コロナ禍での内食化が浸透したことで2020年は牛乳の需要が拡大したが、その反動で21年は前年割れとなった。一方、乳飲料は健康志向を背景に栄養素を強化した機能性乳飲料が市場を底上げした。
20年の反動もあるが、牛乳市場は堅調に推移
KSP-POSの牛乳の期間通算(2021年3月~22年2月)の金額PIは、2万3811円で対前年同期比3.3%減。月別にみると、前年の需要増の反動で4月は同8.9%減、5月は同9.3%減と大きく減少したが、その他の月は微減なので堅調といえそう。年末年始に話題になった生乳の大量廃棄危機問題により、12月は同0.8%減、1月は同0.8%減、2月は同0.9%増と需要が高まった。牛乳はそのまま飲むだけでなく、料理などにも活用が広がっており、各社では牛乳を使ったメニュー提案に力を入れている。森永乳業では昨年の冬にホットミルク提案を行った。ホットミルクを飲むと体が温まり、気分が安定することが実証されている。同社ではブランドサイトで動画を配信し消費を喚起した。
近年話題となっているのが、常温保存で賞味期限が長い牛乳。森永乳業では、搾乳後48時間以内に受け入れた生乳のみを使用し、殺菌後に無菌状態でパックした「森永牛乳200ml」を展開。ロングライフ製法により、常温で製造から60日間の賞味期限を実現した。また、明治では北海道産生乳を100%使用し、常温で91日の長期保存が可能な「明治特選北海道牛乳200ml」を今年1月に新発売。常温で長期保存が可能なので、ストック需要にも対応し、外出時などにも便利だ。しかも食品ロス削減にも貢献できることから、今後はこうした商品が広がっていくことが予想される。
家庭内飲用が増えたチルドコーヒーは需要が回復傾向
その他乳飲料の期間通算の金額PIは、3000円で対前年同期比1.3%増。月別金額PIでは前年割れの月もあるが、全体的に堅調に推移している。白物乳飲料は、カルシウムや鉄、葉酸、たんぱく質などを強化した機能性の乳飲料が好調。外出自粛生活により、運動不足や体重増加などの理由から健康に気づかう人から支持されている。とくにたんぱく質を強化した商品が人気。たんぱく質の摂取意向は上昇傾向にあり、これまでの筋肉強化に加え、健康維持や美容などを目的にたんぱく質を摂取する人が増えている。森永乳業の「森永のおいしい高たんぱく脂肪0」や「PREMiL Blue」、「inPROTEIN」など、たんぱく質を強化した商品が好調だ。
色物乳飲料は、大きなウエイトを占めるチルドコーヒーの外での飲用が減ったことで20年は厳しい結果となったが、家庭での飲用が増えたことで需要は回復傾向にある。在宅時間が増えて、気持ちを切り替えるためにコーヒーを活用しているようだ。市場をリードする森永乳業の「マウントレーニア」では、水族館や動物園とコラボレーションした癒やしパッケージを展開した。この春は、糖質に対する意識の高まりを受け、甘さや糖類が気になる人に向けてミルクリッチな「マウントレーニア カフェラッテ ノンスイート」を発売した。新定番のカフェラッテとして育成している。