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賃料のあるべき額を高い精度で割り出すシステムを発表=ギブ・スパイラル・ジャパン

店舗やオフィス賃料の適正化事業を展開するギブ・スパイラル・ジャパンはこのほど、賃料査定AIシミュレーション「Geniee1.0(ジーニー1.0)」をリリース。AI( 人工知能)を活用しており、高い精度を誇る。熟練のスキルを持つ専門スタッフが実際の交渉にあたる同社にとり、強い武器となっている。また、プロの賃料交渉技術を教えるユニークな研修プログラムも開始するなど、独自のサービスを続々と充実させ、注目を集めている。

言語系AIと融合し進化図る

 ギブ・スパイラル・ジャパンが2022年10月にリリースしたのが、店舗やオフィス賃料を査定する新システムの「Geniee1.0」である。19年に発表した独自の分析系AIシステムに改良を加え、言語系AIと融合することでさらなる進化を図った。

高い的中率を誇る賃料査定AIシミュレーション「Geniee1.0(ジーニー1.0)」

 近年、すっかり身近になったAIアシスタントの、いわば賃料診断版と言えばわかりやすいだろう。システムに向かってエリアや具体的な施設名などを話せば、物件の適正な賃料水準や低減可能額などをその場で把握できる。ユニークなシステムとあり、注目を集めている。

 従来、賃料減額業界では、沿線や駅、周辺エリアの状況などの情報を収集、人が総合的に判断して相場を調査する「相場調査」という手法が一般的だった。しかし賃料の減額を導き出す根拠が明確でない上、たとえ算出できても実際の低減額との乖離が生じるといった問題があった。

 そこでAIの技術を持ち込み、ギブ・スパイラル・ジャパンが正確な賃料増減額を知ることができるシステムとして開発したのが、「Geniee1.0」である。

 ギブ・スパイラル・ジャパンもかつて、他企業と同様、相場調査によって賃料を把握していた。今回、新たなシステムを開発したことでサービスの信頼度向上、競合企業とも差別化を図れたかたちだ。

 あらためて賃料適正化サービスの歴史に目を向けると、産声を上げたのはバブル経済後の1990年代前半に遡る。以来、約30年の間、需要の拡大に伴い、同サービスを手掛ける企業が増えてきた経緯がある。

 その中、ギブ・スパイラル・ジャパンの会社設立は2010年5月で、今年度は13期を迎えている。業界では後発組に入るものの、確実に賃料を適正化する手法が高く評価され、業績を急拡大している。現在、売上高で3位につけており、トップ企業の一角にまで成長した。

 ギブ・スパイラル・ジャパンの大きな特徴は、交渉にあたるスタッフが全員、「交渉アナリスト資格1級」を取得している点にある。日本交渉協会が認定するもので、国内の取得者はわずか100数十人しかいない超難関資格だ。そのうち同社には15人が在籍、1組織が抱える数としては国内最大である。

 いわば高度な技術を持つプロフェッショナルであるため、賃料減額を最終ゴールとはせず、貸主との信頼関係を維持することを重視しているという点が興味深い。

 ギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾豪社長は、「『Geniee1.0』を活用してサービスを強化、お客さまの満足度をさらに上げていく考えだ」と意気込みを口にする。

200の変数を掛け合わせて分析

 「Geniee1.0」の最大の強みは、101.5%という減額シミュレーションの高い的中率にある。ここでは驚異的とも言える、同システムのメカニズムを紹介したい。

 今も賃料適正化業界で一般的な相場調査による診断の場合、的中率は50%前後が平均値と言われる。つまり、どれぐらい店舗の賃料が下がるかを調べた場合、たとえば年間1億円減額できると診断されても、実際には低減できるのは5000万円程度にとどまる可能性があることを示している。

 これに対し「Geniee1.0」では、ギブ・スパイラル・ジャパンの豊富な取引実績により蓄積したビッグデータと、約200にも上る変数を掛け合わせ、AIが処理することで高い的中率をはじき出す。変数は、エリアや路線価といった主要情報だけでなく、契約形態、物件の経過年数、業界の動向、これまでの貸主の賃料履歴はじめ、より多様なファクターを使って分析する。

 ただし、この段階での的中率は平均値を上回るものの、まだ約75%に過ぎない。ギブ・スパイラル・ジャパンでは詳細を明らかにしていないが、さらに独自のアプローチも駆使し、精度を上げているのだという。

 大まかにいうと、システムでシミュレーションして算出した賃料の減額と、実際に減額できた実績との差を、以降の診断に反映させる。たとえばシステムが15%低減できると判断しても、実際は12%だった場合、

 その差が生じた要因にも着目しながら次回の分析に生かすという。その際、適正化にもっとも影響を与える要素として、貸主個人の行動傾向を取り入れているのがミソだ。これらを取引のたびに繰り返し、検証することで精度を高めている。

 ただ近年、AIを活用して賃料診断を行う競合企業も現れてきた。それでも「Geniee1.0」と比べると精度は低く、まだギブ・スパイラル・ジャパンに大きな優位性があるのが現状である。

難しい退店も適切に判断可能

 ギブ・スパイラル・ジャパンがこのほどリリースした、高性能な減額シミュレーションシステムの「Geniee1.0」。同社がサービスを提供するにあたって強い武器として活用できるのはもちろんだが、店舗ビジネスを展開する顧客が享受できるメリットは非常に大きい。

 たとえばチェーンストア企業の場合、決断が難しいと言われるのは退店である。新規出店したものの当初の読み通りの収益を確保できない、また競合店の進出で業績が悪化したなどの状況に陥っても、自社戦略のもとで撤退するかどうかを適切に判断できる。

 もしデータの精度が低ければ、正しい判断を下すことは難しくなる。決断を間違えれば、大きな損失を出してしまうことも考えられる。

 退店を判断するのが経営トップ自身ではなく、担当部署が対応しなければならない場合も 「Geniee1.0」は有用だ。シミュレーションした減額が正確であれば、社内で稟議書を上げやすくなるというのは容易に想像できる。

 「Geniee1.0」を使って減額交渉したことで、大幅に賃料が低減できた企業は早くも増えている。現段階では大手企業の一部に限られているが、今後、食品スーパーをはじめ、引き合いは強まると見られる。

 ギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾社長は、「『予想以上に賃料を安くできた』と、喜びの声も多く聞かれる。さらにお客さまの満足度を上げられるよう、さらにサービスを充実させていきたい」と話している。

「窓」から新風を送り込む

 また、ギブ・スパイラル・ジャパンは2022年4月、「賃貸借windows12」という研修サービスを新たにスタートさせた。賃料の交渉技術を伝授するという、賃貸借業務に携わる担当者向けのユニークなプログラムだ。

 開発の背景を、ギブ・スパイラル・ジャパンの鷹尾社長は次のように説明する。「一般に、賃貸借に関する手法は非常に属人的であり、さらに担当者は高齢化する傾向にあると言われる。どの企業も、交渉のノウハウについては、次の世代に伝えたいという気持ちはあっても、効果的な対策を打てていなかった」

 こうした現状に対し、「窓」を作り、新風を送り込みたいとの思いが、「賃貸借windows12」という名称には込められている。店舗ビジネスを展開する企業との豊富な取引を通じ、蓄積した経験を活かした同社ならではの内容である。

 プログラム名の末尾にある「12」は、ギブ・スパイラル・ジャパンの12年で得たノウハウを余すことなく伝えるというコンセプト。商談数分母で2023年1月末時点の成約率はなんと100%、実施は順番待ちとの事。

 研修はリアルで行うほか、リモートにも対応する。とくにリモートは、担当者を一ヶ所に集めるのが難しい、規模の大きい企業でも利用しやすく人気がある。遠隔地間での会議が定着したコロナ禍にあっては、むしろ合理的なスタイルと言えるだろう。

 高度な交渉術のプログラムを提供するギブ・スパイラル・ジャパン。そもそも交渉術を身につけていない一般の担当者と、交渉のプロとでは、賃料の減額にどの程度の違いがあるのだろうか。

 ギブ・スパイラル・ジャパンが持つビッグデータを解析したところ、ある企業の年間削減額は2500万円だったのに対し、プロの交渉成果は1億円と、4倍もの差が生まれるとわかった。また、一般担当者の成功率が50%、減額率5%であるのに対し、プロは同75%、同13.5%と顕著な差が出た。

 魅力的な内容のプログラムだけに、引き合いは強い。これまで取引のあった企業に研修の概要を説明したところ、全社から申し込みがあったそうだ。つまり成約率は100%。「ある程度、需要はあるだろうとは予想し始めたが、これほどの反響があるとは思っていなかった」と鷹尾社長は驚きの表情を浮かべる。

実践的なノウハウを講義

 「賃貸借windows12」とは、どのような内容の研修なのだろうか。

 キャッチコピーとして掲げるのは「ノウハウ化された賃料交渉技術を自社交渉の成果倍増へつなげる『実践講座』」。交渉にすぐ使える、「実践的」な技術、内容を多く盛り込んでいるのが大きな特徴である。

 主要コンテンツのひとつは、「主導権セオリー」。交渉にあたっては、いかにイニシアチブを取るかがポイントとなる。研修では相手の共感や信頼を得ながら、最終的にはこちらの意向通りに話をまとめる手法を教える。「対人折衝セオリー」では、効果的なプレゼンテーションの方法などについて講義する。また「魔法の6テクニック」と題するコーナーにおいては、より具体的なノウハウ、アドバイスを伝授しているというのは興味深い。

 研修は講師が一方的にレクチャーするだけでなく、質疑応答の時間も設けている。普段、仕事上で感じている悩み、困りごとに対しても丁寧に答えてくれるため、経験の少ない担当者でも安心して受講できる。

 プロの交渉術と聞くと、大きく減額する強引なテクニックをイメージする人も多いかもしれない。たしかに、減額の幅はもちろん気になる要素ではあるが、学ぶべきは賃料を安くするスキルだけではない。研修では、貸主との関係を保った上で交渉を進めることを重視している。

 あくまで長期的な取引ができることを視野に、賃料減額の達成を目指しているのが、本物の交渉術と言えそうだ。

店舗ビジネスを展開する企業の申込みが急増している「賃貸借windows12」。鷹尾社長自らが熱弁をふるう

 「一般的な研修会社が提供する講座には、賃料交渉という専門的な内容を学べるものはほとんどない。より多くの方のお役に立てるよう、今後も内容を充実していきたい」(鷹尾社長)

店舗開発に特化した人材紹介サービス

 賃料減額交渉というユニークなサービスを提供するギブ・スパイラル・ジャパン。一方、今回紹介したように、研修など関連事業の開発にも熱心に取り組んでおり、独自のビジネス展開を特徴としている。

 鷹尾社長は、その狙いを次のように説明する。「当社は目の前の利益を追わず、長期的な視点のもと、チェーンストアはじめ店舗ビジネス業界全体の活性化につながるようなサービスに力を入れている。これにより取引企業さまの成長、発展に寄与できると信じている」。

 この方針のもと、2022年10月から新たに開始したのは、店舗開発に特化した人材紹介サービスである。

 一般に店舗開発スタッフ、とくに即戦力となる人材の確保に苦労している企業は多いと言われる。こうした状況を受け、ギブ・スパイラル・ジャパンでは、店舗開発分野のインフラとして、専門スタッフを紹介する機能が必要だと判断した。

 具体的には、開発に携わる人材を募ってデータベース化、求める企業へと紹介するというサービスである。まだスタートして間もないが、利用者からの反応は上々で、問い合わせも増えている。

 じわりと広がる新サービスだが、ギブ・スパイラル・ジャパンでは、まだ大々的にアピールすることには慎重な姿勢をとる。採用したい会社が存在するということは、他方で今勤務する企業を辞める人がいることを意味するからだ。

 「人材の流動化は、長期的には業界に好影響をもたらす。皆さまの理解を得ながら、すこしずつサービスを浸透させていきたい」と鷹尾社長は意気込みを語る。