ここまで、「BLANDE(ブランデ)」の部門ごとの売場づくりや商品政策(MD)について解説してきた。それを踏まえて本稿では、ブランデというフォーマットそのものの意義と課題、そして可能性について言及していきたい。
売場を見て消えた訪店前の“疑念”
筆者は研究学園店の調査に向かうため、つくばエクスプレスに揺られながらこんなことを考えていた。「カスミはなぜ『ブランデ』という新業態をつくったのか」──。しかし裏を返せばこの時点では、その真意について想像しきれていなかった。
カスミがブランデ業態で一貫して掲げているのが、「新しいSM」というテーマである。同業のSMだけでなく、ドラッグストアやディスカウントストアといった異業態との競争が激化するなか、カスミの主な勢力圏では少子高齢化、人口減少といった環境の変化も著しい。そうした厳しい状況下で競合他社と徹底的に差別化するために開発されたのが、ブランデである。カスミとしても、既存フォーマットと明確に異なるポジショニングの店として、ブランデには大きな期待を寄せているだろう。
筆者が訪店前に各メディアのレポート等で情報収集した限り、1号店での「ウエルシア薬局」との売場融合や、オリジナルブランド「MiiL KASUMI」の展開など、確かにまったく新しい店づくりが行われていることはわかった。コンセプトや方向性は確かに斬新なのだが、そうした表層的な情報だけでは、「果たしてカスミはそれらをうまく表現し、持続させることができるのか」という考えがよぎってしまったのだ。
しかし、実際に店を訪れるとそうした疑念は消え去り、ブランデがカスミにとっても、地域にとっても大きな意義のある新業態であることを実感することができた。
西武の撤退で消えた「楽しい買物」の受け皿に
まず、このブランデの存在意義について考えてみたい。
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