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「知恵」と「商品」の共同仕入れに本腰! 新たな成長フェーズに入ったAJS・コプロ

6月12日、オール日本スーパーマーケット協会(大阪府/田尻一会長:以下、AJS)の第63期定期総会とコプロ(大阪府/田尻一社長)の第35期定時株主総会が東京ドームホテルで開かれた。2025年度を初年度とする第8次中期事業計画が採択され、「主役の会員企業が輝ける舞台をサポートしながら共に創る」の共通テーマのもと、AJS・コプロは新たなステージに向かって歩み出した。

会員区分や会員資格など5つの会則の変更を実施

AJSの田尻一会長
AJSの田尻一会長

 この会合では新たにいくつかの決議があった。注目はAJSにおける「会則の変更」だ。見直しのポイントは主に5点ある。

 ➀協会目的に、「スーパーマーケット業界の発展に寄与する」を追加する
 協会事業に、「業界の利益、発展に必要な見解の発表」「内外諸機関との連絡、協調、協議」を追加する

 上記により、従来は、AJS内部での活動が主軸だったものが、SM業界の主要団体として行政や流通業界などへの発信を強化していくことが見込まれる。

 また、➂会員区分を変更している。これまで正会員Aと正会員B(教育事業のみを活用)、オブザーバー、賛助会員と4区分あったものを正会員(現正会員A)と賛助会員という2区分に整理した。正会員Bは14年に「知恵の共同仕入れ」の強化と充実、条件緩和による新規加盟への門戸拡大を目的として新設されたが今回、オブザーバーとともに廃止された。

 さらに、会員資格として④「他グループ(他ボランタリー)への所属は不問」に変更した。既存会員の反対がないことを前提としつつも、会員がコプロ商品と他の流通などグループから調達した商品を店頭で併売することを承認した。一方では「商品事業(コプロが提供する商品、用度品の取り扱い)への協力は必須」という決まりを加えた。この変更について田尻会長は、「たぶん複数の団体の商品が併売されることはないだろう。当社がよくても、相手先が許さないという場合もあるからだ」と見解を示している。

 そして⑤海外正会員については個別に入会条件を緩和する旨を追加した。

香港のDFIリテールグループが新規加盟 

海外勢では3社目の新規加盟となったDFIの店舗

 この会則見直しから見えてくるのは、AJSの規模拡大とコプロ商品事業のさらなる強化への意欲である。

 25年6月現在、AJSとコプロの会員規模は、正会員61社(対前年比1社増)、賛助会員366社、総店舗数4450店舗(同356店舗増)、総年商は3兆7323億円(同3718億円増)になった。

 また今回の総会では、香港を拠点にするDFI Retail Group(以下、DFI)の入会が新たに認められた。海外企業の加入は全聯實業(台湾)、VinCommerce (ベトナム)に次いで3社目となる。

 DFIは、世界初の株式会社として知られる東インド会社の流れを汲む歴史的企業。香港以外にもカンボジア、ベトナム、シンガポール、インドネシアなどでも事業を展開し、年商は約4712億円(31億米ドル)に上る。1990年代中盤には西友と合弁会社をつくり、日本市場への参入を果たしたこともあった(後に撤退)。現在はJardine Matheson Group の一員で関連会社及び合弁会社を含め、「ヘルス&ビューティ」「コンビニエンス」「フード」「ホームファニシング」「レストラン」の5領域で事業展開している。AJSがサービスを提供するのはこのうち香港における「フード」部門だ。

 香港の「フード」部門は、「Wellcome」「Market Place」「3hreesixty」「Oliver’s」などの店舗ブランドで320超の店舗を展開しており、今秋9月頃からAJSグループのプライベートブランド(PB)である「くらし良好」の販売を開始する。「DFIの幹部が台湾を視察した際に、会員である全聯實業の店頭にあった『くらし良好』を見て、『これは何だ?』と興味を持ってくれたことが加入のきっかけになった」(田尻氏)。

 「知恵の共同仕入れ」をメーンに活動を続けてきたAJSではあるが、食品スーパー業界を取り巻く環境は依然厳しい。同業者との鮮度や価格競争、ディスカウントストア、ドラッグストアやECを含めたボーダレス競争の中でしっかり成長を重ね、利益を獲得するためにはPBの強化「≒商品の共同仕入れ」は加入企業にとっても必至の課題だ。

 先述の「商品事業(コプロが提供する商品、用度品の取り扱い)への協力は必須」は、そんな危機意識も作用して織り込まれたものとみられる。

コプロでは物流と物量の最大化に本腰

「くらし良好」は全ラインアップの取引条件の見直しを進める

 さて、コプロの第35期の決算概要は、売上高629億円(対前期比2.6%増)と13期連続の増収。営業利益は3億4200万円(同16.7%増)と過去最高益を計上している。第36期の売上高は同2.1%増の642億円を目標にする。

 部門別売上は「食品」188億円(同0.6%増)、「菓子」51億円(同2.3%増)、「雑貨」27億円(同0.6%減)、「日配」95億円(同1.7%減)、「生鮮」93億円(同4.4%減)、「惣菜」11億円(同4.7%増)、米30億円(同58.6%増)、「用度」133億円(同6.7%増)と元気な数字が並んでいるが、AJSの4兆円に迫らんとする総年商との比較で言えば、まだまだ伸びる余地は大きいと言える。

 そんなコプロの商品事業が第8次中期事業計画で打ち出しているのは、ひとつに物流体制の整備だ。「キャパオーバーと老朽化が進んでいる関西の既存の物流センターは大阪、神戸辺りに移設したい。現在、物件を探している」と田尻会長は明かす。

 加えて、九州エリアと東北エリアにはデポを設置する計画だ。また、これまで開発が遅れ気味だった冷凍食品の拡充と冷凍センターの設置を同時並行で進める。

 2つめは、物量の最大化だ。従来、「くらし良好」は、ある程度の量を販売する前提で取引条件を決めていた。しかし、それ以上となる規模拡大にともない、全ラインアップの取引条件の再度見直しを図る。

 また、「くらし良好」の中で会員企業が「みんなで売る!と決めた商品」については継続的に強化する。ちなみに24年度の「みんなで売る!と決めた商品」は81品、平均取扱率は71.3%で全品を取り扱った企業は9社だった。さらにはコストダウンにつながるさまざまな事象や人材の開発を進めていく――。

 AJS・コプロは「知恵の共同仕入れ」のみならず、「商品の共同仕入れ」でもさらにパワーアップを図られる体制を着々と整備している。

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