メニュー

【ホームセンターバイヤーが選ぶ年間ヒット商品2020】DIY:パワーツール部門

DIY パワーツール部門

~「マルチボルト」シリーズ 工機ホールディングス~
次世代型コードレス工具シリーズ最小・最軽量で36Vと18V の切り替えを自動対応

18年に新社名と新ブランドでスタート

「DIY パワーツール」部門で、票を集めたのが工機ホールディングスの36Vリチウムイオン蓄電池「マルチボルト」を搭載した次世代型コードレス工具シリーズだ。

同シリーズが発売されたのは、2017年8月。工機ホールディングスの前身日立工機のときだ。当時発売された工具は、丸のこ、インパクトドライバーなど5機種だった。

同社は18年6月に工機ホールディングスに社名を変更。同年10月には電動・エア工具に新ブランド「HiKOKI」(ハイコーキ)を冠して新たなスタートを切った。その間「マルチボルト」シリーズの機種を次々と発売し、現在36Vシリーズのラインアップを39モデルにまで拡充している。

新発売のタイミングでは、今年のヒット商品の対象から外れるが、18年の夏以降に新社名、新ブランドでスタートを切ったこと、ラインアップを広げてきたことから、今回の受賞となった。

同シリーズの最大の特徴は、1kWクラスの高出力を可能にしたことと、同社の18Vリチウムイオン蓄電池と同じ軽量・コンパクトサイズにしたことだ。さらに「マルチボルト蓄電池」は、18Vと36Vの互換性があり、電動工具本体に装着するだけで自動的に電圧を切り替える新技術(特許出願中)を導入した。現在、18Vのコードレス工具は75モデル発売されており、「マルチボルト」の蓄電池があれば、114機種の工具を使用できることから、プロのユーザーから高い支持を獲得した。

軽量・コンパクト設計で高出力、互換性の高さが評価

「マルチボルト」シリーズの評価

「ブランド力」「新規機能性」「売場提案(販促)」「メーカーの広告力」で最高評価の「5」となった。

「ブランド力」では、前身の日立ブランドの信頼性が継続していることがうかがえる。加えて、工機ホールディングスへの社名変更と、「HiKOKI」の新ブランドの認知度を高める数々の施策が評価につながっている。

「新規機能性」は、軽量・コンパクトな設計で高出力を実現したことと、36Vと18Vの両タイプの工具での装着を可能にしたことが評価された。ユーザーにとって、工具の取り回しが向上したことは、作業現場での効率、安全にもつながっている。

ユーザーと「マルチボルト」との接点を増やすために、店頭で実際に使ってもらう販促(タッチ&トライ)を展開し、製品の理解促進を図った。新社名と新ブランドの立ち上げと同時に、認知度を高めるためにPOPを大量投入してパワーツール全体の底上げを図った。また、ラジオCMをはじめとする広告展開を積極的に行い、SNSや販促ビデオをネット上にアップするなどデジタル配信も強化したことが、ブランドの認知度アップにつながった。

30年以上の自社独自の蓄電池技術「マルチボルト」の技術が数々の賞を受賞

パワーツール業界におけるコードレスタイプの比率は、需要の高まりと蓄電池の性能アップがあいまって、この数年高まっており、現在約4割である(全世界ベース)。工機ホールディングスによると、2年後の2022年にはこの比率が約5割に達する勢いだ。

これまでパワーツールは製品の電圧が異なれば、蓄電池も同じ電圧のものを用意しなければならなかった。

そこに風穴を開けたのが、同社の「マルチボルト」である。

当初は、取り回しのよい、小型、軽量、かつ高出力をめざし、36Vタイプに対応する蓄電池の開発を視野に入れていた。しかし当時、プロが使用するパワーツールは18Vが主流だった。そこで、同じ蓄電池で36Vと18Vタイプの異なる機器でも対応できる蓄電池を開発した。それを実現できたのは、同社が30年以上にわたり、一貫して蓄電池の開発を自社で行い、技術ノウハウの蓄積を培ってきたからだ。

高出力セルの採用で、1kWクラスのパワフルな出力を実現。さらに、業界唯一となる電池保証(購入から2年間または充電回数1500回まで保証)も付けた。

「マルチボルト」は、各方面からも高い評価を得ており、モノづくり日本会議と日刊工業新聞社が主催する「“超”モノづくり部品大賞(18年)」の電気・ 電子部品賞を受賞。他にも、「第66回電気科学技術奨励賞(18年)」を受賞したり、発明協会が主催する「令和元年度関東地方発明表彰(19年)」において、「電池パック保証システム」特許が「茨城県知事賞」を受賞している。

社名とブランド刷新の告知と、電圧の異なるタイプにも対応する機能を訴求したトップボード

メーカー(担当者) のコメント
ワンチームで市場の拡大を図るさらに出力の高い製品開発も

左から、井岡慎治氏、仲野義博氏、筒井英樹氏

「お客さまは何を求めているのか」をテーマに、工機ホールディングスは「開発、マーケティング、営業がワンチームとなって」市場拡大に取り組んでいる。研究開発本部・第二設計部長の仲野義博氏は「お客さまはパワー、取り回し、耐久性、精度の4つを求めています。将来的にはパワーツールすべてがコードレスになると考えています。マルチボルトは1kW。今後はさらに電力の高い製品にも対応できる蓄電池開発を進めていくことが目標です」と、マルチボルトの先を視野に入れた目標を語っている。

プロダクトマネジメント室Japan PM部長の井岡慎治氏は、グローバルベースでの製品ポートフォリオの最適化を実現し、製品競争⼒の増強と顧客ニーズにマッチした製品の企画開発を追求するために、プロダクトマネジメント室を18年8月に立ち上げたことに触れて「多種多様なシーンで使用されるパワーツールが、今後どう求められていくのかを市場調査し、それを開発や営業にフィードバックしていきたいと思います」と語る。

日本事業統括本部・HC推進部・HC企画チームリーダーの筒井英樹氏は、「プロの職人さんが、購入チャネルとしてHCを選択する機会が加速しています。新しい需要をキャッチし、現場との接点を持つホームセンター(HC)さまと協力しながら、店頭で製品を確認する機会を望むプロの職人さんを取り込んで、市場拡大に向けて尽力していきたい」と、HCとのワンチームの取り組みの大切さも語っている。

ホームセンターバイヤーが選ぶ年間ヒット商品2020一覧