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米大手行が感染対策強化方針で従業員への伝え方入念に配慮、批判や訴訟恐れ

ニューヨークの街並み
8月16日、米大手銀行が新型コロナウイルス感染対策を強化し、従業員にワクチン接種やマスク着用を義務化もしくは奨励している。写真はニューヨークの街並み。2017年8月撮影(2021年 ロイター/Mike Segar)

[ニューヨーク 16日 ロイター] – 米大手銀行が新型コロナウイルス感染対策を強化し、従業員にワクチン接種やマスク着用を義務化もしくは奨励している。ただ個人の権利侵害だと政治的に批判されたり、訴訟を起こされたりするリスクも見据え、対策の伝え方には相当気を使っているもようだ。銀行関係者や金融業界に携わるコンサルタントらがロイターに明かした。

現時点でシティグループとモルガン・スタンレーがニューヨーク本社に適用しているルールが最も厳格で、出勤する従業員はワクチン接種が必須。

JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループは、接種義務化はしていないが、いずれも未接種の従業員にマスク着用と最低1週間に1度の検査を求めている。

バンク・オブ・アメリカは、9月初めに職場に戻れるのはワクチンを接種した従業員のみで、他の従業員にも積極的に接種するよう促している。

各行が感染対策に一段と力を入れる背景には、米国の感染状況の変化がある。今年1月から6月まではワクチンの普及で感染者が劇的に減少したものの、感染力の強いデルタ株の浸透とともに足元の新規感染者の7日移動平均は35%増加していることが、ロイターがチェックしているデータから見て取れる。ウェルズ・ファーゴはこのデルタ株まん延を理由に、従業員の職場復帰予定を10月に先送りした。

こうした中で各行の経営陣が内部で議論しているのがコミュニケーションの方法だ。関係者の話では、大手行従業員の多数は既にワクチンを打ち終わったが、一部のグループは健康上あるいは宗教上の理由から接種を望んでおらず、いかなる強制措置も個人の権利侵害に当たると感じる向きもいる。

そこで全社的なメモでワクチン接種やマスク着用の義務を通達した場合、反対派の従業員だけでなく、大手行を政治的にたたく標的として利用している政治家や右派団体などの怒りを呼びかねない、とある大手行幹部は懸念を口にした。実際、新たな強制措置が報道された際には一部の銀行が反発を受け、その後に方針変更はもっとこっそりと伝達するようになった、と複数の関係者は説明した。

例えばシティグループは、ワクチン接種義務化方針をリンクトインの投稿で知らせている。モルガン・スタンレーは感染対策の更新を電子メール経由で伝えるのを取りやめ、幹部が従業員に個人、あるいは少人数単位で直接話をする方法に切り替えた。