イオン(千葉県/吉田昭夫社長)グループのイオントップバリュ(千葉県/土谷美津子社長)は今秋、プライベートブランド(PB)である「トップバリュ」について、約2500品目の商品リニューアルを実施するとともに、新時代をになうMZ世代の獲得をねらう、戦略的な新商品を発表した。
カオマンガイ、ルーロー飯……
世界の屋台メシを自宅で気軽に
イオントップバリュは、8月31日に開いた新商品の説明会で、「お客さまのくらしに寄り添い続ける」という新たなブランドビジョンのもと、プライベートブランド「トップバリュ」の商品リニューアルと、新商品の開発に取り組む方針を明らかにした。商品リニューアルについては、約2500品目を対象に行う。これは、生鮮、総菜、酒類を除く食品・日用品アイテムの約半数に当たる。
リニューアル、新商品開発に当たって力を入れるのが、1980年代半ばから90年代初頭に生まれた「ミレニアル世代」や、90年代後半から2010年の間に生まれた「Z世代(ジェネレーションZ)」の2つの世代を合わせた「MZ世代」をターゲットとしたブランディングだ。
このうちZ世代は生まれた時からスマートフォンがある「デジタルネイティブ」世代で、SNS上での影響力が強く、新たな時代の食文化をになう中核的な存在としてとらえている。
MZ世代を対象として、今秋から新たに発売を始める商品の一つが「トップバリュ おうちで楽しむCaféごはん」シリーズだ。パウチを電子レンジで温めてご飯にかけるだけで、世界の「屋台ごはん」の人気メニューが味わえるというコンセプト。9月6日から「イオン」「イオンスタイル」など全国2000店舗で販売する。
メニューの中心となるのが、アジア各国の料理だ。タイからは「カオマンガイ」(税抜348円、100g)、「マッサマンカレー」(同398円、130g)、「グリーンカレー」(同348円、100g)の3種類を揃えた。
「カオマンガイ」には国産鶏肉むね肉を使い、コリアンダーパウダーやレモングラスのハーブで風味を出した。「マッサマンカレー」はタイで製造したココナッツミルクやドライスパイスを、「グリーンカレー」にはレモングラス、ガランガル、こぶみかんの葉など、タイのドライスパイスを加えて、本場の味を再現している。付け合わせとして、タイ産のうるち米(長粒種)を国内工場で加工した「ジャスミンライス」(同198円)もあわせてラインアップした。
台湾の「ルーロー飯」(同398円、130g)は厚切りにした豚バラ肉を甘辛いソースで炒めたもので、隠し味にハチミツを加えた。ねぎや温玉などのトッピングなど、独自のアレンジを加えても美味しく食べられる。
このほか、「四川風麻婆豆腐」(同298円、140g)、「ユッケジャン」(同398円、200g)、「鶏飯」(同348円、200g)、「ぼっかけ」(同398円、140g)、「ビーフストロガノフ」(同398円、180g)、「チリコンカン」(税抜298円、130g)など、全11種類を展開する。外食よりも手頃な価格帯が魅力だ。今までは先に価格を設定し、それに合わせて素材を決めていくやり方が主だったが、今回のシリーズでは品質を優先し、価格を後から決めるスタイルを取ったという。
若者の「アルコール離れ」に対応
新感覚飲料を独自開発
飲料では、「クラフテル」というお酒とソフトドリンクの中間をねらった商品シリーズを新たに展開する。第一弾として売り出すのが「クラフトコーラ By19 Nineteen」「クラフトジンジャーエールBy19 Nineteen」(税抜350円、270m)の2種類だ。9月26日から東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、山梨県のイオングループ1232店舗で販売する。
商品の開発背景には、若い世代の「アルコール離れ」が関わっている。厚生労働省の調査によれば、アルコールを飲めないわけではないが、「ほとんど飲めない」「やめた」という回答は20代の男性で約半数、女性では約6割にのぼっている。
このような事情を踏まえ、香りを味わう「香飲」という飲み方を提案するユニット「香飲家(こういんか)」に監修を依頼。ノンアルコールでありながらも、スパイスや果実を混ぜ合わせることで、ジュースでは味わえない複雑な味わいと香りが楽しめる飲料をめざした。
トップバリュブランドではすでにZ世代をターゲットとした商品を開発・販売しており、売上はいずれも好調だ。23年3月に発売された具沢山のスープシリーズ「もぐもぐ味わうスープ」(本体価格298円~)は、野菜、肉、海鮮素材など、具材をふんだんに入れた食べ応えのあるスープを11種類取り揃えており、8月時点で累計販売数130万食を突破した。
そのほか、6月には、ヨーグルトを「バスクチーズケーキ風」「アップルパイケーキ風」に仕上げた新感覚デザート「ガトー・ソワイユ」シリーズと、ナッツを含む食材を、サラダやデザートのトッピングとして最適なサイズに粗く砕いた「Nuts&Joy」シリーズを発売。いずれのシリーズも、累計140万食を突破している。
これら商品の好調もあり「トップバリュ」全体も、23年上期(3~8月期)売上高が対前期比110%と大きく伸長した。
イオントップバリュ代表取締役社長の土谷美津子氏は「トレンドの発信源であるZ世代を今後も積極的に取り込んでいきたい。トップバリュのキーワードである『わくわく感』を感じてもらいたいと思っている」と述べ、ターゲットの価値観や世代を明確化した「スモールマス戦略」の重要性を強調した。
23年度で年間売上高1兆円の達成を掲げている「トップバリュ」(22年度実績は約9000億円)。若年世代の需要を取り込むことで、さらに販売を促進し、目標を達成できるか注目だ。