ハウス食品ではフライパン一つで簡単につくれるメニューや、家族みんなで楽しめるフォンデュシチューなどの提案を通じ、季節にとらわれないシチューの食卓出現率向上をめざしていきたいとしている。

エスビー食品、生活の変化に対応した食シーンの提案で喫食機会の拡大を図る

緩やかなダウントレンドが続く即席シチュー市場だが、昨年のエスビー食品のシチューは、新商品の投入やプロモーションの展開で好調に推移した。今年も発売10年目を迎えた「濃いシチュー」を中心に食シーンの提案で喫食頻度アップを図っていく。

「濃いシチュー」は昨シーズン、過去最高のシェアを獲得

 素材の濃さと上質で濃厚な味わいの「濃いシチュー」シリーズ。昨年は暖冬の影響で市場は縮小したが、「濃いシチュー」は、テレビCMの投下や休日と平日それぞれの食シーン提案などにより、過去最高のシェアを更新した。とくにホットプレート提案は〈ラクレットチーズ〉〈きのこバター〉で高い利用率となり、ルウシチューの利用場面の拡大につながった。

 この秋は、味わいをブラッシュアップ。〈クリーム〉は生クリームのおいしさを底上げし、〈ビーフ〉は香味野菜の量をアップ、〈ラクレットチーズ〉はスイス産ラクレットチーズを増量することでより濃厚でクセになる味わいに仕上げた。

 また、食シーンの提案をさらに強化。10種類のスタイルに合わせたレシピを用意したうえ、「究極のレシピ」で特別なシーンにも対応する。商品裏面で提案しブランドサイトで詳細な情報を発信していく。その他、11月には継続起用している俳優の西島秀俊さんと伊藤淳史さん出演のテレビCMを投下する。

 さらにこの秋は幅広い世代の女性に支持される料理家の栗原はるみさんプロデュースの化学調味料無添加で素材の味わいを最大限にひきたてた「栗原はるみのクリームシチュー」を新発売。鶏がらをベースに丸鶏やもみじ、香味野菜をじっくり煮込み、旨みが凝縮された栗原さんの自家製チキンブイヨンを再現し使用。そこに国産バターのコクと風味が豊かでなめらかなホワイトソースを合わせた。

 クリーム感にこだわった新タイプのパウダーシチュールウはさっと溶け、汎用性も高いため固形ルウに対する不満にも対応。4皿分×2袋入りとなっており、アレンジの幅も広がる商品仕様となっている。パスタ、スープなど栗原さんおすすめのアレンジレシピをパッケージ裏面のほか、ブランドサイトでも紹介。リーフレットでも提案していく。

時短・簡便調理ニーズに対応「とろっとワンプレート」

 時差出勤やテレワークが定着し、手づくりでの時短ニーズはさらに高まっている。そこで同社では時短・煮込みメニューとして提案している「とろっとワンプレート ドリアミート」をこの秋にリフレッシュ。デミグラスソースと焦がしチーズを合わせた濃厚ソースの〈ドリアミート〉は、焦がしチーズのおいしさをアップした。

 また、濃厚なトマトクリームソースにスパイスを程よく効かせクリーミーな味わいに仕上げた〈クリーミーバターチキン〉を新発売。バターチキンカレーは子育て世帯でも家庭での喫食意向は高いため、新商品の投入で新たな需要拡大が期待できる。

 身近な素材2品、煮込み時間10分以下で手軽にでき、家族みんなで楽しめる魅力的なメニューで、購買を促進する。裏面やブランドサイトではバランスのよいワンプレートでの食べ方・アレンジ提案を行っていく。

 生活の変化や多様なニーズに対応したレシピ提案で、喫食機会の拡大を図り、シチュー市場の活性化を図っていく考えだ。