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“売れる”POPを簡単に作れる!自社の商品を「ニュース」にするための言葉5カ条

こんにちは。コピーライターの川上徹也です。この連載では「店舗の皆さんが、チラシ・POP・メニューなどでどのような言葉やストーリーを書けば売り上げに繋がるか」の理論について、実例を交えつつ紹介しています。今回は「こんな今だからニュースを売る」という手法をお伝えします。

getty/primeimages

 先日おもしろいニュースを見ました。 香川県のバス会社、琴平バスが実施している「おうちでオンラインバスツアー」です。

 ひと言で言うと「Zoomを通じた仮想バス旅行」なのですが、これがなかなか楽しそう。ツアー内ではバスガイドが参加者と「自己紹介」や「クイズ」などでコミュニケーションをとります。もちろん途中の風景等もバーチャルで楽しめます。

 目的地に着くと、現地ガイドがライブ中継を行い、動画とリアルタイムの解説によって、観光地にいるような臨場感を演出してくれます。特に秀逸な仕組みだと思ったのは、参加者に事前に「旅のしおり」や「旅先の食べ物やお酒」などがクール宅配便で送られてくること。これによって、一緒に食事タイムも演出できますし、ツアー料金の単価を上げることも可能になります。また現地の食品会社などを応援するとこともできます。

 このような新しいサービスはニュースとして注目を集めます。テレビ、新聞、ネットなどのメディアで取り上げられるとより多くの人に知ってもらうことができます。今の時期であれば、「おうちでオンラインバスツアー」のように、リアルでしかできないと思われていたことをオンラインでサービスすると、メディアに取り上げてもらえる可能性は高くなります。

 自分たちの業種とは違うから関係ないと考えるのではなく、あなたの店でも何かニュースになるようなサービスを考えてみてはどうでしょう?

ニュースを伝えやすい言葉には法則がある

 人はニュースが大好きです。ニュースとは英語のnewから派生した言葉で、要は「新しい情報」です。新しい情報はそれだけで価値があり、人を引きつけます。なぜなら人間の脳には、新しい情報を快感と受け取る性質があるからです。もちろん、人によって、その感受性にきな差はありますが。

 チラシ・POPなどにキャッチコピーを書く時にも、ニュースであることがわかる言葉を入れることは「売り」につながります。たとえば以下のような言葉を組み合わせて使ってみましょう。ニュースであることが伝わりやすくなります。

①「初」「新」などの要素を入れる
「日本初」「世界初」などの「初めて」を表現する言葉や、「新発売」「新登場」「新食感」「新常識」など「新」がつく言葉は、それだけでニュースになります。

(例)
「日本初!スイーツの常識が変わります」
「この口どけ、新食感」

②年月日時曜日などの要素を入れる
具体的な日時や曜日が入っていると、新しさを感じてニュースになりやすくなります。

(例)
「コロナ対策セールは6月30日まで」
「金曜日はビーフシチューの日」

③多くの人が待ち望んでいたというニュアンスを入れる
「ついに」「とうとう」「いよいよ」「待ちに待った」などの言葉が入ると、多くの人が待ち望んでいた印象が生まれるので、ニュースだと感じてもらいやすくなります。

(例)
「ついに登場!免疫力アップの秘密兵器」
「待ちに待ったゴールドカラーの発売です」

④世間で話題になっているニュアンスを入れる
「あの」「話題の」「注目の」「期待の」「噂の」「好評につき」「おなじみ」「再入荷」「一番売れた」などの言葉が入ると、世間で話題になっていたり売れている印象が生まれるので、ニュースだと感じてもらいやすくなります。

(例)
「今、話題の夏マスク入荷しました」
「好評につき エスニック味 再入荷!」

⑤初めて世の中に伝える情報だというニュアンスを入れる
「発表」「公開」「宣言」「告白」「解禁」などの言葉が入ると、初めて世の中に伝える情報だと信じて、ニュースだと思いやすくなります。

(例)
「発表 この春、一番売れた化粧品」
「告白 私、こんなおいしいアイス 初めてです」

弱点もニュースになる

 新商品でなくても、消費者の価値観を変えるニュースをつくることはできます。アメリカの老舗食品メーカーのハインツ社の例をみてみましょう。ハインツのトマトケチャップの歴史は古く、第二次世界大戦までは圧倒的なシェアを誇っていましました。

 戦後、ファストフードの普及によりケチャップの需要は大幅に伸びます。そんな中、1960年代になると同じケチャップを扱うライバル、デルモンテやハンツなどが追い上げ、ハインツのシェアは急落しました。

 当時のケチャップは瓶づめです。ハインツのケチャップは水分が少なかったので、なかなか出てこないという欠点がありました。ビンを逆さまにして底をたたく必要があったのです。

 それに比べると、他社のケチャップは水分が多いので簡単に出てきます。使用者のストレスは大きく違いました。他社はハインツの弱点をついてきたのです。

 これに対抗するには、ケチャップの成分を出てきやすい液状に変えるしかありません。しかしそれではハインツらしさがなくなる。ハインツはその戦略をとりませんでした。弱点をニュースにしたキャッチコピーで世の中の価値観を大きく変えたのです。

それは

ハインツのケチャップは、
おいしさが濃いからビンからなかなか出てこない。

というフレーズでした。

 そのキャッチコピーを元にいくつものCMや雑誌広告が作成されました。たとえば、ケチャップレースというテレビCM。ライバル他社のケチャップとビンを逆さまにしてどちらが早く出るかのレースをし、それをアナウンサーが実況するというものです。当然、ライバル社の方が早くビンから全部出ます。ハインツの負けです。でもそれは「ハインツはおいしさが濃い」から負けたと実況するのです。

 この1行と視覚的に印象深いさまざまな広告によって、それまでケチャップがなかなか出てこないことにイライラしていた利用者は、「それはおいしさが濃いからだ」という認識に変わったのです。最大の弱点と思われたものが最大の魅力になったのですね。ハインツはこの1行によってシェアを急速に取り戻しました。

 このように弱点と思われることでも、言葉の力で、最大のセールスポイントにしてニュースにすることは可能なのです。あなたの扱っている商品でもぜひ考えてみてください。

 

・プロフィール

川上徹也(コピーライター 湘南ストーリーブランディング研究所代表) 

大阪大学人間科学部卒業後、大手広告会社勤務を経て独立。東京コピーライターズクラブ新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞など受賞歴多数。中でも、企業や団体の「理念」を1行に凝縮し旗印として掲げる「川上コピー」が得意分野。「物語」の持つ力をマーケティングに取り入れた「ストーリーブランディング」という独自の手法を開発した。
著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』『コト消費の嘘』(角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)『売れないものを売る方法? そんなものが本当にあるなら教えてください』(SB新書) など59万部突破。海外にも多数翻訳されている。