埼玉県で「主婦の店」としてスタートしたベルクは「本社主導主義」「標準化」「教育への投資」を強みの源泉としており、10年間で売上高を約2.3倍、店舗数を約1.7倍に増加させるというめざましい成長を遂げている。個性的でユニークな企業間のコラボレーション企画を打ち出して他社との差別化をはかる一方、社内は徹底的な標準化を行う事で、高い経営効率を実現する同社。本稿では、2023年4月13日に発表された2023年2月通期業績と今後の成長戦略について概観する。
32期連続の増収を達成!
世界的な金融引締めや物価上昇による家計や企業への影響、エネルギー価格および原材料価格の高騰など、小売の経営環境は厳しさを増している。そうした状況下、ベルクでは「Better Quality & Lower Price」の理念を掲げ、地域社会の人々により充実した生活を提供するため、地域密着型のストアづくりを進めている。
2023年2月期の連結業績は営業収益が3108億円、営業利益が140億円、経常利益が対前期比3.0 %増の142億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.6%増の96億円だった。新収益認識基準基準を適用している影響で営業収益と営業利益の前期増減率は公表していないものの、1992年2月期以来、32期連続の増収を果たしている。
2023年2月期の既存店売上高前期比は101.8%、客数(100.3%)、客単価(101.5%)ともに前期実績を上回り、10期連続で既存店売上高対前期比をクリアしている。
2023年2月期のベルクは大別して、①顧客の新規取り込みと定着化 ②商品力の強化 ③価格の強化 ④生産性向上の取組み ⑤利便性の向上に取り組んできた。
顧客に関しては、ベルクカード登録会員のアクティブ会員は151万人、アプリは50万人となっている。豪華賞品が当たる大型キャンペーンの実施や、SNSを活用した情報発信なども積極的に行い、新規顧客獲得と定着化に取り組んだ。
商品力では、自社ストアブランド「くらしにベルクkurabelc(クラベルク)」は前期から約200品目増の598品目に増え、同PBの売上高構成比は6.3 %と前期から1.4ポイント上昇している。また、直輸入商品の拡大・強化にも取り組み、販売金額は33億円にのぼった。
価格の強化では、メーカーや生産者の断続的な値上げが行われる中でも、競合他社との相対的な安さをお客様にアピールすることで支持を得る戦略を実践してきた。生産性向上としては、同社の強みである標準化された企業体制を基盤に、作業割当システム(LSP)を定着化させ、適正な人員配置の実施や作業効率を改善するための省力器具や備品を導入した。
利便性の向上としては、ネットスーパー「ベルクお届けパック」の導入を13店舗、レジ待ちなしのお買物サービスである「スマベルク」は31店舗まで拡大した。また、「とくし丸」の展開を拡大することで買物支援にも積極的に取り組んできた。
加えて物流体制では、自社物流の強みを活かすとともに商品の大量一括調達や店舗運営に合わせた配送体制の見直しなどを継続し、店舗運営の効率化に取り組んできた。
24年2月期は6店舗の新規出店を計画!
先行きが不透明な経営環境が続くという想定のもと、ベルクではお客からの支持を得るため、購買頻度の高い商品群について価格強化を一層推進していく。
具体的には自社PBや直輸入品の取り扱いを拡大し、商品力の強化と売場の活性化を図る。また、調達価格が上昇する中で、他社との「相対的な安さ」にこだわった価格を維持していくとしている。
そのための取り組みとして、自社物流を生かした調達・配送・店舗作業の効率化や従業員全員参加による商品アイデア出し、商品開発スピードの向上を進める。また、設備や什器、備品類の実験導入や機械化・デジタル化の拡大、発注精度の更なる向上、全ての経費の見直しや削減を行っていく。とくに物流においては、配送効率化、納品時間短縮、2024年問題を見据えた配送経路の見直しなどにも取り組む。
さらに、来店動機を高める販売政策として、ポイントカードおよびチラシ販促、各種キャンペーンの実施や自社決済サービスを強化する。スマホアプリのバージョンアップやSNSの活用、メニュー提案や顧客モニター会議の実施、スマベルクのさらなる展開で固定客化をねらう。
出店戦略としては、関東1都6県での売上シェアを高めていくことを目標に、年7店舗程度の新規出店を計画。2023年2月期は新規出店7店舗で、期末店舗数は133店舗となっている。2024年2月期は、東京都八王子市に出店する「フォルテ八王子店」を含む6店舗の新規出店を行い、期末店舗数138店舗(閉店1店舗)になる見込みだ。
以上のような方針や各種計画にのっとり、2024年2月期の連結ベース業績予想では、営業収益が対前期比5.3%増の3273億円、営業利益が同2.4 %減の136億円、経常利益が同3.4 %減の138億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同4.0%減の92億円と増収減益を見込む。
同社は今後も中期経営計画で掲げている「Better Life with Community」という基本方針を堅持し、社会的役割を担う食品スーパー企業として2027年2月期に売上高3637億円、経常利益164億円、店舗数160店舗の達成をめざす。