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広がるメニュー、店の宣伝効果も!? 「グルメ自販機」が進化する背景

 24時間自由に買物ができる自動販売機。昨今、街中でさまざまな「グルメ」を販売する「グルメ自販機」を目にすることが多くなった。ホットペッパーグルメ外食総研による調査結果から、「グルメ自販機」に対する消費者の評価、今後の需要開拓のヒントを提示する。

昨今、街頭に増加中の「自販機グルメ」

自販機の歴史と進化

 自動販売機といえば、数年前までは、ドリンクを中心に販売するチャネルであり、少し変わり種でも、「出汁」や駅などで小腹がすいた時に購入できる小さなお菓子の販売程度であった。

 またコンビニエンスストアがさまざまな商品を投入した自動販売機を、企業内オフィス向けに展開していることも知っている人は多いだろう。

 自販機の歴史を辿ると、1904年に切手や葉書を販売する自動販売機が日本における始まりとされているが、その後、1962年にアメリカの飲料メーカーが日本に自動販売機(vending machine)を持ち込み、1967年から急速に普及したといわれている。その大きな要因には100円玉、50円玉の硬貨が発行されたことがある。

餃子にスイーツ・・・
ご当地グルメも

 こうした歴史を経て、自動販売機が今、さらなる進化を遂げようとしている。QRコード決済や電子マネーでも購入できるシステムを搭載し、地震などの災害時にはライフラインにもなるという、人々の生活には欠かせないチャネルとなっている。

 そしてここ最近では、販売されている商品が多様化しつつある。馴染みのあるチェーン店の餃子やラーメン、もつ鍋や明太子をレトルト食品や冷凍即品で販売するほか、焼き芋やパフェ、ケーキなどのスイーツまで登場するなど、今までの自販機では考えられないラインアップだ。

また変わり種だと、韓国料理店の前で、「サムゲタン」など韓国メニューの自販機が設置されたり、沖縄ではヤギ料理の自販機があったりと、その店、エリアならではのグルメを自販機で扱い、気軽に購入してもらえるようにする動きもみられる。

利便性だけでなく
エンタメ性も評価

 このような自動販売機の多様化に伴い、ホットペッパーグルメ外食総研では「グルメ自販機」について調査を行った。

 まずは、「グルメ自販機」に対する評価だ。「良いと思うところ」について尋ねたところ、1位「いつでも買えるところ(52.0%)」「お店までいかずにお店の味を楽しめるところ(45.3%)」「人とやり取りせず買えるところ(27.6%)」と利便性の高さや手軽さにメリットと感じる声が上位に上がった。

 また、4位には「自動販売機から料理が出てくるのが面白い(24、7%)」とエンタメ性を楽しんでいる声もあった。これらポジティブなコメントから、「グルメ自販機」への高い評価がうかがえる結果となった。

 一方、ネガティブな回答としては、1位「出来立てよりも味が落ちるところ(31.0%)」、3位「お店で食べる味と微妙に違うところ(23.3%)」といった味に関するものが上位となった。

 そのほかにも2位は、こちらは先入観もあると想定されるが「衛生的に心配(29.5%)」といった意見もあがっている。これらはある意味、予想通りの結果となった。

背景にはある
自販機や食品製造の進化

店の隣で自店のメニューを自販機で販売。営業時間内外問わず商品を提供できる

 では、なぜ「グルメ自販機」がこんなにも普及したのか。

 アンケートからも見られるように、消費者の潜在的なニーズを掴んだこともあるが、自販機の歴史・進化でも述べたように、インフラの整備がある。昨今では、冷凍食品を販売できる自販機の開発や、レトルト商品の製造技術や冷凍技術が進歩し、味の劣化が抑えられるようになったことが大きい。

 この数年間の勢いは、コロナ禍で経営が厳しくなった飲食店が販売チャネルを増やそうとした、営業努力によるものも背景の1つにあると考える。事業主とっては、人を介せず販売できるため、飲食店の営業時間内外問わず、生産性高く販売できることもメリットとして挙げられるのではないだろうか。

 最近では、飲食店が閉店後でも購入できるように店頭に設置したり、大手チェーンが、空港や鉄道の駅、バスターミナル、商店街など人の往来が多い場所に設けたりと、自動販売での商品の販売だけではなく、自店の広告・宣伝効果もねらっているように見える。

販売だけではなく、自社の店や商品の広告・宣伝効果もねらっているような自動販売機もある

膨らむ消費ニーズ
さらなる進化の予感

 最後に、「あなたが食べてみたい夢の自販機グルメは?」という問いに対し、記述式で回答を募った。すると面白い回答が得られたので一部紹介したい。

 「旅館の朝ごはんが温かいまま食べられる」「世界各国の料理が楽しめる」「各地のB級グルメが楽しめる」「航空会社の機内食が食べられる」「フレンチのフルコースが食べたい」などだ。

 また、昨今増加傾向にあるスイーツの自販機に対して、「自分でトッピングが選べるような自販機が欲しい」など今までの自販機にはないエンタメ性の高い回答が並んだ。実現すればなんとも夢のような自販機グルメだ(笑)。

 ライフスタイルの多様化、飲食店の人材不足などの外部環境下において、グルメ自販機の今後もはさらに拡大するのではないかと予測される。
さらなる技術革新による品質向上とともに、あっと驚く新しい自販機グルメが登場することが楽しみでならない。

【執筆者】

有木真理(リクルート『ホットペッパーグルメ外食総研』所長)
㈱リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めるとともに、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成やさらなる外食機会の創出をめざす。自身の年間外食回数は300日以上、ジャンルは立ち飲みから高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがウリで、1日5食くらいは平気で食べることができる。