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複数チェーンが売上高1兆円目前に! ドラッグストア最新1Q、通期決算まとめ

積極的なM&A(合併・買収)、調剤併設店舗や食品強化フォーマットの拡大、足元ではインバウンドの復活と、近年著しい成長をみせるドラッグストア業界。本稿では、直近で発表された主要ドラッグストア企業の第1四半期決算、通期決算をまとめてみたい。

営業減益も通期予想は据え置き……ウエルシアHD1Q決算

 ドラッグストア最大手のウエルシアホールディングス(東京都)の2024年2月期(連結)の第1四半期決算は、売上高が対前年同期比11.4%増の2982億円、営業利益が同4.3%減の73億円の、増収・営業減益での着地となった。

 売上高は、第1四半期ベースで3期連続の2ケタ増収を達成した。2022年6月に買収したコクミンの統合効果が大きいものの、第1四半期累計の既存店売上高伸長率も同4.1増%と計画を上回る伸びを見せた。とくに調剤の伸びが同8.8%と大きい。

 増収効果により、粗利益高が伸びた一方で、水道光熱費の高騰、コクミンのれん償却やWAONポイント導入による販促費負担増が利益を圧迫し、減益となっている。ただ、通期の業績予想では、売上高が1兆2300億円(対前期比7.5%増)、営業利益480憶円(同5.2%増)と、前回見通しを据え置いた。

積極出店、既存店好調で増収増益着地! ツルハHD通期決算

 ツルハホールディングスの2023年5月期の通期業績は売上高が同5.9 %増の9700億円、営業利益が同12.3%増の455億円の増収・営業増益だった。

 期中は140店舗を新規出店し、既存店売上高も同1.9%増と好調に推移し、難なく増収を達成した。利益面では、水道光熱費の増加により販管費率が前期から0.3 ポイント上昇したものの(25.5%)、人件費抑制の取り組みや、OTC医薬品や食品の売上伸長による粗利益率アップがそれをカバーし、2ケタの増益を果たしている。

 2024年5月期の業績予想では、売上高が同6.5%増の1兆330億円、営業利益が同0.8 %減の245億円を計画する。これが実現すれば、ウエルシアホールディングスに次ぐ、ドラッグストア業界では2社目となる1兆円チェーンが誕生することになる。

統合後、業績絶好調のマツキヨココカラ1Q決算

 マツキヨココカラ&カンパニーの2023年3月期の第1四半期決算は、売上高が対前年同期9.2 %増の2482億円、営業利益が同41.2%増の174億円の増収・大幅営業増益だった。

セグメント別の業績を見ていくと、マツモトキヨシグループ事業は売上高が同13.4%増、セグメント利益が同32.2%増と増収増益、ココカラファイングループ事業も売上高が同3.2%増、セグメント利益が同40.5%と好調だった。第1四半期はマツモトキヨシグループが22店舗、ココカラファイングループが13店舗を新規出店し、グループ合計の店舗数は3420店舗に達している。

 通期業績予想は期初から据え置き、売上高は同3.0%増の9800億円と1兆円が目前に迫る。営業利益も同3.6%増の645億円と増収増益を見込んでいる。

成長どこまで続く? コスモス薬品通期決算

 コスモス薬品(福岡県)の2023年5月期の通期決算は、売上高が対前期比9.6%増の8276億円、営業利益が同1.1%の301億円だった。従来の通期予想に対して、売上高は1.9%増、営業利益は0.4%増の上積みでの着地となった。計画を上回る業績をマーケットも好感、決算発表後の株価は前日比7.0%に上昇した。

 コスモス薬品が強みとする低価格路線は、ローコストオペレーションにより支えられている。前期も、セルフレジ導入や物流効率化を進め、販管費抑制につなげたかたちだ。

 ドラッグストア業界ではM&Aによるシェア獲得が激しくなっているが、コスモス薬品は企業買収に依存しない独自路線で成長を続けている。2024年5月期の業績予想でも売上高が対前期比10.7増の9160億円、営業利益が同0.2%増の302億円と増収増益を計画する同社。売上高は9000億円台に到達し、前述のトップ3社の背中も見えてきた。同社の成長はどこまで続くのかに注目だ。

独自戦略で成長を維持…クスリのアオキHD通期決算

 同じく独自路線の戦略を貫いているのが、クスリのアオキホールディングス(石川県)だ。2023年5月期の通期決算は、売上高が対前期比15.4%増の3788億円、営業利益が同8.7%増の152億円だった。

 祖業の地である北陸を拠点に、勢力拡大を続ける同社。エリア別の売上構成比では北信越が半分近くを占めるものの、近年は東北・関東・東海・関西といった新規エリアへの出店に力を入れている。2023年5月期は90店舗を出店しているが、そのうち61店舗は新規エリアへの出店となっている。

 生鮮食品を含んだ食品の強化を進めているのも同社の特徴の1つだ。23年5月期におけるフード部門の売上高構成比は44.8%と前期から2.4ポイント伸長している。同社は近年、地場のローカルスーパーを次々と傘下に収めており、2023年5月期は石川ローカルの三崎ストアー、新潟ローカルのサンエーからそれぞれ食品スーパー事業を譲り受けており、生鮮食品のノウハウを取り込んでいる。フード部門の売上高は同22.1%の1697億円に達しており、競合する食品スーパーにとって大きな脅威となっている。

 間もなく、2月期決算企業の中間決算が発表される。好調業態の2023年度決算はどのような着地となるのか。要注目だ。