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イオン、防災用品をお盆前に拡充 広がる「備えない防災」商品とは?

イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は8月から9月末までの期間、本州・四国の「イオン」、「イオンスタイル」約300店舗に、防災関連商品の品揃えを拡大する。一部店舗では、防災用品、ローリングストック商品を催事場で展開するという。イオンリテールが提案する、近年の防災意識の高まりに対応する商品とはどのようなものなのか。

防災用品の売場、東京都板橋区のイオンスタイル板橋(東京都板橋区)

増える災害、高まる防災意識

 イオンリテールの住居余暇本部ホームコーディ商品部の今田哲弘氏は「今年の4月は、防災用品の売上高が前年同月比の2.5倍になるなど、ゴールデンウイーク連休前に多くの買い求めがあった」と話す。

 近年は自然災害が多発しており、とくに24年1月の「令和6年能登半島地震」の発生以来、消費者の防災意識は大きくな変化しを迎えている。同地震の際は大規模な停電や断水が発生し、年末年始の帰省中ということもあって多数の被災者が出た。各家庭では防災食の備蓄や非常用トイレが不足するなどの混乱が続き、その様子が各メディアによって全国的に報道された。このような災害の事例から学んだ人々が、ゴールデンウイークの帰省前に家庭内の防災備品を見直したために、連休前に防災関連商品の需要が高まったのではないかと同社は推察している。

 これらの理由からイオンリテールは、例年はお盆の後から9月に向けて開始する防災用品の販売を前倒しし、8月からスタートした。売場規模は例年の1.5倍、取扱品目数は昨年の60品から86品に拡充し、売上目標は対前年度比120%に設定した。
売れ行きのよい「災害時の緊急トイレ」は、30個セット(2200円:税込価格、以下同)、60個セット(4928円)、120個セット(8778円)と揃えるなど、商品によってはお盆期間の家族の帰省に備えた大容量パックも充実させている。

アルファ米を使ったナショナルブランド商品の試食を実施

 防災食については、味に不安を持つ顧客の「味を知ってから購入したい」というニーズに対応し、同社では初の取り組みとなるアルファ米(炊きたてのご飯のおいしさをそのままに急速乾燥したもの、長期保存が可能)商品の「防災食試食会」を、お盆期間中、約150店舗で開催を予定している。店頭取材会のあった「イオンスタイル板橋」(東京都板橋区)では、アルファ米を使用したナショナルブランド商品の「五目ご飯」「わかめご飯」「ドライカレー」(各382円)「おこげ カレー味」(429円)の4種類の試食を実施していた。

“備えない防災”「フェーズフリー」商品の広がり

フェーズフリー商品「足まもりっぱ」

 今田氏は「近年はお客様に『フェーズフリー』の考え方が広がっている」と話す。フェーズフリーとは、日常時はもちろん、非常時においても役立つ商品やサービスを広げていく考え方だ。

 その一例が、今年の新発売商品のひとつである「足まもりっぱ」(2178円)だ。同商品は、釘も通さない特殊シートを底面に内蔵しているため、日常的に使うスリッパとしてだけでなく、地震発生時に割れて散らばったガラス片などから足を守る、防災スリッパとしての使用も可能になっている。

 また、一部店舗の防災関連売場では、イオングループのプライベートブランドである「トップバリュ ホームコーディ」で展開する「フルクローズサンシェード」(3850円)や「コンパクトにしまえるチェア ロータイプ」(3300円)などを揃えたアウトドア用品売場を併設している。停電時に利用が可能なランタンタイプの灯具や、避難先でのプライバシーを守るテントなど、災害時のアウトドア用品の活用を提案したい考えだ。

 今田氏は「ご実家への帰省時に、ご家族全体での防災・安全をもう一度見直していただけるような商品提案をしていきたい」と語る。