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異色の米ダラーストア「ファイブ・ビロー」 究極の差別化戦略で快進撃

米ペンシルバニア州ウェインに本社を置くダラーストア大手、ファイブ・ビロー(Five Below)の成長が著しい。他のダラーストア企業とは一線を画し、ティーンエイジャーをターゲットとするユニークな経営戦略を掲げる同社。18年度は積極的な出店戦略によって売上、利益とも大きく伸長している。急成長の背景にあるものとは。

積極的な出店によって大きな成長を遂げているファイブ・ビロー

18年度だけで125店舗を出店!

 2002年に第1号店をオープンしたファイブ・ビローは現在、全米33州に750店舗を運営する。19年2月2日で終了した18年度の売上高は15億5960万ドル(約1715億円)で前年度から22%増加。粗利益高も5億6500万ドル(約620億円)で対前年比21.9%増と大きく伸長している。

 売上高が大きく伸びた主な要因はなんといっても、積極的な新規出店にある。18年度には125店舗を出店しており、1年間で店舗数は20%増えたことになる。19年度も145~150店舗の出店を計画している。ファイブ・ビローは今後、米国内でさらに2500店舗以上の展開が可能と考えており、今後も出店を加速していく考えだ。

 強気の出店戦略の背景には、ダラーストア「ファイブ・ビロー」の店舗力が高まったことがある。18年度は、新店の出店後1年間の売上高が1店舗あたり200万ドル(約2億2000万円)と、初めて200万ドルを超えた。また、既存店売上高も同3.9%増と好調だった。ファイブ・ビローは近年、顧客ニーズを確実にとらえており、支持を高めているのだ。

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ウォルマート・ドットコム元CEOによる差別化戦略

8~19歳にターゲットを絞るユニークな戦略

売場は完全に10代の需要に特化したものとなっている

 ファイブ・ビローのターゲットは、「トゥイーン」(8歳~12歳)と「ティーン」(13歳~19歳)の2つの年齢層。彼らが興味を持ちそうなカテゴリーだけに特化した品揃えが特徴だ。具体的には、「スタイル」(衣料・服飾・化粧品)、「ルーム」(インテリア雑貨)、「スポーツ」(スポーツ用品)、「プレイ」(玩具・ゲーム)、「テクノロジー」(スマートフォン関連用品)、「クリエイト」(文具・工作用品)、「キャンディ」(菓子)、「パーティ」(パーティ用品)という名称のカテゴリーに分かれている。

 いずれのカテゴリーの商品も、トウィーンやティーンが好みそうなデザインで、最新の流行をとらえた商品を開発し、店名どおり5ドル(約550円)以下で販売する。新たに開発した商品は、「ニュー&ナウ」コーナーで取り扱い、流行に敏感なヤング層の購買を誘う。

 売価は、菓子などの一部商品を除けば、1ドル、2ドル、3ドル、4ドル、5ドルと、キリがよくわかりやすい価格設定となっている。店内はカラフルでポップな内装に仕上げ、各売場の表示は明確かつデザイン性に富んだものとなっている。同じダラーストア業態でも、生活必需品中心の品揃えのダラーツリー(Dollar Tree)やダラーゼネラル(Dollar General)とはまったく異なる客層を対象とした、まさにトウィーンとティーン御用達の店なのである。

 

アマゾンと競合しないビジネスモデル

 15年2月、米ウォルマート(Walmart)のEC事業、ウォルマート・ドットコム(Walmart.com)のCEO(最高経営責任者)を務めていたジョエル・アンダーソン氏が、ファイブ・ビローのCEOに就任した。アンダーソンCEOは就任翌年、「20年まで売上伸長率20%、利益伸長率20%を維持する」ことを目標に掲げた。そして、ほぼこの目標どおりの業績で推移している。

 ファイブ・ビローの成功要因を、アナリストらはどのように分析しているのだろうか。まとめると、主に次の2つに整理できる。

 1つは、前述のとおり、ターゲットであるトゥイーンやティーンが欲しいと思う商品を快適な買物環境で販売すると同時に、宝探しのようなワクワク感を提供していること。

 2つめは、ファイブ・ビローの売価の安さだ。ECの配送料にも満たない価格であるため、ファイブ・ビローのビジネスはアマゾン(Amazon.com)と直接的には競合しない。そのため同社は、「アマゾン・プルーフ(アマゾンへの耐性が強い)」企業の1つと言われている。

 18年11月、ファイブ・ビローは、ニューヨークのマンハッタンに初出店した。フィフスアベニューにあるその店の売場面積は、ファイブ・ビローの平均売場面積よりも250㎡ほど広い約1000㎡の店舗である。マンハッタンへの出店は、ファイブ・ビローがこれまでほとんど出店してこなかった都市部への進出の起爆剤とも言えるもので、同社の快進撃は当面続きそうだ。