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中国「信用スコア社会」がさらに進化
アリババが変える買い物プロセス!

決済シーン
中国では信用スコアが個人の信用度を計る重要な指標となりつつある

中国で急速に浸透し始めている「信用スコア」。決済履歴や購買動向などをもとに算出されるスコアが、今や個人の“信用度”を計る重要な指標となっている。その信用スコアを活用した新たな買物サービスが、中国の大手ECサイトでスタートした。

 

「650点以上」で1週間の試用が可能に

アリババが運営するECサイト「T-mall」でスタートした新たな買物サービス「信用購」

 3月15日、中国のEC最大手アリババ(阿里巴巴)が運営するB to C型のECサイト「天猫(T-Mall)」において、「信用購」という名称の新たな買物サービスがスタートした。これは、中国で浸透しつつある個人信用評価システムの1つ、「芝麻信用(ゴマクレジット)」を活用したもので、昨年末から行われていたテスト運用を経て、ついに本格稼働に至った。

 詳しく説明すると、ゴマクレジットの信用スコアが 650点以上であることを条件に、決済する前に商品を送付してもらい、その商品を1週間“お試し”で使用できるという斬新な仕組みである。

 例えば、ユーザーが天猫で「アップルウォッチ」を購入するとしよう。従来であれば、①購入商品の決定、②注文・決済、③商品発送、④商品使用というのが、オンラインショッピングにおける常識的なプロセスであった。しかし、今回スタートした信用購では、このプロセスの一部が“逆転”している。つまり、ユーザーは届けられた商品を1週間使ってみて、気に入って購入する場合は決済を、気に入らなければ返品すればよい。信用スコアをベースとした新しい買物方法をユーザーは享受できるようになったのである。

 

社会インフラとして機能し始めた信用スコアの威力

 すでにご存じの方もいると思うが、中国では数年前から信用スコアの導入が進み、社会インフラとして機能しつつある。その信用スコアの代表格として有名なのが、今回の信用購にも活用されているゴマクレジットだ。アリババグループの金融部門を統括するアントフィナンシャルが実質的に運営しているサービスである。

 スコアはアリババのQRコード決済サービス「アリペイ」の利用動向やの決済履歴などをもとに算出され、満点は個人の場合で950点。高スコアを維持しているユーザーは、ホテルにチェックインする際や自転車のシェアサービスを利用するときに必要なデポジットが免除されたり、低金利でローンを組めたりと、生活のさまざまな場面でメリットを得られる。

筆者の芝麻信用のスコアは現時点で733点

 信用購の利用に求められる650点というゴマクレジットのスコアは、都市部で安定した仕事に従事し、アリペイを日常的に問題なく使用しているユーザーなら大方クリアできる水準で、決してハードルは高くない。つまり信用購は限られたユーザーに向けたものではなく、多くのユーザーが利用可能なサービスなのである。

 信用購のサービスには、天猫に出店している家電大手の蘇寧電器や美的集団、英テスコといった名だたる企業が参加している。また、天猫にすでに出店している企業であれば、信用購のサービスを簡単に導入できるような仕組みになっており、参加企業はさらに増えていく可能性が高い。

 天猫の担当者は「ECと信用システムの連携を深めることで、ユーザーはより安心して買物を楽しむことができるようになるだろう」と述べており、天猫としても今後、信用購のサービスを大規模に普及させたい考えのようだ。