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米国でスーパーフードとして注目集まる昆虫食 三つ星シェフ監修のプロテインバーもスーパーに登場

近年、世界では「昆虫食」に高い関心が寄せられている。昆虫食が注目を浴びているのは、2013年に国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した報告書が1つのきっかけと言われている。2050年には世界の人口が現在の約75億人から90億人を超え、深刻な食糧危機に陥る可能性があり、食糧問題や環境問題の解決策の1つとして、昆虫を食用としたり、家畜の飼料にしたりすることを推奨したのだ。今回、アメリカの昆虫食市場の広がり、スーパーマーケット等での販売状況をレポートする。

Aspire Foodが買収したExoのコオロギプロテインバー

コオロギは牛肉を遥かに上回る高タンパク質食

 昆虫食は、牛や豚などの家畜に比べると、数分の一の飼料で育ち、水も不要で、タンパク質やビタミン、ミネラルなど高い栄養価を含んでいる。そのため昆虫食はスーパーフードとしても注目を集めており、アンジェリーナ・ジョリーやニコール・キッドマンなどのアメリカのセレブリティも、昆虫食を実践しているという。内山昭一著「昆虫食入門」によれば、「多くの昆虫で、タンパク質が乾燥重量の50%以上あり、他の動物性食品に勝るとも劣らない良質な食品である」という。

 市場調査会社のメティキュラスリサーチによれば、世界の食用昆虫市場は、2019年から2030年までに年平均24.4%の成長率で拡大し、2030年までに79億6000万ドルに達すると見込んでいる。スウェーデンの昆虫食事情の紹介サイト「BugBurger」のリストによると、今年1月の時点で、昆虫食を扱う企業は、世界で295社にのぼるという。中でもコオロギが最大のシェアを獲得していて、2017年のデータでは食用昆虫市場の31.6%を占めた。

同じくExoブランドのコオロギパウダーを使ったスムージー

 アメリカ・テキサス州の食用昆虫企業大手Aspire Foodは、コオロギを原料とした様々な食品を製造している。現在までに1800万ドルを調達し、20183月には同業の、コオロギから作られたプロテインバーを作るExoを買収し、食用昆虫企業のメガブランドとして成長している。コオロギを使った商品を主にネット上で販売しているが、去年から約500店舗のアメリカの食料品店でも販売している。大部分は、テキサスのローカルスーパーマーケットHEBの店舗で、コオロギが入ったプロテインバーと、テキサスBBQ味の揚げコオロギなどを販売しており、売れ行きも好調だと、ExoCEO Jason Jones氏は話す。

 プロテインバーには、ローストされ細かく粉砕された約40匹分のコオロギが入っていて、使用するコオロギは、オーガニックの認定を受けた飼料で飼育したものだという。プロテインバーは、元ミシュランの三つ星レストランの料理長が監修しているというこだわりようだ。

 コオロギの栄養価の高さをみてみると、タンパク質含有量は約69%もあり、同29%の牛肉と比べ、圧倒的にタンパク質が豊富だ。コオロギには、ビタミン12、鉄、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムと共に、9つの必須アミノ酸が含まれている。コオロギの粉は、牛乳よりも多くのカルシウムとホウレンソウよりも多くの鉄を含んでいるという。

 Aspire Foodは、ロボット工学や自動データ収集などの先駆的技術を導入したハイテク施設で、食用コオロギを養殖しており、通常の3分の1の期間で、通常よりも50%大きな成虫に育てている。

シアトル・マリナーズ観戦時の名物は“炒ったバッタ”

 シアトル・マリナーズの本拠地Tモバイル・パークでは、スパイシーなチリとライムをかけた、炒ったバッタが、2017年から観戦のお供としてベストセラーになっている。このバッタは、シアトルにあるメキシカンレストラン「ポキートス」がスタジアムで販売していて、あまりの人気に販売数に制限を設けることもあった。実際にメキシコのオアハカ州では、バッタは何世紀にも渡って食用として親しまれており、スポーツイベントでのスナックフードとしても人気があるそうだ。

 ボストンにあるSix Foods社は、コオロギ粉と豆、米でできたチップスや、クッキーミックス、コオロギ粉を販売している。現在は、全米最大のスーパーマーケットチェーン、クローガーで、このチップス「Chirps」(chirpはコオロギの鳴き声を表す英語)を販売している。ポテトチップスは、アメリカで1番売れているスナック菓子であり、健康志向の高まりにより、タンパク質を多く摂取できるこのChirpsやコオロギ関連製品は、2017年から2018年にかけて収益が2倍に伸びたという。

 昆虫を食べることへの抵抗や嫌悪感がある人も多いことは否定できず、これらをどのように軽減するかが、これからの課題でもありそうだ。しかしそれでも昆虫食は世界で多くの企業家が次のビジネスチャンスとして、熱い視線を注いでいる。家畜にとって代わる環境に優しいタンパク源として、昆虫食への期待が高まっている。