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「なにでも、いつでも、どこでも」買い物できるEコマース3.0に挑む

マーケットプレイスに特化したSaaSソリューションのリーディングプロバイダーであるMirakl(ミラクル:本拠地、フランス)は2023年9月13日、英ロンドンで「プラットフォーム・パイオニア・サミット・ワールドツアー2023」(Platform Pioneer Summit World Tour 2023)を開催し、小売業界内外から300人以上が参加した。このイベントでは「デア・トゥデイ」(Dare Today:今日、踏み出そう)をテーマに掲げ、マーケットプレイスの開設や運営をサポートするMiraklの様々なテクノロジーが紹介されたほか、Miraklのソリューションを導入してマーケットプレイスを立ち上げた「パイオニア(先駆者)」と称された小売企業の経営陣らが登壇し、幅広い業種・業態にわたって成功事例が共有された。

Eコマース3.0への進化

 基調講演の冒頭で、Miraklの共同CEO(最高経営責任者)兼共同創業者エイドリアン・ヌッセンバウム氏はこれまでのECの変遷を振り返り、「オンラインで『いつでも』買い物できるEコマース1.0の時代から『いつでも、どこでも』のEコマース2.0を経て、『なにでも、いつでも、どこでも』買い物できるEコマース3.0へと進化している」と評した。ユーザーは相応しい商品を適切なタイミングに適当な場所で購入できることを期待している。そのためには、幅広い商品が確実に在庫され、情報やサービスがユーザーの嗜好やニーズに合わせてパーソナライズされていなければならない。

 Miraklは350社以上の顧客とともにマーケットプレイスを立ち上げてきた。Miraklのプラットフォームを通じた流通取引総額(GMV)は2022年時点で対前年比43%増の60億ドル(8700億円:1ドル=145円で換算)にのぼる。Miraklのソリューションを導入してマーケットプレイスを開設・運営する「パイオニア」の業態は様々だ。

Miraklのプラットフォームを通じた流通取引総額(GMV)は2022年時点で対前年比43%増の60億ドル(8700億円:1ドル=145円で換算)

マーケットプレイスの導入企業

 たとえば、英百貨店ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)のマーケットプレイスでは、英ファッションブランド「Burberry」(バーバリー)をはじめとするラグジュアリーブランドを数多く取り扱っている。また、仏スポーツ用品チェーンのデカトロン(DECATHLON)は自社のマーケットプレイスを開設・運営しながら、スイスの百貨店マノー(Manor)のマーケットプレイスにも出店して自社ブランドの商品を販売している。

 Miraklのソリューションを用いてBtoB(企業間取引)型マーケットプレイスを立ち上げた「パイオニア」もいる。ザ・コカ・コーラ(The Coca-Cola)のボトラー最大手コカ・コーラHBCCoca-Cola HBC)はBtoB型マーケットプレイス「Sirvis」(シルビス)をイタリアで開設。ホテルやレストラン、カフェが飲料や酒類をワンストップで調達できるよう、自社商品だけでなく他メーカーの商品も合わせて豊富に品揃えしている。

飲食店がワンストップで調達できるように自社商品だけでなく他社商品も豊富に品揃え

顧客の希望に沿ったマーケットプレイスの立ち上げ

 英ホームセンターのB&Q(ビー・アンド・キュー)はMiraklと提携してマーケットプレイスを実装し、目覚ましい成果を出している代表的な「パイオニア」だ。20223月に自社ECdiy.com」上にマーケットプレイスを開設し、自社で販売する約4万品目に加えて販売事業者の商品も取り扱っている。マーケットプレイスの開設から1年で商品のカテゴリーは18カテゴリーに拡大し、取扱品目数は約8倍の34万品目に増加した。

 基調講演に登壇したB&Qのカスタマー&デジタルディレクターのパディ・アーンショー氏は、B&Qのマーケットプレイスの品揃えについて「企業側の視点ではなく顧客の希望に沿ったものであるべき」との基本的な考え方を明かしている。

マーケットプレイスの開設から1年で商品のカテゴリーは18カテゴリーに拡大し、取扱品目数は約8倍の34万品目に増加

マーケットプレイスの効果的な運営のためのソリューション

 Miraklは、マーケットプレイスの開設だけでなく、効率的な運営をサポートするソリューションやツールも開発している。たとえば、「Mirakl Catalog Manager」(ミラクル・カタログマネージャー)は、サプライヤーの商品カタログを効率よく統合できるツールだ。商品データの整合性を担保しながら、従来よりも14倍速くマーケットプレイス上に出品でき、品揃えを迅速かつ効率的に拡充できる。20236月には、米オープンAIOpen AI)のジェネレーティブAI(生成AI)と自社の機械学習(ML)アルゴリズムを統合した新機能も発表した。

 このほか、マーケットプレイスに特化したグローバル対応のペイアウト(支払い)ソリューションとして「Mirakl Payout」(ミラクル・ペイアウト)を開発し、ペイアウトのプロセスの簡素化も実現している。尚、これらMirakl PayoutTarget2SellMirakl Adsに関して、日本での展開は未定となっているが、今後に期待したい。

 どれだけ品揃えを増やしても、顧客に商品を見つけてもらえなければ購買にはつながらない。近年、AI(人工知能)を活用した商品のレコメンデーションが普及してきたが、その精度はまだ十分でなく、顧客体験を損なうケースもある。Miraklのバイスプレジデント(VP)ジョアン・ランバート氏は「商品のレコメンデーション自体は難しいものではないが、優れたレコメンデーションをするのは、けしてたやすくない」と強調する。「Mirakl Target2Sell」(ミラクル・ターゲット・トゥ・セル)は、AIを活用したパーソナライゼーションツールだ。ユーザーの購買行動の背景を読み解き、その変化にもリアルタイムに適応して、常に最適な商品のレコメンデーションを行う。また、事業戦略やMD(商品政策)などに合わせて条件をカスタマイズすることもできる。

AIを活用しユーザーの購買行動の背景を読み解き、常に最適な商品のレコメンデーションを実施

顧客が商品を簡単に見つけられるレコメンデーションの実施

 英国を本拠地として欧州22カ国に約750カ所の支店を展開する欧州の事業者向け工業用副資材(MRO)流通最大手のルビックス(RUBIX)は、ECに「Mirakl Target2Sell」を導入した先進的な企業だ。2022年度の売上高は約30億ユーロ(4650億円:1ユーロ=155円で換算)にのぼり、そのうちECの売上高が2割を占める。

 ルビックスのECの取扱品目数は約300万品目にのぼる。そのため、ユーザーが欲しい商品を簡単に見つけられ、ユーザーのニーズに合わせて代替商品や補完商品を提案できるソリューションを必要としていた。そこで、「Mirakl Target2Sell」を採用したところ、2022年には平均客単価が対前年比15%増と顕著に伸びた。ルビックスのチーフデジタル&マーケティングオフィサーのリー・プルーイット氏によると「顧客アンケートでは、『Mirakl Target2Sell』の導入後、顧客の満足度が高まっていることも示された」という。

「Mirakl Target2Sell」を採用し、2022年には平均客単価が対前年比15%増加

リテールメディアサービスの提供

 リテールメディアは、新たな広告メディアとして小売業界内外から注目を集め、急速に成長している。とりわけ、小売企業がすでに一定のトラフィックを獲得しているECは、有望なリテールメディアだ。MiraklECとマーケットプレイスに最適化されたリテールメディアソリューション「Mirakl Ads」(ミラクル・アド)を提供し、リテールメディアを通じた小売企業の新たな収益源の創出も積極的に支援している。