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反動減からついに脱出? 家電量販店の台風の目になるのは……大手家電7社を分析

ヤマダホールディングス(群馬県:以下、ヤマダHD)、ビックカメラ(東京都)、ケーズホールディングス(茨城県)、エディオン(大阪府)、ノジマ(神奈川県)、上新電機(大阪府)、大手家電量販店6社の中間決算が発表された(ビックカメラは通期)。今回は非上場で大手のヨドバシカメラを加えた家電量販店大手7社の業績(成長性)を分析し、家電業界やマーケットの動向について考察してみたい。

家電販売額は2020年に過去最高を更新

 各社の業績を検証する前に、家電量販店市場全体の構造と動向をおさえておこう。

 商業動態統計(経済産業省)の「第5部家電大型専門店販売」によると、国内の家電量販店の店舗数は2664(2022年9月末)と、2014年の2446から200店舗ほど増えている。

 商業動態統計の家電大型専門店の販売額は、過去10年間4兆円台で推移する。コロナ特需もあって、2020年は4.79兆円と過去最高を更新。2021年はその反動で落ち込んだものの、4.68兆円は過去2番目の水準だ。個別企業では業界首位のヤマダHDの売上高が圧倒的で、最新の通期売上高(2022年3月期実績)は約1.6兆円と2位以下を倍近く引き離す。

ヤマダ、ケーズらが減収……各社の中間決算は?

 各社の中間決算を見ていこう。2023年3月期上期(4~9月、ビックカメラは2022年8月期通期)の決算で減収となったのは、ヤマダHD(対前期比3.2%減)、ビックカメラ(同1.3%減 ※)、ケーズHD(同1.5%減)、上新電機(同1.4%減)の4社だ。
※収益認識に関する会計基準変更に伴う影響を加味しない数値
 四半期(3カ月)ごとの実績だと、ヤマダHDが6四半期続いての前年同期比マイナスで、1年半にわたり水面下から脱していない。ビックカメラは5四半期連続、ケーズHDと上新電機も6四半期連続と、いずれも1年以上のマイナスが続いている。

 一方、エディオン(同0.7%増)とノジマ(同0.6%増)の上期決算は増収で着地している。エディオンの第2四半期(7~9月)の売上高は同1.4%増と1年半ぶりにプラスに転じた。ノジマは2022年3月期通期決算でも2ケタの増収を果たしており、上昇基調が続いている。

 ヨドバシカメラは非上場なため細かい情報を得られなかったが、同社ホームページによると、売上高は2016年3月期以来、6期連続で前期実績をクリアしているとのことだ。

コロナ反動減から脱出? 通期業績は増収予想!

 ここからは通期の業績見通しを見ていきたい。上期決算発表時点における、各社の通期業績予想はノジマ(対前期比±0.0%)、上新電機(同2.6%)、エディオン(同3.1%増)、ケーズHD(同0.8%増)、ヤマダHD(同1.7%増)といずれも前期実績プラスを想定している(ヨドバシカメラは非公表)。ちなみに今回が通期決算だったビックカメラは、2023年8月期の業績予想を公表しているが、こちらも増収見込みとなっている。

 気になるのは、各社の業績がコロナ禍以前よりも上積みされているかという点だ。2020年3月期との比較では、ノジマ(11.7%増)、ケーズHD(10.3%増)、ヤマダHD(8.1%増)、エディオン(3.4%増)、上新電機(2.5%増)の順で売上増を見込む。

 一方、ビックカメラだけは対2019年8月期比で7.9%減と大きく落ち込む。連結子会社であるコジマ(栃木県)の業績は堅調だが、ビックカメラ本体の業績がインバウンド消滅の影響が直撃しているかたちだ。

 つまり、ビックカメラ、今期予想が不明のヨドバシカメラを除いた5社は、コロナ特需の反動からようやく抜け出し、通期ではコロナ禍以前の水準を上回ることができそうだ。

家電量販店業界、台風の目になるのは……

 各社ごとの比較では、絶頂期(2010年前後)より売上高を落とし続けてきた家電量販店業界の“ガリバー”ことヤマダHDが、比較的健闘しているのが目を引く。ただしヤマダHDの場合、健闘しているのは住宅関連事業で、売上高全体に占める同事業の構成比はコロナ禍以前から7.9ポイントも伸びている(2020年3月期:8.8%→2022年3月期:16.7%)、家具・インテリア・GMS商品(スポーツ用品・おもちゃなど)も好調に推移する一方で、家電は6.3ポイント(60.7%→54.4%)、情報家電も1.0ポイント(20.0%→19.0%)と構成比を落としている。

 台風の目になると見られるのがヨドバシカメラだ。業績を開示していないため詳細な情報は得られないが、2022年3月期もコロナ特需の反動をはね返して対前期比2.8%増と売上高を伸ばしたのは驚きだ

 ヨドバシカメラはターミナル駅を中心に店舗展開しているが、総店舗数は2022年3月末時点で24店舗にすぎず、単純計算で1店舗当たりの売上高は300億円を超える。一方でトップのヤマダHDは978店舗(2022年3月末)を展開し、1店舗当たりの売上高は17億円となる計算だ。

 ヨドバシカメラの店舗運営効率は他社を圧倒しており、結果として売上高経常利益率も10%前後に達する。

 コロナ前より2ケタ伸びるノジマとケーズHDにも注目したい。ノジマはメーカー派遣員に頼らない自社社員による「コンサルティングセールス」、ケーズHDは現金値引きや家電商品特化へのこだわりと、競合にはない独自の戦略が成長に寄与している。

 人口減少に伴う市場縮小が見込まれ、暗い見通しとなりがちな家電量販店業界だが、さまざまな家電が並ぶ店舗をめぐるのは、ほかの業態にはない楽しさがある。大手各社が今後どんな戦略で売場を活性化していくのかに期待したい。